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特集
チルド食品の流通拡大へ
繋げる消費者までの道
 
  拡大傾向をみせるチルド食品市場に、日系メーカーが食指を動かし始めている。
市場環境の整備は進むものの、「チルドチェーン」の構築を阻むいくつかの障壁も存在する。
食の安全という重責を担い、チルド食品の流通拡大に挑むメーカーと物流の現場に迫った。
 
 
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  チルドチェーン″\築に立ちはだかる障壁、「共同配送」が焦点  
  冷凍からチルドへ、急速な移行  
  冷凍食品からチルド食品へ、より鮮度のよいもの、美味しいものを求めて中国人消費者のニーズが移行している。「チルド食品が今後伸びていくのは間違いない」というのが業界各社の共通した見方だ。鮮度のよさと添加物が入っていないチルド食品は、とりわけ健康志向が高まっている富裕層からの注目度が高い。日系メーカーにとって、「チルド」は差別化のポイントとして期待されている。
ただ、物流の角度から見れば、マイナス一八度以下で保存する冷凍食品と一〇度以下のチルド食品では難易度に明らかな差がある。チルド食品は一定温度帯を維持しなければ鮮度が下がり、腐敗してしまう危険性をはらんでいるからだ。それだけ安全への絶対的な信用が求められている。
チルド食品には、インフラストラクチャーありきの特異な発展形態がある。にもかかわらず、都市部の街中でさえリヤカーで牛乳を宅配している姿を目にするなど、巨大な潜在市場がありながら、チルドチェーンの構築が追いついていないのが現状だ。俗に「ドッグイヤー」と言われる中国で、冷凍からチルドへの食文化の変遷が「同時多発」とでもいうべき短期間で進行したのも一因といえるだろう。

 
  売場の商品管理に警鐘  
 
上海市内にあるGSMの集荷場。明け方からトラックの出入りが激しくなる
「『チルド』の概念が形成されていない」と言われる所以のひとつが、売場での商品管理だ。配送業者からは、トラックから荷下ろしして店内に運んだ商品がそのまま放置されているケースもある、と指摘する声も聞かれる。 
メーカーにとっても悩みの種だ。「まだ商品が残っているのに大量に発注したかと思えば、欠品が続いている時もある。ひどい時には賞味期限が切れた商品も並んでいた」(メーカー関係者)。メーカー各社は売場巡回を強化するなど様々な対策を講じているが、抜本的な解決には至っていないようだ。 
「冷たい飲み物はあまり飲まない」という風習も、「チルド」の概念形成に少なからず影響している。冬場になると冷蔵庫のスイッチが切られているコンビニも目にする。 
またコンビニは、テナント料が高額であるがゆえ店舗面積が狭い。ショーケースのスペースが小さい上、冷蔵のストックヤードも設けられず、常温棚にチルド商品が並べられている店も中にはある。 
メーカーはチルド商品をチェーン全店で展開すると返品ロスが大きいだけに、エリアや管理の状況から店舗を厳選しているのが現状だ。
 
  進入できず、停車できず…  
  配送業者にとって、チルドチェーン構築の最大の障壁が「交通規制」だ。上海であれば交通渋滞の緩和などを目的に七時から二〇時まで内環路以内へのトラック進入が原則禁止されているほか、終日進入禁止の通りもある。内環路以内を同時間帯に走るには通行許可証が必要となるが、取得が難しいこともあり、実際は規制を掻い潜り「覆面で黒塗りのバンも数多く走っている」(業界関係者)。 
また、「ビルインタイプのレストランやコンビニが多く、それだけ作業導線が延びる」(上海鮮冷儲運有限公司の北野隆志・董事長兼総経理)。加えて、市内では駐停車の規制も厳しく、「ドライバーと助手によるツーマン体制でなければやっていけない」との意見も出ている。 
運送コストの問題も重く圧し掛かる。コストを度外視した「安かろう、悪かろう」の配送がマスマーケットを形成している状況において、品質・温度管理を徹底した配送サービスを付加価値として運送費に上乗せするのは難しい。そもそも、低温のトラックや倉庫は初期投資が巨大であるだけでなく、ランニングコストもかさむ。「安売りだけはできない」というのが運送会社の本音だろう。
 
  存在感をアピールする問屋  
  日系メーカーが中国でチルドチェーンを構築しようとした場合、認識しなければならないのが流通構造の違いだ。 
日本は問屋が発展しているのに対して、中国はメーカーから小売へ直納するメーカー物流が主流となる。これは、かねてより国営集団が製造、配送、販売を一括して行っていたことで、問屋が存在しにくい環境にあったことが理由とみられる。 
そんな中、商社の動きは注目に値する。伊藤忠商事は食品卸売会社である上海中営銷発展有限公司の株式八〇%を取得して事業を開始。双日は北京で初となる日系の食品卸売会社を三元集団と合弁で設立する。 
日系メーカーにとって、中国で難しいとされる代金回収を問屋に任せるメリットは大きい。また、売場管理が問題視されるなか、問屋は先を見越した受発注管理のノウハウも有している。 
三菱商事が菱食、上海市糧食儲運公司との合弁で一九九七年に設立した上海良菱配銷有限公司の木村武志・董事総経理は「運ぶことはできても、返品率はどうするか。問屋の役割は大きい」と言う。同社は現在、ヤクルト、カゴメなどの中間流通を請け負っている。 
ただ、直納志向の強いメーカーや小売もいるため、メーカー物流を中間流通として取り込むのは一筋縄ではいかない。それでも、「流通マーケットの流れを変えていく」と語る上海中の劉・副総経理は「従来の物流会社による3PL方式からさらに、問屋による商流・物流を一体化した安全・安心のサプライチェーンが求められてくる」と話している。
 
  キーワードは「共同配送」  
  配送業者もメーカー物流の牙城崩しを虎視眈々と狙う。キーワードは「共同配送」だ。 
消費ピークとなる大型連休ともなれば、大型スーパーの裏口には配送トラックの長蛇の列ができる。「荷下ろすまでに四八時間もかかったと聞いたことがある」(業者関係者) 
こうした巨大なロスをなくすためにも、メーカーから小売までバラバラに運んでいた商品を一旦自社の配送センターで預かり、仕分けした上でトラックに集荷して配送する「共同配送」は今後の必須の流れ、と配送各社は口を揃える。 
荷物がまとまって店舗に届くことで、チルドチェーンの問題のひとつとされる小売側の荷受オペレーションの合理化につながるだけでなく、交通規制が厳しい中、交通渋滞の緩和や大気汚染の削減にも寄与する。何より物流の効率化でコストを削減できるメリットは大きい。「共同配送」はチルドチェーンの障壁を取り除くカギになるというわけだ。 
チルド商品をめぐり、各社はどのような取り組みをしているのか。まずは配送、卸売の物流方面から見ていく。
 
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