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特集
チルド食品の流通拡大へ
繋げる消費者までの道
拡大傾向をみせるチルド食品市場に、日系メーカーが食指を動かし始めている。
市場環境の整備は進むものの、「チルドチェーン」の構築を阻むいくつかの障壁も存在する。
食の安全という重責を担い、チルド食品の流通拡大に挑むメーカーと物流の現場に迫った。
 
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  上海新天天大衆低温物流有限公司  
  中国初の3PL型低温物流会社 自社開発システムで「情報化」を推進  
 
新天天の立ち上げから陣頭指揮に当たった外山・総経理は2月末で日本に帰任
軌道交通三号線、龍漕路駅の傍にある配送センターにはトラックが頻繁に出入りし、作業員も入出庫チェックに追われている。「春節の消費ピークを前に、今が一番忙しい時」と上海新天天大衆低温物流有限公司の同社の外山康二・総経理は語る。 
上海新天天は中国国内で初となる3PLの低温物流専門会社(二〇〇〇年設立)を前身とし、〇三年に錦江国際集団、大衆交通集団、三井物産の三社による合弁会社として設立した。三井物産が出資するに至った背景には、中国側が近代的な物流ノウハウを導入するにあたり、上海と都市構造が似ている日本の物流を参考にしたいという意向があったという。 
合弁後は、もともと計画経済時代の国営冷蔵庫として使われていた七階建(九六〇〇t)と五階建(二〇〇〇t)の二棟の倉庫を改造すると同時に、倉庫管理や運輸管理などに最新のITシステムを導入した。 
システムは現場のニーズに即して自社開発を行っている。ITベンダーのシステム導入も検討したが、「温度管理でデータ入力の時間短縮が求められているのに、かえって作業が煩雑になるオーバースペックのものが多かった」。 
顧客向けサービスとして好評なWEB上の「在庫確認システム」では、「(同社が運営していない)別の倉庫情報も一元化して欲しい」というニーズに合わせてカスタマイズも行っている。

 
  上海でコンビニ、スーパーの郊外化も  
 
龍漕路駅そばにある配送センターの敷地面積は34,000u。冷凍冷蔵車両は計43台
同社が配送を請け負っているコンビニの「好徳」は、通称「角の好徳」と言われるほど店舗の多くが十字路の角にある。交差点は駐停車禁止エリアであるため、店舗から離れた所に駐車して荷下ろしをしなければならない苦労がある。 
これはひとつの特殊なケースとしながら、外山氏は「進入規制区域が多いなど、上海の交通規制はやはり大きな問題」と指摘する。 
一方、「北京と比べれば店舗が密集し、一方通行も多い分、配送効率が高いところもある」というが、ここにきてその傾向も変わりつつあるという。郊外のマンション開発が進み、これら新興住宅エリアでコンビニやスーパーの開店が増えているのが原因だ。「エリアが広がれば既存ルートの大幅な変更も必要になり、配送はそれだけ難しくなる」(外山氏) 
同社の主要顧客数は現在、スーパーの家得利、コンビニの好徳、食品メーカーの米ゼネラルミルズ、味全食品など八〇社を超え、上海だけでなく安徽省、江蘇省、浙江省のスーパー計二四店舗への配送も行っている。各出資母体の巨大なネットワークを生かし、顧客割合は大手地場と外資で約半々という状況だ。外資の中でも日系顧客はまだ少なく、「日系メーカーの本格的な市場参入はこれから」と外山氏はみている。

 
     
  上海鮮冷儲運有限公司  
  ローソン向けに一日二便の定時店着 市内二四時間三六五日対応が可能に  
 
「低温物流への問合せは、中国国内企業はもとより外資企業からも多い」と語る 上海鮮冷の北野・董事長兼総経理
「新概念低温物流専家」と書かれた配送トラックを上海の街で目にしたことがある人もいるかもしれない。 
上海鮮冷儲運有限公司は、上海に二九四店舗(二〇〇七年一月末時点)あるローソン向けの低温倉庫・配送業務を受託。保有する三六台のトラックは市内の二四時間配送が可能な通行免許を取得しており、上海のコンビニではまだ少ない一日二便の配送体制を実現している。それだけに、街を走っている車両を目にする機会も多いはずだ。 
上海鮮冷はニチレイロジグループ本社、三菱商事、上海市浦東汽車運輸総公司との合弁で二〇〇四年三月に設立。ニチレイの有する低温物流のオペレーション技術をもとに、輸入品であれば三菱商事の通関ノウハウを活用するなど、ワンストップの「パッケージサービス」を提供できる強みがある。 
定時店着の運営オペレーションを展開するローソン向け業務のほかに、日系外食産業向けの食材を保管する三温度帯センターの運営も行っている。同センターの顧客は日系メーカー・問屋・外食産業が主力で、現在中国の食品物流ではあまり行われていない、ピース単位での出荷サービスを提供しているのが特徴だ。 
同社の北野隆志・董事長兼総経理(ニチレイロジグループ本社上海駐在員事務所代表)は「上海はテナント料が高く、店側に十分な商品保管スペースを設けることができないため、小ロット化・多頻度配送ニーズは益々高まっている」と話す。 
また、「低温物流に対する捉え方も徐々に変わってきている」と北野氏は指摘する。昨年、上海市食品薬品監督管理局が低温商品の品質管理を徹底させる厳しい通達を出したことを受けて、同社は入荷時の現物確認として、製造日と商品の外装温度のダブルチェックを実施。「受け取り拒否をする場合もある」(北野氏)という。 
現在はローソン向けの「虹梅南路センター」と、その他日系外食産業向けなどの商品を扱う「呉中東路営業所」の二つの倉庫が稼動しているが、第三センターの設置も構想に入っている。今後は二四時間配送の許可証を武器に、市内で「共同配送」の取り組みを強化していく。また、業者間の連携を深めながら華東地区での配送網を整備し、日系食品企業が多く投資している山東省エリアからの冷凍定期便「鮮冷白熊零担便」の定着を進めていく計画だ。
 
  日本仕様の二温度帯低温配送トラック小ロット化に対応 ──上海鮮冷  
 
「商品特性に合った物流」という上海鮮冷の日本的な配送オペレーションを支えているのが、冷凍・冷蔵の二温度帯低温配送トラックだ。車体はいすゞ製、車載冷凍機は三菱重工製で、冷凍機内については日本から設計図を持ち込み、冷凍/冷蔵の貨物量に合わせてスペースを調整できるよう改造した。 
価格は2t車が約30万元、5t車が約70万元。
 
     
  上海丘寿儲運有限公司  
  キユーピー商品皮切りに、チェーン店向け「専用物流」展開へ  
 
「チルド食品の安全を守るための取締りは今後強化されていく」とみる岡田・董事長兼総経理
上海丘寿儲運有限公司はキユーソー流通システムと関連会社四社による外商独資企業として昨年九月に設立、今年一月から営業を開始した。政府との折衝などの利点から合弁形態の運送会社が多い中、意思決定のスピードを重視し、独資での進出に踏み切った。 
配送トラックは三月に納入の予定で、今年夏をメドに自社の三温度帯センターを上海市郊外に設置する。現在は、業務提携先である丸協運輸の「張家港丸協運輸貿易有限公司」の物流機能を共有している。 
上海丘寿は中国事業の皮切りとして、キユーピーの杭州工場で製造した商品の上海市内各ユーザーの配送を開始した。チルド配送のメーンはローソン、吉野家向けの「茶碗蒸し」だ。また、キユーピーがこのたび新たに投入した「ポテトサラダ(土豆沙拉)」も今後の主力として期待を寄せている。 
もともとキユーピーから独立したキユーソー流通システムは、日本でも同グループの配送業務を全面的に請け負っているが、全体の売上比率から見れば一部となっている。中国でもキユーピーの仕事をベースとしながら、すでに大半が進出している日本の顧客を幅広く取り込んでいく計画だ。 
今後の強化ポイントとして、同社の岡田宏郎・董事長兼総経理はレストランチェーンやスーパーマーケットなどの倉庫・配送業務を個別に一括して請け負う「専用物流」を挙げる。顧客(チェーン店)の名前を全面に記したトラックで、ドライバーも顧客のユニフォームを着用していると言えばイメージしやすい。岡田氏は「交通規制の多い上海では、メーカー物流でバラバラに運ぶ体制はいずれ変わっていく流れにある」との見方を示す。 
キユーピーのチルド商品は夜間配送で上海市内の倉庫に入荷し、市内の店舗配送は上海鮮冷に委託している。今後はキユーピーの販路開拓と歩調を合わせて、蘇州、無錫エリアなどの配送を請け負うことも視野に入れる。 
「チルドの新たな商材が増えている中、物流面ではまだ発展途上なところもある。品質管理を含めた配送の質を高めることで、チルド物流の地位を上げていきたい」(岡田氏)
 
     
  上海中営銷発展有限公司  
  チルド強化を掲げ設備増強販売支援で流通改革に挑む  
 
「食品流通マーケットの流れを変えていく」と意気込む劉・副総経理
伊藤忠商事はアサヒビール、ネピア製品の販売代理などで提携関係にあった上海の食品卸売会社、上海中営銷発展有限公司の株式八〇%を取得し、今年一月から新会社の事業をスタートさせた。このたびの出資は、食料分野で川上から川下までを垂直統合するSIS戦略(StrategicIntegrated System)の一環で、上海エリアの事業強化に向けた一手となる。 
中国SIS戦略の中間流通における中核会社と位置づける上海中は一九九五年に設立。ビール、ワイン、洋酒、コーヒーなど常温の商品を中心としながら、チルド商品では昨年から上海エリアでの販売を開始したカゴメの野菜飲料を取り扱っている。 
伊藤忠から出向している上海中の劉頌・副総経理は「今後は、消費者の安全・安心に対する意識の向上や商品の差別化ニーズなどにより、さらなる市場拡大が見込まれるチルド商品に特に力を注いでいく」と力を込める。 
伊藤忠の資本参加により近日増資も予定している上海中は、その資金を設備投資に充当し、上海市郊外の閔行区に新たに三〇〇〇平米と一五〇〇平米の常温倉庫を設置。受発注管理などの情報システムを導入するとともに、冷凍(一五〇平米)とチルド(三〇〇平米)のスペースも設けた。また、低温配送車両八台を購入している。
 
  目指すは上海トップの「チルド問屋」  
  今後狙っていくチルド商品は野菜飲料をはじめ乳製品、ピザ、ハム・ソーセージ、畜水産品など、劉氏の口からは国内外の大手ブランドの名前が次々と出てくる。「まずは既存商品のアイテム増加や販売先の開拓を進め販売量を拡大させるとともに、新たに投入する商品は国内外のブランド知名度の高いものを優先する」 
中国の食品流通で主流となっているメーカーから小売への直納を、いかに中間流通として取り込んでいくかは大きな課題となる。 
競合する問屋との差別化を図るためにも、「『配送』と『代金回収』の二点にプラスアルファが必要」と劉氏。マーケティングやマーチャンダイジングなど販売機能の開発を強化するほか、顧客のニーズに合わせて売場での商品管理も支援していく方針だ。また「大手ブランドを取り込むにはエリア戦略も重要」との考えで、上海から華東地域、さらに南進していく構想も描いている。 
昨年度で売上全体の五%だったチルド商品を、今年度は一五〜二〇%に引き上げる計画。 
劉氏は「来年度以降は四〇%をメドに、上海でトップのチルド問屋を目指していく」と話している。
 
     
  北京三元双日食品物流有限公司  
  北京に日系初の食品卸売会社 一万平米の総合物流センターも新設  
  双日は北京に日本企業で初となる総合食品卸売会社を設立する。北京三元集団との合弁会社「北京三元双日食品物流有限公司」は資本金六〇〇〇万元。双日グループが四九%、三元集団が五一%を出資し、二月中に設立する予定だ。三元集団の有する高いブランド力と量販店やホテル、レストランなど二〇〇〇カ所以上の販売網をベースに、双日が物流、金融、与信などのノウハウを持ち込み、二〇一〇年に二五億円、二〇一五年に四〇億円の売上を目指す。 
市内の五環路沿いに約一万平米となる常温、冷蔵(チルド)、冷凍の三温度帯を備えた総合物流センターも設立する。今年中の完成をめどに、現在建設の準備を進めており、完成後は三元集団が保有する物流拠点を集約し、効率的な配送システムを構築する。双日(中国)有限公司糧食・食品部の西村卓美部長は「巨大な市場で食品を売るための『ツール』としての物流を確立したい」と語る。 
当面は三元集団が製造するヨーグルトや牛乳などの乳製品を取り扱い、将来的には双日が中国で手掛ける加工食品や中国での販売拡大を目指す日系企業の商品なども幅広く手掛けていく計画。また北京、上海、広州などの都市間を結ぶ基幹物流を広げ、中国全土を目標に輸送網を拡充させる。
 
     
  双日(中国)有限公司 糧食、食品部部長 西村卓美氏 インタビュー  
  「モノやお金を寝かせずに済むサービスを目指す」  
 
北京には何万という物流業者がいます。三輪車の荷台一つで魚や冷凍食品を運ぶ人々を含めれば、です。でも彼らはただ右から左に物を運んでいるだけ。そのため、倉庫での保管から商品が店頭に並ぶまでの間に品質が劣化してしまいます。 
気候の変化が激しい北京では、温度管理が肝心です。一年の三分の一近くの期間、気温が零度を下回り、常温で食品を運ぶと凍ってしまう。ですから、日本では保冷車が必要な食品でも北京では保温車が必要です。 
これに反し、一年の四分の一は非常に暑い。炎天下の場合、通常の輸送車では車内の温度が五〇度ほどになります。このような過酷な気候でありながら、北京では冷凍、保温などがきちんと行える設備はまだまだ少ないのが現状です。 
北京で日系初の卸売会社となりますが、何より大切なのは、タイムリーにタイムリーなことをすること、つまり的確に時間通り間違いなく届けることです。物流には品物を運ぶだけのタイプと、問屋機能を果たすタイプがありますが、商品代金のスムーズな回収を望む日系メーカーの多くは、後者を希望しているのではないでしょうか。 
現在、メーカー側は大量生産をし、倉庫にストックしている状態です。でも実際は在庫を持ちたくないと考えている。情報やデータを管理しメーカー側も小売側もモノやお金を寝かせずに済むようなサービスを充実させたいですね。また、コンビニの普及などにより、小売側でも少数の物流業者による「多品種、少量、一括」の納品を求めつつあります。将来的にはピッキング(顧客のオーダーに従って商品の梱包の単位を崩し、その一部だけを配送すること)の重要性も増してくるでしょう。 
双日が東北三省で初めての超低温冷凍倉庫および加工工場を大連に設営したのも中国でマグロを売るための『ツール』としての保有です。マイナス六〇度での保存を必要とするマグロの物流も視野に入れ、新たな事業展開も予定しています。
 
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