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トリでも分かる かんたん京劇講座
京劇きほんの「き」
中国の京劇事情
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京劇の本場北京での現状を聞く
中国京劇院 元院長 呂瑞明さん
京劇本来の力を備えた良い芝居を
中国京劇院は、1955年梅蘭芳を初代院長として設立された中国文化部直属の京劇院。そこで1985年から8年間院長を務め、また劇作家としても活躍し、スーパー歌舞伎にも携わってきた呂瑞明さんの目からみた最近の新作京劇について、そして現在京劇が抱える問題点についてお話いただきました。
呂
瑞明先生は新中国を代表する京劇作家のおひとりですが、先生の作品が長く愛され、残っているのはなぜだと思われますか?
観客の求めるものと、私の作品が合っているからだと思います。愛国心やユーモアが盛り込まれた『三盗令』(1959年)という作品では、主人公の思いが観客の心をつかみました。芸術性も重要です。『満江紅』(1959年)は主演俳優李少春のために書いた物語です。その芝居をどんな俳優が演じるのか、どうすれば京劇が活きるのかを考えながら脚本を書きました。
劇作家はデザイナーだと思います。同じ題材のものを演劇にする場合と京劇にする場合では違ったものが出来上がります。京劇の手法を使って表現することがポイントです。なかでも重要なのは思想性、芸術性、人物、ストーリーです。京劇の特徴を活かして人物を描き出すのです。青衣を使ったら一節いい唄や演技を入れるといった見どころになる。京劇の程式の美しさというものを入れるのです。
呂さんの代表作、原作アレンジの
「楊門女将」(1959年)
最近の新作についてどう思われていますか?
一部の作品は成功していると思います。上海京劇院の新編歴史京劇『曹操与楊修』は成功でしたね。しかし最近の新作の大部分は話劇の観念を持って京劇を変えようとしているものが多く、舞台装置や照明、衣装に力を入れていて、京劇本来の特性をもって人物を描き出すことができていません。見た目ばかりを気にしていて内面を軽視しているように感じます。このような方法での改革は京劇の発展に不利になると思います。
京劇本来の力を持った良い芝居であれば、舞台装置等あってもなくても良い芝居となるのです。
現在の北京における京劇の動静はどうでしょうか?
現在、客の入りは多くはありません。若い人も少ないですね。問題なのは公演数が少ないことです。名優の公演が少ないのも原因といえるでしょう。何かを好きになるにはたくさんいいものを見ることが必要ではありませんか?上手い俳優の公演を見なければ、好きになることも、ファンになることも少ないのではないでしょうか。ですから名優と優秀な若手俳優の公演、特に新作の上演を多く行なうことがポイントだと思います。
呂さんのオリジナル作品
「三盗令」(1959年)
今後どうしていけばその問題は改善されるでしょうか?
俳優が有名になるまでは時間がかかります。いい若い俳優がいて公演の機会が少ないのです。これは劇団の体制の問題です。私たちは今、いろいろな道を探っているところです。
しかし京劇の未来は楽観的と言えるでしょう。中国政府は京劇の振興を重視し、援助してくれています。中央電視台には京劇専用のチャンネルがあり、旧正月になると京劇の特番が組まれます。これにより後継の養成にも成果が出ています。それに京劇はアマチュアの層が大変厚いのです。票房もたくさんあります。
やはり問題は劇団の体制と公演数と新作を増やすことだと思います。劇団の改革が成されれば希望はあるでしょう。改革は京劇を発展させるのに相応しい、京劇の理念をもって行なわれて欲しいですね。
外国人の京劇のファンが増えていることをどう思われますか?
とてもすばらしいことです!国際交流にもつながりますしね。京劇を取り入れたスーパー歌舞伎『新・三国志』では中日双方がレベルアップをはかれました。芸術交流は1回きりでなく継続することでいい効果が生まれます。市川笑三郎さんと市川笑也さんは京劇の剣舞が出来ます。京劇を経験したことが彼らの演技を豊富なものにしています。中国で京劇を学んで帰国してから日本の劇とコラボレーションするということもできるでしょう。
最後に、読者の皆さんに一言お願いします。
京劇には未来があると思います。それは京劇自体の改革もされていますし、多くの外国の方も京劇を愛していてくださるからです。日本の皆さんがたくさん京劇を見て、支持してくださることを希望しています。
中国京劇院 武生俳優 李光さん
良い芝居で良い俳優でなら客も入ります
国家一級の武生俳優として過去15回にわたる日本公演を行い、また京劇と歌舞伎の合同公演「リュウオー」にも出演した李光さん。今では退職して教職、演出家に携わっている氏に現在感じている京劇の教育現場の問題点、中国全体の京劇団の状況について語っていただきました。
北京における京劇の情勢はどうですか
現在京劇を見る人はあまり多くはありませんが、学ぶ人が少ないというわけではありません。お客さんが入らない理由は古い芝居ばかりだからと言うことができるでしょう。古い芝居には改革が必要ですし、新しい劇も必要です。良い芝居で良い俳優ならお客さんも入ります。優秀な人材が良い劇を作り、いい劇が良い人材を育てます。
では、その俳優を育てる教育のほうはいかがですか?
京劇を学ぶ学生は非常に多いのですが、よい先生が少ないと思います。歌舞伎にも存在していると思いますが、継承が難しいですね。
京劇は古い劇の型を習うことからはじめなければなりません。古い芝居がたくさんできて初めて新しい芝居ができるのです。過去にはいい先生がたくさんいて、私は幸いにもその時代の先生から学ぶことができました。先生が演じることのできる芝居が多ければたくさんの見本を見せてもらえます。それが芝居を学ぶのに良いのです。
教育現場に問題はありますか?
とても情熱が高く、良く努力する学生もいますが環境が整っていません。前学期に生徒たちの舞台を行う予定だったのですが、まだできません。公演を行う時にいろいろな先生に許可をとりにいかねばならないという学校の体制も問題です。劇団でも学校でも管理が大切です。良い俳優がいても環境が良くなければ芝居をやらせてもらえない、これも体制の問題というべきではないでしょうか?
昨年末に上海で京劇フェスティバルがありましたね。
去年12月に上海で行われた京劇フェスティバルで私は審査員をしました。そのとき新作が15本発表されました。予選でおちた新作もたくさんあり、これほどたくさんの新作があるということに大変興奮しました。他にも武戯大会というのが開かれ、私は予選の審査員をしました。武戯大会でも予選落ちした役者がたくさんいましたが、彼らのレベルは大変高いものでした。
今回賞をとったのは上海京劇院の芝居でした。北京は中央で上海は地方なのですが、中央よりも上海のほうが良かったのです。
人民大会堂の小礼堂で三岔口を演じたときのアメリカ大統領カーターとの握手
中国において中国京劇院というのはどういう位置を占めているのですか?
外国人から見れば国家の劇団ですから中国京劇院の公演が一番良いと思うかもしれません。しかしブランドではなく芝居と役者をちゃんと観て評価して欲しいですね。
過去、私たちの時代には中国京劇院はトップでしたし、いまでもいろいろな面でトップであることに違いはないと思いますが、少しずつ国家劇院としてのレベルは下がってきています。逆にまわりの劇団のレベルが上がってきているので中国京劇院と地方の劇団の差がだんだんなくなってきていますね。京劇フェスティバルでは1位は上海京劇院、2位は北京京劇院、3位は中国京劇院でした。でも2位の北京京劇院の公演の主演俳優は中国京劇院の俳優でしたよ。(笑)
別の劇団に役者を派遣したりするんですか?
拝金主義というか、別の京劇団の俳優でもお金さえ払えば他の京劇院に派遣するという現象が見受けられます。外へ人を派遣したりされたりできるようになったという事自体は悪いことではないと思います。しかし中国京劇院の主演俳優が北京京劇院の劇で賞を取るということが起こるのには体制ではなく人の問題があるのではないでしょうか?リーダーのモラルというのが大事であると思います。
李光さん演じる「野猪林」の林冲
最後に一言お願いします。
外国人も京劇を見たい、見るだけでなくやってみたい、これは大変すばらしいことだと思います。皆さんがこの特集を見て京劇に少しでも興味を持って、京劇のステージに足を運んでもらえることを期待しています。
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