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  Business Woman Interview No.54
 
  髪工房藤島 オーナー
藤島まち子(Machiko Fujishima) さん

 
今でもカットしている時がいちばん楽しい。
キャリアを積めば積むほど、
理容師の仕事が好きになりますね。



  美容院は多くとも、理容院という概念がほとんどなかった上海において、日本式のサービスと技術を提供しているのが、藤島まち子さん主宰のヘアサロン「髪工房藤島」である。理容師として30年以上のキャリアを持つ藤島さんが上海で自身の店を構えたのは昨年のことだが、確かな技術と丁寧な接客でファンを呼び、あっという間に人気店となった。日本でさまざまなVIPから指名を受けていたという藤島さんは、その技術もさることながら、飾らない人柄と明るい性格が何よりも魅力的だ。理容師という天職を持つ藤島さんにとって、上海はのびやかに働ける場所であり、そして何より元気の素になっているようだ。

藤島さんが、美容師ではなく理容師をめざした理由を教えていただけますか? 

  私の実家は、父方の先祖代々どの時代にも誰かひとり理容師がいたんです。父の妹も理容師で、どうやら血筋のようですね。子供の時からいつも父の通っている理容室にカットに連れて行ってもらっていましたが、理容室は夏は涼しいし冬は暖かい、店の中もきれいだし、理容師っていい仕事だな、こんな仕事ができたらいいなと、子供心に理容師の働く姿に憧れがありました。小学生の頃から近所のおじさんやおばさんに我流でカットしてあげたり、人の髪の毛を触るのが大好きな子でしたね。すでに小学校5年生の時には、将来は理容師になると決心していました。

藤島さんが理容学校に通っていた当時、女性で理容師をめざしている方はどのぐらいいましたか?  

 200人いた同期の中に女性が50人ほどいましたが、3ヵ月ぐらいでみんな止めてしまって。気が付けば半分以上いなくなっていました。今も理容師をやっている女性は私だけで、男性も3人ほど。みんな辞めて他の仕事に変わってしまいました。理由は理容師の給料が安いこと、あとは技術がむずかしすぎるから、努力し続けられなくて断念してしまう人が多いのだと思います。
  理容の技術で最もむずかしいのは「顔剃り」で、これは本当に技術を要します。最初は人の顔をあたるのがこわくてカミソリを持つ手が震えましたね。200度以上の熱を持つアイロンでミリの髪を巻く『アイパー』の技術も本当に手強かった。でも必死に練習すればできるもので、要はこの技術を何としても覚えたいという熱意の部分があるかどうかだと思います。もうひとつは緊張感ですね。今でもそうですが、スタッフ講習の時はマンツーマンではなく、スタッフ全員が取り囲んで、皆が見ている中で教えるようにしています。その方が緊張感があって、逆に必死に覚えようとするものなんですよ。 

藤島さんの修業時代はどんな感じだったのでしょうか。 

 
▲大人気の育毛剤Kaminosukeをはじめ、 日本製のヘアケアグッズは試す価値あり。

  理容院に住み込みで、昼間は理容学校へ、夜は仕事をしていました。当時は女性の理容師が珍しかったようで、お客さまにとてもかわいがっていただきましたね。私の場合、今でもラッキーだったなと思うのは、初めについた先生から、『仕事は早く、丁寧に、気持ちよくやらないといけない』と、徹底的にたたき込まれたことです。当時はいつもおまじないのように、『早く丁寧に気持ちよく』『早く丁寧に気持ちよく』とつぶやきながら仕事をしていました(笑)。でもその訓練がよかったのか、今でも椅子にお客さまが座った瞬間、顔の形を見てどんなスタイルが似合うのかすぐイメージできます。だから私のカットは早くて、だいたいどんな人でも6〜10分で終わりますね。
  ただひとつ苦手だったのは人と話す「接客」で、今の私から想像もできないでしょうが、昔の私はすごく人見知りするタイプで、理容師になって6年間ほどお客さまとまったく話ができなかったんです。後でお客さまに「あんたに話しかけたら泣かれるんじゃないかと思った」って言われたぐらい(笑)、いつも緊張していました。それがだんだん度胸がついて今では人前で話すのもまったく平気。慣れるものですね。 

藤島さんが上海で店を出そうと思ったきっかけを教えていただけますか?いつかは理容師として独立しようと思っていたのでしょうか。
   
 
▲藤島さんを支える中日スタッフと。日本人スタイリストの久保氏も加わり、 女性客のフォローも万全だ。
  理容師免許を取ってからも修行時代の店で働いて、その後は福岡県郊外に自分の店を持っていたこともありました。ただ将来的なことを考えて、もう一度自分の技術を磨くために都会に出ようと。それで店をたたんで、京都のホテルに就職したんです。20年近くホテルの理容室勤務でしたが、お客さまは京都の太秦で撮影している芸能人やタレントをはじめ会社経営者などVIPが多く、とても勉強になりましたね。仕事に自信がついてからは独立を考えるようになりましたが、誰かに反対されたり、指名制の店だったので必死に店に引き留められたりで、3回ほど話が流れているんです。もし次回話が来たら、もう誰にも相談しないで自分の思う通りにやろう。そう決心してからしばらくして、「上海で店を出さないか」というお話を知り合いの社長からいただいたんです。
  話を聞くと、上海の店は京都と同じくホテル(新錦江大飯店)の店舗だったので、これはご縁だ、もう決めてしまおう!と、2ヵ月ぐらいで店を辞めて、上海に行く準備をしました。紹介してくださった方も、まさか私がこんなに早く店を辞めて上海行きを決めるとは思わなかったようで、びっくりしていましたね(笑)。上海には美容室はあっても理容室という概念はなかったので、逆にそれがおもしろいとホテル側も興味を持ってくれて、気が付けばとんとん拍子に決まってしまったんです。 

上海に来ることに迷いはなかったですか?  
 
  全くなかったですね。実は生まれて初めての海外旅行が上海で、そのまま今に至るまで住みついているんです(笑)。私の場合、普段はおとなしいけれど、いざとなったら思い切ったことをやるタイプで、たまに周りに驚かれますね。ホテルで働いてる時も、社内結婚の前例がなかったところに「じゃあ前例を作ります」って本店の同業者の人とあっという間に結婚したり、上海で独立する件もぱっと決めてしまった。上海行きについては、すべて決定して報告したら主人は唖然としてましたが(笑)、自分が死ぬときに『あれをやればよかった』と後悔したくないから、人様に迷惑をかけないことならば全力で頑張りたいなと思ったんです。ただ、日本に帰国した時、主人の母や妹が私をひと言も責めずに、「体を壊さないように頑張ってね」としみじみ言ってくれた時には、さすがに申し訳ないなと思いました。
 
上海で実際にお店を出してみていかがですか? 

  来てみたらこれが楽しくて。オープンして1年半ぐらいですが、心の底から上海に来てよかったなと思います。立ち上げ時はイヤなこともいっぱいありましたが、今はその経験もちゃんとプラスになっているし、自分の周りに起こる出来事はすべて必要があったから起こったんだと、今なら思えますね。自分にふりかかってくる出来事はすべて必然的に起こったのだと思うし、それをプラスに受け取るのもマイナスに受け取るのも自分次第だと思っています。
  スタッフ教育については、日本人に対してのマナー指導がむずかしく、自分の既成概念をくつがえされたことも多いですが、今は当初の目標に近づいてきています。日本人のお客さまが80%で、理容室ですが最近は女性客の割合も増えています。日本人スタイリストもいるので、男性だけでなく女性のスタイリングもできますし、デジタルパーマも導入したので、もっと女性客の皆さんに来てもらえたらと期待しています(笑)。部屋はすべて個室でリラックスできますから、ヘアカットだけでなく、顔剃りや耳ろうそく、マッサージなどもぜひ試していただきたいですね。特に男女を問わず「育毛コース」が人気です。今後は上海市内に2号店も出したいし、アジアだけでなく他のエリアに出店する夢もありますね。
  私はどちらかと言えば後ろを振り返らないタイプで、前しか見ていないんです。もし失敗したらそれを糧にしていくタイプで、次はどうすれば失敗しないか考えます。たぶん、そうやって前に前に進んでいく自分が好きなんでしょうね。

これからもずっと理容師の仕事を続けていきますか? 

 理容師になって30年を超えましたが、私にとっては大好きな仕事で、それは昔から変わらないですね。今でもカットしている時がいちばん楽しいです。年数がたてばたつほど、ますますこの仕事が好きになりますね。しかも年々お客さまへの感謝の気持ちが強くなるし、自分の技術を受け継ぐスタッフを育てたいと思うようになりました。 
  昔からそうですが、現場で仕事をしているとお客さまから教わることが多く、本当に「お客さまは神さま」だと心から思います。上海での仕事は、まるでもぐら叩きのようにいろんなハードルが出てきますが、それをクリアしていくことすら楽しい。
  私がやるなら絶対うまくいく!と自分の脳みそにイメージしながら(笑)、これからも楽しんでやっていくつもりです。
■ 髪工房 藤島
上海市長楽路161号新錦江大酒店2F
TEL&FAX:5466-0007 
営):9:00〜23:00  
※日本人スタッフ常駐(藤島氏は火曜日休み)
カット+顔剃り:250元(月〜金)300元(土・日)
カット:200元(月〜金)250元(土・日)
耳ろうそく:120元(両耳) 
嫁接睫毛:1回198元(2ヵ月保証あり)