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第86回
ボランティア 陳祖恩
日本の女子学生
かつての日本人は、善行を尊んでおり、明治維新以降は同胞相憐れみ、博愛の精神を更に発揮させるようになった。昔から、しばしば地震や洪水などの天災に見舞われる日本だが、その度に様々なボランティア活動が行われ、災害被害を最小限に抑えてきた。上海の居留邦人も、祖国から遠くはなれて住んでいたが、ボランティアへの熱心さは、母国同様に失われることはなかった。
明治23年(1890年)6月、長崎で霍乱が流行し、日本全土に蔓延した。当年、霍乱患者は4万6019人、死者は3万5227人にも達している。 霍乱蔓延を知った、創刊間もない上海の日本語新聞『上海新報』は、第7号(7月19日発売)に修文書館が提起した『長崎悪疫防圧費義 捐金募集広告』を掲載。7月25日には上海から長崎県の中野健明知事へ、41円80銭の寄付金が寄せられた。
以下、寄付金名簿に記載された 人々を紹介する。呉泰涛(内外綿会社出張者)5円、広業洋行5円、平岡製靴店5円、喜多太助5円、吉島徳三(東和洋行主)5円、修 文書館5円、福井菊三郎1円、芳川俊雄1円、長谷部信義1円、田中寿雄1円、青木道孝1円、遠藤藤次郎1円、山本条太郎(三井洋 行上海支店長)1円、石田清直1円、池田広次1円、匿名1円、錬原幸次50銭、山本臘八郎50銭、匿名50銭、柘植広海20銭、匿名10銭。
1907年に上海日本居留民団が成立すると、同団が居留邦人のボランティア活動の組成、手配を担当するようになった。1909年7月31日、大阪市北区で大火災が発生し、1万4000戸が焼失した。上海居留民団はすぐさま義捐金運動を実施。9月23日には4122円の義捐金が集った。1914年初頭、鹿児島の地震と東北地方の飢饉の時も、居留民団は率先して義捐金を募る一方で、「滬上評論社」のチャリティー講演を実施し、被災地のために奮闘した。3月26日、募金8320円が外務省を通じて国内の被災地に送られている。
1923年9月1日午前11時58分44秒、世界を震撼させた関東大震災が起こり、同時に発生した火災と津波の影響も含め、死者91万344人、 46万4909戸が全壊、もしくは焼失する大規模な被害を被った。震災2日目、日本の各方面では上海からの義捐金6万元を受領。この内訳は工部局が2万元、発明王の異名をとる豊田佐吉が1万元、矢田総領事が千元などである。9月3日、上海居留民団は「賑災義援募集委員会」を結成し、各被災地へと寄付金を 送った。同委員会の統計によると、第1回は26万0988元95銭、第2回に1万1745元32銭、計27万2734元27銭を送金している。一方で、女子学生たちが制服姿で目に涙を浮かべ、街頭で衣服の寄付を呼びかけたところ、9月7日には3000枚の衣服が寄せられ、すぐに消毒処理に移された。閔行路新康里に住む大矢 英三郎はこの時、100枚もの衣服を寄付している。9月13日、女子学生たちは更に5500件の衣服を集め、山城丸で神戸に送られた。
居留邦人たちは、中国各地で起こった災害に対しても、人道主義の観点から様々なボランティアを行なった。1920年9月、華北地方で干ばつがあり、上海の各界で、大々的に援助活動の呼びかけが行なわれた。 10月17日、日本芸妓聯もチャリティー演芸会を行い、収益銀1000元余りを中国の被災地へ寄付。 10月25日、居留民団行政委員の田村秀実が銀500元を寄付。 10月31日までに、居留邦人たちは華北被災地に1万9595.5元を、上海証券物品交易所も2万5000元を寄付した。
居留邦人のボランティア活動は、民団が手配したほかに、私的団体も実施している。1909年3月7日に設立された相領会は、貧しい居留邦人の看病をサ ポートすることが目的だったが、その後生活相互扶助組織として活動。仏陀会は1910年1月に成立し、無料宿泊所と職業紹介所を設立して貧困者を保護し、病人の救済活動の斡旋なども行なった。愛人会は1912年12月5日設立。福州路137号の中東薬房店主が発起人になり、上海に来たばかりの日本人に仕事を紹介していた。大和婦人会は主に子供を助ける会として発足。1920年3月20日には日本小学校で躬行会を開き、幼児のために簡素着を作った。1921年 12月1日、中国孤児の収容・教育及び中国の貧しい女性が無料で出産できるように、明星社の名義で10万元の経費を募った。 12月8日、街頭に野宿する貧困者救済のための宿舎3棟が着工。
そして今日も、上海に住む多くの日本人が、積極的に様々なボランティア活動に参加している。
 
  陳祖恩  
 
復旦大学歴史系卒業。上海東華大学人文学院教授、上海社会科学院歴史研究所研究員。 日本の茨城大学、法政大学、神奈川大学でも学んだ。最近の著作に「尋訪東洋人〜近代上海の日本居留人」、「白竜山人王一亭伝」などがある。