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第52回 上海にいた日本人 |
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上海にある日本の建造物 |
陳祖恩 |
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元三菱会社上海支店の建物 (広東路×四川中路) |
近代都市を彩る硬い芸術、建造物。上海が西洋の列強諸国に侵食され、次々に租界が作られた時、各国はそれぞれの文化を喧伝すべく、独特のビルや家屋を各租界に建てた。日本の建造物は、同時代の西洋諸国や中国のそれに比べれば数や芸術的特色は少ないものの、上海という都市を形成する上で、大事な役目を果たしている。
租界が誕生して間もない頃(1850年頃)は、まだ上海居留邦人の数は少なく、日露戦争(1904年)後にようやくその数を増やした。20世紀に入り、上海の都市開発スピードは加速度を増す。居留邦人たちは民族と国力のシンボルだとばかりに、日本と西洋から一流の建築設計家を招聘し、自分たちの社会のための建造物を建て始めた。
現・黄埔路106号にある元日本領事館は、上海における日本国の象徴として、1911年9月に建てられた。深い紅色の3階建ビルは駒型屋根の曲線が美しく、細部まで華やかな彫刻が施されており、ローマ式の特徴がよく表れている。設計は米国留学経験のある平野勇造(1864〜1951)。早期に上海進出を果たした三井洋行上海支店ビル(1903年完成、(現・四川中路185号)も平野の作品だ。この2棟のビルは共に上海近代優秀建造物の一つとして、保護リストに掲載されている。 |
居留邦人の主な社交場だった上海日本人倶楽部(元・文路、現・塘沽路)は「一致団結、対面維持」のモットーに掲げ、1915年に完成。設計は日本工手学校(現・工学院大学)卒業生の福井房一(1869〜1937)。日本の対外・対内交流の場、そして大和民族の明治維新の基本国策を表そうと、倶楽部の外観は洋風に、内装は和風に造られた。1914年に完成した三菱会社上海支店(現・広東路68号)も福井房一の作品だが、残念な事に日本人倶楽部は1995年に取り壊され、三菱会社上海支店も長年放置された後、ある民間企業に買収され、現在改装中である。
上海にある、日本人社会で最高の科学研究機構だった上海自然科学研究所(1931年完成)は楓林橋に近い静かな一角、旧フランス租界の祁斉路(現・岳陽路)にあった。「日本の科学の殿堂」たるべく、東京帝国大学工学部教授内山祥三(1885〜1972)にわざわざ設計を頼んだ。内山は東大安田講堂の主任設計者でもある。東大第14代総長で、1972年に日本文化勲章を受章。彼が設計した上海自然科学研究所は、東大図書館のゴチック形式とよく似ており、科学のもつ重要性、厳格性を強く表現している。
外灘には横浜正金銀行上海支店(1924)、日清汽船会社上海支店(1925)、台湾銀行上海支店(1926)など、日系の銀行、大会社のビルがあった。その殆どは西洋の建築家が設計したものだが、そのデザインは日本の特徴も取り入れてある。例えば貿易・金融専門という特殊形態の横浜正金銀行上海支店(現・中山東路24号)は、有名な公和洋行が設計したのだが、日系銀行のシンボルとして、門扉には特別に作らせた武士の甲冑が飾られていた。 |

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| 元日本人倶楽部 |
逆に、日本の建築家が上海で西洋建築の設計に携わった例もある。1910年に竣工した外灘の英国総会の室内設計者は「建築界の鬼才」と言われた下田菊太郎(1866〜1931)。下田は日本で最初に米国建築家協会の資格を取った建築家。彼がデザインした英国総会にある、長さ34メートルのバーカウンターは、イタリア産大理石と、高さ5メートルのゴムの木を使用した、当時の極東最大の、最も豪華なバーカウンターだった。
石本喜久治(1894〜1936)も上海で西洋風建造物を設計している。石本は日本帝国大学建築学科卒、ドイツに留学経験もある秀才で、上海に建築設計事務所を開いた。彼が設計した上海第7日本国民学校(協賛路平昌街)の校舎は表現派の特徴がよく表したもの。同様に彼の手による上海第2日本高等女学校(東体育会路)は校舎の美しさと環境のよさで、就学年齢にある女性から人気が高かった。数十年の風雨に耐えた日本人建築家の設計による建造物はいくつか現存するので、最後にそれを列記する。
河野健六設計の日本式映画館、劇場だった東和劇場は1936年完成。現在は解放劇場として営業を続けている(乍浦路341号)。元西本願寺上海別院(現・乍浦路471号、現・ダンスホール。1931年完成、岡野重久などが設計)、元日本電信局(長治路と天潼路の交差点、1915年完成、武富英一設計)。 |
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陳祖恩 |
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上海社会科学院歴史研究所副研究員。
1994年から上海の日本人居留者たちの研究を始める。著書に《明治時代の上海日本人居留民》《上海日本居留民の子弟教育》《日本僑民在上海(写真集と共著)》などがある。 |
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