| チルド食品の流通拡大へ 繋げる消費者までの道 拡大傾向をみせるチルド食品市場に、日系メーカーが食指を動かし始めている。 市場環境の整備は進むものの、「チルドチェーン」の構築を阻むいくつかの障壁も存在する。 食の安全という重責を担い、チルド食品の流通拡大に挑むメーカーと物流の現場に迫った。 |
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| 広がるか、「輸ニュウ品」(中国乳製品市場で明治乳業が先陣) | |||||
| 「国民全員に毎日一斤の牛乳を」 | |||||
昨年四月、重慶の乳牛施設を視察した温家宝首相は、こう表現して乳業界の発展を鼓舞した。〇六年の業界十大ニュースの第一位に輝いている。 波恩市場和価格信息中心(ZMP )によれば、中国の〇六年牛乳生産量は三〇〇〇万トンを突破する見込みで、ロシア、パキスタン、ドイツを抜いて前年の世界六位から一気に三位に躍り出る。 こうした急成長を一面で支えているのが、政府の積極的な支援だ。中国政府はすでに「中国乳業十一五発展計画・二〇二〇年長期目標計画」を策定。具体策のひとつとして、昨年は中央財政からの補助金を拡大させ、一億元の資金を二二省一七八県の乳牛品種改良事業に充てた。酪農家に対する支援は、政府の掲げる農村改革に絡んで今後も強化されていくことが予想される。 |
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| 混沌とする市場、垂涎の的はヨーグルト | |||||
昨年末、乳業大手の三鹿集団の株式四三% を保有するニュージーランドのフォンテラが中国で牧場を経営すると発表。建設場所や出資概要は明らかにされていないが、三〇〇〇頭の乳牛を飼育し、今年一〇月にも生産を開始する計画という。 さらに、ほぼ時を同じくして発表された業界最大手の蒙乳乳業と仏ダノンの合弁会社設立のニュースは業界を震撼させた。ダノンは業界三位の光明乳業の株式約二〇%を保有する第三株主であり、合弁の発表はダノンが上海にあるヨーグルト生産の全ラインを、光明の乳品八厂(上海浦東)に移管すると宣言した矢先のことでもあった。 蒙乳とダノンが設立する合弁会社は資本金一億ドル(出資比率は蒙乳五一%、ダノン四九%)、投資総額は一六億元に上るとみられる。主力製品は、成長余力が最も大きいとされるヨーグルトだ。乳製品の先進国では市場全体に占めるヨーグルトの割合が四〇%程度に達しているのに対して、中国は約一五%しかない。直近のデータを見ると、今年一〜五月の全国都市部住民の一人当たり乳製品消費量( 月平均)でヨーグルトは前年同期比で二〇% 近く伸長している(表1)。上海に限れば三五% 超の伸びだ。「(ヨーグルトの)売場スペースは明らかに広がっている」と業界関係者は口にする。 蒙乳の昨年上半期におけるヨーグルト販売は前年同期比六六% 増の四・五五億元に達したが、売上全体の比率ではわずか七%。ダノンとの合弁でヨーグルト事業をテコ入れしたい同社の狙いは明確だ。 蒙牛以外にも、ダノンが生産ラインを移管すると発表した光明の乳品八厂は昨年下期に拡張工事が完成し、ヨーグルトの生産能力を七〇〇トン/日に増強した。また伊利集団は蘇州工業園区にヨーグルトの一大生産拠点を建設し、二・八億元を投じた第一期が昨年末に竣工。年産能力は一〇万トン/年、全一二ラインで約八〇種を製造できるという。 | |||||
| 先行した明治乳業、品質管理を徹底 | |||||
先行したのは明治乳業。昨年一一月末から、九州工場(福岡県八女市)で製造した要冷蔵牛乳「明治牛乳」と「明治ブルガリアヨーグルト」「のむヨーグルト」の販売を上海市内の日系スーパー十数店舗で開始した。 同社は牛乳販売への足掛かりとして三年前からチーズ、マーガリンの輸入販売を開始し、代理店の台資系冷凍食品メーカーによる倉庫保管、店舗配送、売場巡回のチルドチェーン構築を進めてきた。販売開始にあたっては、九州工場から上海市内の店頭に並べるまでのシミュレーションを実施し、一定の温度に保たれているか、ヨーグルトの形状が崩れていないか、入念なチェックを行っている。 販売開始から数カ月を経て、すでに地場系スーパーから引き合いもあるが、あくまで品質管理を重視し、取り扱い店舗の拡充には慎重な姿勢を崩さない。 要冷蔵牛乳の輸出を実現できたのには二つの大きな要因がある。博多〜上海間の高速RORO船「上海スーパーエクスプレス」と上海検験検疫局から特例で認められた「快速通関」だ。 「快速通関」とは、通常であれば通関手続きから衛生証書の発行までに二〇日程かかるところを、当局にサンプルを届ければ一両日中に衛生証書が発行される仕組みとなる。当局が日本の製造現場まで足を運ぶなど安全性・衛生管理の徹底した調査が行われ、約一年半かけてようやく取得した認可だ。 当局は今回の「快速通関」をテストケースと位置づけており、日本の乳業メーカーが後に続くことができるかどうかは同社の展開にかかっているといっても過言ではない。「それだけシビアな対応が求められる」と明治乳業(上海)有限公司の山口泰三・総経理は語気を強める。 | |||||
| チャンスうかがう第二陣 | |||||
その今後を占う試金石となりそうなのが、三月一〇〜二五日、上海市内の久光百貨店地下食品売り場で開催される「牛乳・乳製品フェア」(ジェトロ、日本酪農乳業協会主催)だ。明治乳業を含めた乳業メーカー九社のロングライフ(LL)牛乳、チーズ、バターなど計四〇品目余りを試験販売する。明治乳業の山口氏も「日本品質を一緒になってアピールするいい機会になる」と意欲的だ。 ジェトロ上海の久染徹・市場開拓二部部長は「所得が高い層ほど乳製品の購買力は高いとみられる。また、富裕層を中心に食の安全・安心に対する意識が高まっている中で、安全性の高い日本の乳製品が受け入れられる余地はあるのではないか」との見方を示す。 ジェトロは一昨年、同じく久光で日本酒・焼酎の試飲販売イベントを実施し、その後の輸出拡大につなげた実績がある。ただ、乳製品は酒と違い、「高ければ高いほどよい」とされる贈答品としてのニーズが見込めそうもないなど、単純に成功パターンに乗れる保障はない。 では、日本の乳業メーカーも気になる明治製品の売れ行きはどうか。「明治牛乳」(一L)の店頭価格は約四〇元。光明が上海市郊外の金山牧場で生産し、地場商品では最高価格帯に属す高品質生乳「優倍」は約一一元。消費ターゲットが異なるとはいえ、価格差は実に約四倍だ。 「当初様子見だった小売スーパーからの注文は増えている。このペースでいけば、(テスト期間である)年末までの売上目標に手が届く」と山口氏は言う。 ただ、ここで重要なのは地場の上海人がどれだけ購入しているかということ。久光では、日本人の購入者は一五〜二〇%というが、山口氏は「全体でどれほどの上海人が購入しているのかはつかめていない。本当の評価は、日系以外のスーパーで売り出してからになるだろう」と、あくまで勝負はこれからとの考えだ。 |
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| 消費者意識の向上がカギ | |||||
| 日本からの「輸乳品」が中国人の富裕層に受け入れられるには、漠然と抱いている安全・安心などのイメージを、確かな付加価値として認めてもらわなければならない。 その上で、ひとつの障壁となっているのがパッケージだろう。明治乳業の商品を見れば、中国語表示で書かれたシールが一枚貼ってあるだけで、製造技術や健康アピールの詳細は日本語表示のままなのがわかる。「(シールは)規定により必要最低限の情報しか載せることができなかった」と山口氏もネックを認める。 同社は、単に成分などの特長を伝えるだけでなく「ヨーグルトをサラダに使うなど、中国に馴染みのない新しい用途を提案していきたい」と高級マンションへのDM配布や店頭プロモーションなどアピール方法を模索している。 一方、市場整備の動きは「輸乳品」にとって追い風といえるだろう。液体牛乳のパッケージに「鮮」の字を使ってはならないとされる「禁鮮令」が今年一月一日から正式に施行された。細菌や抗生物質の量を厳しく規制する「生鮮牛乳収購標準」の改訂版も間もなく公布される見通しだ。 ただ、裏を返せば、取締りを強化せざるを得ない事情が市場に存在しているということでもある。例えば、数年前には粉乳を水で戻した「還元乳」が「新鮮乳」として売られていたことが問題となったほか、抗生物質ゼロの表示に懐疑的な意見も一部で聞かれる。 そんな中、「禁鮮令」は三度の延期を経てようやく施行された。製造過程で熱処理を施した牛乳が「新鮮」に相当するのかをめぐり激しい議論が巻き起こったのが原因だ。消費者の関心がそれだけ高まっていることの表れといえる。消費者意識の向上は、乳製品市場の底上げにつながる。それはまた、「輸乳品」市場の拡大を意味している。 |
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