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特集
チルド食品の流通拡大へ
繋げる消費者までの道
拡大傾向をみせるチルド食品市場に、日系メーカーが食指を動かし始めている。
市場環境の整備は進むものの、「チルドチェーン」の構築を阻むいくつかの障壁も存在する。
食の安全という重責を担い、チルド食品の流通拡大に挑むメーカーと物流の現場に迫った。
 
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  メーカー3社の動き
流通のチルド環境整備を背景に事業展開を加速させる日系メーカー
 
 
流通環境の整備、チルド商品の売場拡大を背景に、日系メーカーが中国での事業展開を活発化させている。チルド≠フ概念自体、歴史の浅い特異な市場で、チルド商品の拡販に挑む3社の動きを追った。
 
     
  ヤクルト
上海、広州で確かな成果。今後は多地域開拓へ
 
  ヤクルトは中国大陸に二〇〇一年にいち早く進出。広州を足がかりに、上海でも土台を固め、昨年は北京での販売もスタートさせた。流通は一部専門業者に委託、ヤクルトレディによる販売網も構築している。

 
  〇二年より中国大陸で販売開始  
 
上海ヤクルト有限公司の高松氏(左)と鶴貝氏

ヤクルトは、広州ヤクルト有限公司を二〇〇一年一月に設立し、〇二年六月より「ヤクルト」(中国名・養楽多)の製造と、広東省での販売をスタートさせた。同社は〇三年に上海での販売もスタート、〇四年には売り上げ一億円を突破し、黒字化を達成している。
その後、上海での販売強化と華東他地域、華北への進出を視野に、上海ヤクルト有限公司を設け、〇六年八月より上海工場での製造も開始した。さらに、〇五年四月、中国事業の統括管理会社・中国ヤクルト有限公司を、同年九月に北京での販売事業を行う北京ヤクルト販売有限公司を設立。また、〇六年九月には上海、南京、北京以外の都市での販売を担う上海ヤクルト販売有限公司を設立している。
 
     
  広州から上海へヤクルト便輸送  
 
ヤクルトレディは広州で500人、上海で35人体制を構築している






ヤクルトは、二度から一〇度での保存を推奨するチルド商品だが、〇二年、広東省での販売をスタートさせた際は変則の形を採った。流通のチルド環境が貧弱であったため、やむなく「常温保存可、冷蔵すればなお美味しい」とラベルを掲載。「冷蔵であって冷蔵とは呼べない売場がほとんどで、ストックヤードにチルド施設がない小売もざらだった」と、上海ヤクルト有限公司の高松幸雄・董事総経理は振り返る。
その後、上海に進出した〇三年後半に、通常のラベルに切り替える。上海には、すでにコンビニエンスストアが普及しており、チルド設備も広東省に比べて良好だった。広東省ではその際に、チルド対応できない小売から商品を引き上げた。
上海工場が稼動する〇五年末まで、広州工場から上海へのヤクルトのピストン輸送が行われた。これを担当したのが、日新グループの北京三新冷蔵儲運有限公司。
「当時、五度から七度の温度帯で、七トン車を長距離で往復できる物流業者は他に見当たらなかった」
(高松氏)。  広州から上海へのヤクルト便は、はじめ七トン車が週一回、半年後には七トン車が週五回となり、最終的には夏場に二〇トン車が週五回走った。
 
     
  レンタルトラックで自社物流  
  ヤクルトは上海での流通を上海良菱配銷有限公司に委託している。これについて、上海ヤクルト有限公司の鶴貝高之・董事副総経理営業部部長は、スピード交通規制資金回収の三つ理由を挙げる。「市場の類似品、ニセモノを退け、早く市場シェアを獲得するにはスピードが必要だった。また上海は交通規制が厳しく、市外から内環状線へ入るにはライセンスが必要だが、この取得が非常に難しい。さらに同社の卸機能も、資金回収の面で大きな魅力だった」(鶴貝氏)。
しかし、「自社流通をやりたい」(高松氏)というのが本音。ローカルのコンビニなどで、バックヤードや売場でのずさんな管理が散見される中、自社流通をすればその監視もできる。苦肉の際として、同社では、ライセンスを持つ食品メーカーや物流会社のトラックとドライバーをレンタルした自社物流を行う。「南京や北京でもこの手法を採っている。現在、上海ではレンタルはまだ二台だが、もっと増やしていくつもり」と高松氏は述べる。
 
  ヤクルトレディの組織化も進む  
  販路開拓は、日系のコンビニからスタートした。その後、カルフールなどハイパーマートを開拓し、ここ一、二年でローカル系のコンビニへの導入も完了させている。
また、販売店以外に、ヤクルトレディによる訪問販売も実施している。現在、広州は五〇〇人、上海は三五人体制となっている。今年、上海ではヤクルトレディの二拠点にさらに三拠点を加え、一〇〇名体制に充実させる構えだ。鶴貝氏は、「ヤクルトは説明が大切な商品。ヤクルトレディはなくてはならない存在だ。小売店と、一般オフィスと住宅=ヤクルトレディで、販路を両輪で考えている」と説明する。
 
     
  中国全土で五三〇万本/日産目指す  
  「ヨーグルトなどの競合品が増え、市場は活性化してきている。小売店でのチルド売場が大きくなってきた」と高松氏は語る。ヤクルトの売り上げも好調だ。今年一月の上海市場での販売本数は、前年同月比約二七%増で伸びた。上海工場では、現在の三〇万本/日産を今年四〇万本に増産、さらに次のステップで七〇万本に、先々には一三〇万本にまで増やす青写真を描く。
昨年五月以来、上海工場から北京に八トン車が週三回走っている。今年は、北京とその周辺都市での販売が強化される見込みだ。さらに、上海以外の華東地区の都市での販路拡大も予定する。
ヤクルトは、すでに広州と上海で一定の成果を挙げているが、高松氏は「まだまだ」と貪欲。「上海の人口を一三六〇万人として、その一%が毎日ヤクルトを一本飲むと合計十三万六〇〇〇本。これが目安になるが、今はまだ一〇万本弱で、〇・八%前後。この数字は広州も変わらない」(高松氏)。
一%を超えると、市場が一気に拡大する――これが世界の市場を開拓してきたヤクルトの経験則だ。今後、主要都市での販売を軌道に乗せ、二○一五年には中国大陸全土で五三〇万本/日産を目指す。
 
     
  カゴメ
野菜カテゴリーのニーズ増背景に、上海で拡販続ける
 
 
カゴメ(中国名・可果美)の「純正番茄汁・胡卜汁」「果蔬生活100」
野菜・野菜果実飲料のカゴメは、二〇〇六年より上海市場でのチルド、常温商品の販売をスタートさせた。上海での販路開拓を概ね完了させ、今年は販売地域の拡大をグレーター上海で図る。また、商品ラインナップの拡充も予定している。
 
  ドライに先駆けチルド展開  
  カゴメは二〇〇五年八月、中国の食品事業最大手の康師傅グループ子会社・康師傅飲品有限公司と、伊藤忠商事とともに、野菜・野菜果実飲料「カゴメ」(中国名・可果美)の生産販売を行う可果美(杭州)食品有限公司を合弁で設立した。
チルド商品を〇六年五月に投入、続いてドライ(常温)商品の販売を九月に開始した。チルド商品が先行したことについて、可果美(杭州)食品有限公司の浅野正心・董事長総経理は「本来の野菜の美味しさを最大限に発揮できるチルドで、まずカゴメを認知していただきたかった。また、常温飲料市場は世界のブランドが群雄割拠する厳しい市場だが、一方のチルドはこれからの市場。コンペティターが少ない分、参入しやすかったこともある」と説明する。
 
     
  上海の販売チャネル開拓をほぼ完了  
  「中国のチルド流通はまだまだ発展途上だ」と、浅野氏は語る。同社はこれまで、チルド商品の販売チャネルを慎重に選んできた。すでに上海では、チルド商品のチャネルを三五〇〇店舗、常温商品のチャネルを二五〇〇店舗開拓している。「上海での販路開拓は概ね完了した。これから販売地域を拡大していく。今年はまずグレーター上海の市場を狙いたい」(浅野氏)。
同社は、杭州の生産拠点から上海までの物流をローカルの物流業者に委託。上海市場での流通は、上海良菱配銷有限公司と上海中営銷発展有限公司に任せる。コンビニエンスストアとハイパーマートは上海中営銷発展有限公司が、ローソンとスーパーマーケット、百貨店は上海良菱配銷有限公司が担当と、業態と一部資本関係によって棲み分けが図られている。
 
  原材料の現地調達にも着手  
 
可果美(杭州)食品有限公司の浅野氏
同社のビジネスの障壁は、流通のチルド環境が未熟なことばかりではない。浅野氏は、「小売店の管理のずさんさは頭の痛い問題。商品が切れても補充がされないなどのケースがあり、売場を自分たちで管理せざるを得ない」と打ち明ける。
原材料(野菜、果物)の現地調達の難しさもボトルネックといえる。中国の土壌は塩害がひどく、同社が求める高品質な野菜や果物の栽培には不向きだ。現状、りんご、トマト、にんじん、オレンジの原材料中、りんごのみ現地調達で、他はアメリカなど海外からの輸入に頼る。「コスト負担の面で輸入に頼るのは苦しい。数年かけて開発したトマトが今年、現地調達できる見込み」(浅野氏)という。
 
     
  華北、華南への進出も視野に  
  中国栄養学会の調査によれば、成人は一日五〇〇グラムの野菜を摂取するのが望ましいが、すでに平均二七〇グラムまで落ち込んでいる。これに比例して生活習慣病も増えつつある。こうした背景の下、「野菜カテゴリー商品のニーズが高まっている」と浅野氏は見る。
昨年は、TVCMを中心に積極的な広告展開を行った。「上海でのすでに認知度は三〇%まで高まっている。これを今年中に六〇%、三、四年後に九〇%まで引き上げたい」(浅野氏)。
同社は今後、商品ラインナップの拡充図りつつ、グレーター上海での事業を固め、将来的には華北、華南へも進出していく構えだ。
 
  伊藤ハム
チルドのハム・ソーセージを新しい食文化として提案
 
  伊藤ハムは、中国で一九九〇年より日本向け冷凍食品のOEM生産と輸出を開始。その一五年後、北京で「伊藤ハム」ブランドの内販を本格的にスタートさせた。〇六年には上海にも販売会社を設立、北京の生産拠点からのチルド輸送を実現し、上海市場への参入も果たした。チルドのハム・ソーセージを  
  〇五年に内販をスタート  
 
「伊藤ハム」ブランド10アイテムを展開
伊藤ハムは二〇〇二年、国内大手食品メーカー・江蘇雨潤食品産業集団有限公司と三井物産と業務提携し、北京で「伊藤ハム」ブランドのハム・ソーセージの製造販売を開始した。〇三年には、「伊藤ハム」ブランド専用工場を稼動、同時に伊藤ハムの北京駐在員事務所を設置する。
そして〇五年、先述の提携先と合弁で伊藤食品(北京)有限公司を設立。「伊藤ハム」ブランドの生産と、北京とその周辺都市での内販を本格的にスタートさせた。
 
     
  北京から上海へチルド輸送  
 
伊藤食品商貿(上海)有限公司の榎本氏(右)と橋本氏
上海では〇六年七月、伊藤食品商貿(上海)有限公司を設立後、営業を活発化させている。
北京の生産拠点から上海までの物流は、北京三新冷蔵儲運有限公司に委託。〇度から四度の温度帯でトラックが週一回、製品を運ぶ。上海到着後は、上海新天天大衆低温物流有限公司が流通を担う。
上海での販路は、現在三〇数店舗(+特売所二店舗)。「日系スーパーはほぼ網羅。ハイパーマートへも投入している。今年はローカル系スーパーでの展開も考えている」と、伊藤食品商貿(上海)有限公司の榎本茂樹・総経理は話す。
 
  ブランド確立し、販売量底上げ  
  中国にはハム・ソーセージを加熱せず、サラダといっしょに食すような習慣は根付いていない。そのため同社は、店頭などで食べ方から提案する。「日本ブランドの安心・安全のイメージも武器に、新しい食文化として売り込んでいる」(橋本有洋・営業部部長)。
常温帯のハム・ソーセージの割合がチルド商品を上回る中国市場だが、チルドの割合は徐々に高まっている。同社では、チルド需要の高まりを追い風に、店頭でのプロモーションなどでブランドを確立し、販売数量の底上げを図っていく。
 
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