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特集
上海軌道交通進化論
商機は郊外? 地鉄CBD?
07年、一挙に3路線が運行
新ジャンクション駅では再開発
年内に3路線(6、8、9号線)が試運転を予定する上海軌道交通。新たに形成されるジャンクション駅(2路線以上が乗り入れる駅)周辺では、再開発が進む。
 
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  両岸3都市+東京から見た「上海軌道交通」  
  急ピッチで進む上海軌道交通。しかし名実ともに「世界一」となるために克服しなければならない課題は多々ある。北京・香港・台北・東京の4都市と比較すると、上海軌道交通の「先進度」はどの域に達しているのか。4名の「国際通」のオピニオンを聞いた。
 
  市民の情報ツールになっているか?  
 
私は、月の半分を東京で、もう半分を上海で過ごします。東京は生活の場、上海は仕事の場という感じです。  
東京ではよく地下鉄を利用します。仕事柄、情報収集が欠かせないのですが、地下鉄は貴重な情報源になっています。中吊り広告、乗客のファッションなどを観察し、行きかう人々の会話を耳にすることで、世の中の流れをつかむことができます。私にとって、東京の地下鉄は、単なる交通手段以上の意味を持っているのです。  
蜘蛛の巣のように張り巡らされる東京の地下鉄は、都市の発展を支える大切なインフラです。人々を運ぶと同時に、情報とカネを運んでいるわけです。
一方、上海の地下鉄ですが、私は余り利用しません。タクシーに乗ることが多いです。  
上海の地下鉄は中吊り広告もありませんし、情報ツールにはなっていません。ただ、社会の発展と結びつけて注視していることは間違いありません。  
徐向東氏
北京出身。東京歴約15年。キャストコンサルティング代表取締役社長として、中日間でコンサルティングを手がける。
都市インフラの整備は、社会の安定的発展に欠かせません。上海をはじめとする都市部の地下鉄は、庶民の足としてもっともっと整備されていくべきでしょう。  
モータリゼーションのためにも、地下鉄の発展は必須です。マイカー社会は、地下鉄が発展してこそ成立するのです。北京では、交通渋滞が社会問題化しています。経済発展の足を引っ張る厄介な問題ですが、二〇〇八年開催のオリンピックに向けて急ピッチで整備が進んでおり、期待を寄せています。  
実は、私が上海や北京で地下鉄にあまり乗らない理由のひとつに、マナーの悪さがあります。  
押し合い圧し合いで乗り降りすれば、不愉快です。車内には物乞いが少なくなく、チラシを撒く少年たちもいます。こうした問題も、日進月歩で発展する地下鉄といっしょに改善していけばと願っています。
 
  「環保」の切り札なら自転車利用の励行を  
 



交通インフラに対するニーズの満たし方という点では、上海は東京やニューヨーク、香港に似ており、軌道交通を軸とした整備が中心となってくるといえましょう。ちなみに私の故郷であるソルトレークシティにあるのはライトレールぐらいであり、アメリカでは(ニューヨークを除くと)地下鉄はあまり発達しておりません。
北京の交通について感想を述べれば、現在、東直門から首都空港を結ぶハイテクを駆使した軌道交通が建設のまっただ中にあるなど大きな動きは見られますが、あまり深い考察が行われないまま都市設計が進められてきたような印象を私は持っています。  
軌道交通の駅を中心とした繁華街が形づくられることはなく、夏用の冷房施設もなく、古ぼけた車両(一、二号線)は、マイカーによる移動を好む地元の人の支持は取り付けていないというのが実情でしょう。ようやく自動改札機が導入され始めているものの、人による改札としばらくは並存を余儀なくされるのではないかと思います。  
深刻な交通渋滞や排ガス等の問題を解決する切り札として利用が励行されているのは、どちらかといえばバスかも知れません。昨今、新しい車両が多く導入されたほか
Craig Watts(クレイグ・ワッツ)氏
Madhouse コンサルティング顧問。アメリカ・ユタ州出身。北京、上海を中心に中国在留歴は10年を数える。
、バス乗車用の交通カードを購入すれば、一部のバス(路線番号が9から始まるもの)を除けば四角で乗車できるようになっています。  
ただ、ひとつ見落していることはないでしょうか。「環境保全」を目的にマイカーによる通勤を控え、誰も自転車の利用促進を唱える人がいないのはどうしたことでしょう? 自転車はもともと中国を語るうえでシンボルチックな存在でしたが、いまでは低収入の人が乗る物というイメージが蔓延していることに一抹の寂しさを感じざるを得ません。  

 
  乗客マナー改善に期待  
 




上海の路線増設スピードには驚かされるばかりです。台北ではかなり早い段階で内湖(台北のCBDエリア)を中心とした環状線の整備計画が進められていましたが、住民による反対運動等もあって未だに実現を見ていません。  その点、軌道交通四号線の完成を間近に控える上海の「環状線」整備計画は、上海市の経済発展に革命的変化もたらすものとして注目できるでしょう。経済的波及効果は大きく、とくに二路線以上が交差するジャンクション駅(二路線五八駅、三路線一一駅)は、新たな「地鉄CBD」エリアとして今後大きな発展が期待できるはずです。
もっとも、ハード、ソフト問わず、課題もまた多くあります。たとえば、台北では乗客のモラルが確立され、通常エスカレータに乗る場合は右に寄り、左スペースを空けて立つ習慣があります。列車内での飲食はご法度。違反すれば罰金として一五○○台湾元が課されます。切符を買う、列車を待つときは列に並んで待つのが通常ですが、上海ではこうした基本的な乗客マナーはおろか、車内で広告を撒く、新聞を売る等々、禁止事項も徹底されておらず、まだまだ「発展途上」にあることは否めません。  
田恵慈 氏
台南市出身。上海歴6年。上海の不動産専門誌『房訊・上海楼市』主編。台北、上海の不動産事情に精通する。
また、台北ではボックス型の座席配置が普通です。上海では、より多くの人数を収容するためにお見合い式座席にするしか仕方がないのでしょうが、設計・建設段階から「快適度」への配慮という点で大きな差が見られているといえるのではないでしょうか。  
結果として、(上海では)身障者向けのエレベータもまだ少なく、駅構内にはトイレもあまり見かけません。プラットフォームに移動式トイレ(コイン使用)が配置されていますが、数量・質(衛生面)双方において十分にニーズに対応しているとはいえないでしょう。
 
  駅駐車場の「高コスト・数量不足」は深刻  
 



「上海が大きくなった」――。一二年の海外生活を経て〇二年から再び上海に「定住」を始めて実感したのは、生活範囲が飛躍的に広がっていることでした。かつて自転車での移動時間を基準に「郊外」とみなされていたエリアも、軌道交通の発展によってぐっと身近な「市街地」という存在に変わってきたといえます。  
しかし、上海軌道交通が「都会のファッション」のステージとなっているかというと、まだまだというのが実のところです。一見、先進的に見える液晶パネルを使った列車内での情報発信にしても、映し出されるのはファッションや娯楽情報ばかり。映像こそないものの、経済・ファイナンスなどの情報が列車内の電光掲示板に流されている香港や、中吊り広告が充実している東京のほうがずっと面白さに富んでいるというのが私の感想です。  
「ユーザ・インタフェース」という点で上海はもっと充実させていかなければなりません。香港では、どの駅に到着したのかが色で識別できるような工夫がされているほか、身障者用のエレベータも充実してい ます。一方上海では、外地出身者が大きな荷物を背負って乗車することで、車内の混雑により拍車 をかけることがあります。東
石磊 氏
上海出身。作家。90年から02年までを東京・香港で過ごす。03年に著した『向上海学習』はベストセラー。
京の「婦人専用列車」にならって、「大荷物運搬用専用列車」をつくる必要があるかも知れません。  
駅周辺の施設にも目を向けるべきでしょう。郊外から市中心部に車で通勤する人ばかりになったら、市内の渋滞問題はいっこうに改善されないままです。  
ところが、二号線終点の張江ハイテクパーク駅前の駐車場は一時間五元。月契約の制度がなく、スペースも限られています。  「ノースペース、ハイコスト」。それが交通インフラ全体の整備のうえでもボトルネックとなっていると思います。
 
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