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トリでも分かる かんたん京劇講座
京劇きほんの「き」
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中国の京劇事情
京劇ファンに聞く私が京劇にハマった理由
京劇ファン 大島啓子さん
李光先生は私の京劇の神様です!
出会った日から数えて12年。思わずこちらにも飛び火しそうに熱〜い戯迷(京劇ファン)大島啓子さんの激白をどうぞ。話し中にでてくる
については大島さんのサイト「中壇元帥進香団・日本支部」
http://www5a.biglobe.ne.jp/˜minauta/
をご参考ください。
■京劇との出会い
京劇との出会いは1993年冬、初めての海外旅行で行った北京の梨園劇場でです。せっかく中国に来たので観劇しました。そこは外国人向けの京劇の公演を行う劇場で、京劇をよく知らない観客が多く、場内は盛り上がりませんでした。衣装の美しさ、見事な技、パントマイムの面白さ。感動したシーンはたくさんあったのに、拍手するタイミングもつかめず、とても消化不良に終わりました。そこで次の日リベンジに向かったのです。
その日は技が成功したり、良いシーンがあったらとにかく拍手しました。すると他の観客も私達につられて拍手をし始め大変盛り上がったのです。私はあの時の俳優さんの笑顔を忘れることが出来ません。初めてで手探りの観劇でしたが、舞台と観客が一体となる感動が忘れられず「京劇をもっと知りたい!」と思ったのです。
■人生を変えた『リュウオー』
私は大学在学中に中華圏で広く信仰されている
という少年神を研究していました。『西遊記』等にも登場するため京劇にも登場します。その研究の過程で
の神話を題材にした京劇と歌舞伎の合同公演の『リュウオー』(1989年)のことを知りました。これは歌舞伎俳優の市川猿之助さんによるスーパー歌舞伎の第2作です。
私が見たのは公演を録画したビデオでしたが、その時の感動と興奮は今でも熱く心に宿っています。俊敏で流麗な京劇俳優の仕草と立ち回り!華のある女優の絢爛さと朗々と心に響く歌声!ドラマチックなストーリー展開の脚本はもちろん、中日両国の伝統芸能をたがいに尊重し融合した素晴らしい公演でした。主人公の
を演じた中国京劇院の李光先生と市川猿之助さんが交わした握手にどれだけ感動し、涙と拍手を捧げたかわかりません。そして今まで京劇をよく知らなかった事を後悔しました。いい芝居は見ている者の人生をも動かす、私にとって『リュウオー』はまさにこれにあたります。
■これがわかると京劇はもっと楽しい
京劇をよく知らなかった頃は京劇の立ち回りの凄さにばかりに目を奪われていましたが、京劇の約束事がわかってくると更に面白みが増してきます。例えば京劇では馬に騎乗していても舞台に馬は登場しません。鞭を持つことで馬に乗っているということになります。しかし愛おし気に馬を撫でる俳優の手の動きでどの位の大きさの馬なのか、どれだけ良い馬なのかを想像することが出来ます。実際には舞台上にいない「赤兎馬」が初めて見えた時はとても感動しました。写実ではなく、抽象の芸術を味わうのも京劇の醍醐味の一つだと思います。
■この俳優がすごい!
私の好きな京劇男優は前述の李光先生です。李光先生は「武生」で、中でも歌えることが要求される「文武老生」役者。私の京劇の神様です。私はその研ぎ澄まされた立ち回りにすっかり魅せられてしまいました。
女優を一人上げるなら、上海京劇院の青衣の主演女優袁英明先生です。私ははじめ立ち回りを中心とした京劇の武戯に魅せられて京劇にハマりましたが、袁英明先生に出会って初めて京劇の唄、文戯の素晴らしさを知りました。
袁英明先生の唄はどんな大きなホールの後部座席で聞いたとしても体中に歌の波が駆け巡ってくるように共鳴し、味わい深く響いてくるのです。一流の京劇俳優は、マイク無しで舞台の一番奥まで唱が届くそうです。この歌唱力との出会いは衝撃的でした。
■入門は立ち回りから
難しそうとか取っ付きにくいとか思わずに、初めての方は『西遊記』の演目など、立ち回りが中心の武戯の演目をまずは観劇してみてください。京劇の約束ごとはわからなくても、目を見張る立ち回りにきっと心を奪われるでしょう。それが京劇ファンへの第一歩です。奥深い京劇の世界があなたを待っていますよ。
2着所有の
衣装は上海京劇院に特注したもの!
中国戯曲学院留学生 木暮三津子さん
京劇は中国人の美意識を体現したものだと思います。
17歳から京劇を学び、19歳からは北京の中国戯曲学院に乗り込み京劇道を邁進するアクティブな京劇ファン木暮さん。若いながらも侮れない、たくさんの作品を見ているからこその京劇語りをどうぞ。
■偶然からたどりついた京劇
香港について書かれた本を読んだのがそもそもの始まりです。そこには広東地方の伝統劇粤劇の音楽が面白い、という記述があり、伝統芸能に興味があった私はさっそくCDを探しました。しかし見つかったのは京劇のCD。これは中国京劇院の日本公演の李光さんの大閙天宮、李維康さんの秋江、覇王別姫を収録したものだったのですが、聞いてみてぜひ実物を見てみたいと思い、次にビデオを購入しました。ビデオにはいくつかの作品が収録されていましたが、中でも印象的だったのは哭秦庭と戦冀州という演目です。声を張り上げて唱い、血涙を流す哭秦庭、戦冀州では女性と子供の首が飛び、旗を背負った将軍が空中を回転して地面に倒れる。この迫力に圧倒されてしまったのです。やっとライブの京劇を見たのは東京で行なわれた北京京劇院の三国志でした。
留学するほど京劇に夢中になったのは自宅そばでやっていた京劇体験講座に参加したのがきっかけです。これがとにかく楽しかったのです。でもそれ以上調べたくても日本には資料も少ないし、もちろん公演も少ない、わからないことだらけだったので、京劇のことをもっと知りたくて本場に乗り込んだのです。
■初めての人におすすめの作品
初めて京劇を見るなら上演数も多いし「盗仙草」(武旦)、それに閙天宮などの孫悟空もの(武生または武丑)はどうでしょう。ちょっと変わりものの演目では京劇には珍しく台詞や唄が一切なく立ち廻りやアクロバットで山に登る様子や水中での戦いを表現した見応えある作品「雁蕩山」などがあります。
それから演目ではないのですが反串といって、普段の自分の役柄(行当)と違うものを演じるパロディのようなものがあります。体格のいい隈取役の人が若い女性を演じたりして面白いのですが、反串をすることによって芝居への理解を深めることができるという意味もあり、単なるおふざけとは違うようです。今年の中央電視台のお正月特別京劇番組でも二進宮という芝居の反串をやっていました。
■京劇は見れば見るほど楽しい
京劇の魅力は初めて観る人でもよく観る人も同時に楽しめるところだと思います。たくさん京劇を観ていくと、大体の意味しかわからなかったのが細かいところまでわかるようになり、その表現の繊細さに感動するようになります。俳優の個性や表現の違いなどを感じるのも楽しいですよ。
今まで京劇の舞台は数えられないほど観てきました。北京には全国各地から優秀な俳優さんが公演に来るので、好きな俳優さんの北京での舞台はほぼ大体チェックしています。同じ配役の同じ演目を何度も観ることもあります。いい芝居は何度観ても面白いし、俳優の演じ方も変わるので勉強になります。
その中に今すぐ思い出せるほど印象に残っている舞台だけでも何十もあります。一番もたくさんあって困るのですが、最近では昨年12月に上海で開催された京劇フェスティバルで行われた武戯大会(立ち廻り中心の芝居のコンテスト)が印象的でした。参加した26の芝居すべてを観ましたが、みな技術が高く、人物の表現もすばらしかったです。中でも田磊さんの賺歴城と、王立軍さんの林冲夜奔に大変感動しました。
木暮さん演じる「貴妃酔酒」の楊貴妃。
■変化を続け「生きている」文化
昔は京劇は単なる古典芸能だと思っていましたがそれは間違いでした。京劇は今でも演技の方法や衣裳、演出法など多方面でいろいろな変化が現れ、多くの新作が上演されたりする生きていて変化しているものなのです。
こうして京劇により近い環境に身を置いていると、京劇の未来を考えて複雑な気持ちになるときもあります。気になるのは観客の減少と表現の変化です。というのは、京劇は中国人の美意識を体現したものだと思うのですが、時代の流れのせいか表現が西洋化、現代化していると思うからです。それ自体は悪いことではないですが、安易にミュージカルや現代演劇の手法を取り入れ、失敗している事も多いです。ですから、京劇の美意識に合うかどうかと、方法を考えて新しいものを取り入れていってほしいと思っています。
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