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  金融
全面開放で中国金融市場改革は 新たなステージに
みずほコーポレート銀行上海支店長 大谷啓氏
為替相場 年末 1$=7.50RMB
名実ともに香港ドルの上限突破も !
 
 
大谷啓氏
2005年7月の人民元為替制度改革(切上げ)を号砲に始まった中国金融市場の改革は、これまでの約1年半、当初の予想を遥かに上回るペースで進展してきた。01年12月の中国WTO加盟から5年が過ぎ、市場開放が実現した今、中国の金融市場改革は新たな局面を迎えようとしている。
(特別寄稿)
 
  進展する金融市場改革を振り返って  
  〇七年の金融市場を展望する前に、〇六年の軌跡を振り返ってみたい。まず市場関係では、年初一月早々に銀行間の人民元為替取引システムであるCFETSの制度変更がなされ、銀行間の直接相対取引が認められたほか、直物の資金決済日が取引執行一営業日後から二営業日後に変更されるなど、取引の多様化・グローバル化が図られた。
また、二月には人民元金利スワップ取引、四月には人民元為替スワップ取引、七月には金融取引仲介(マネーブローカー)業が、それぞれ解禁された。一〇月には金融市場の基本インフラの一角である指標金利制度(ShanghaiInter-BankOffered Rate、略してSHIBOR)の試行が開始された。ちょうど昨年の寄稿(〇六年一月号)でも述べたとおり、一旦始動した市場改革は、間断なく次の一手が繰り出されて現在に至っている。
次に制度改革に目を転じると、一二月一一日、中国のWTO加盟時の公約である金融市場の開放が実現した。具体的には、外資銀行に対する人民元業務の全面開放、すなわち地域制限の撤廃と、中国人個人向け人民元業務の開放が実現したわけである。
人民元業務全面開放のため、外資銀行にとっての基本ルールとも言える『外資銀行管理条例』および『実施細則』が改定された。新しい管理条例によれば、外資銀行は、支店形態から現地法人形態に組織変更することにより、中資銀行と同様の内国民待遇を得ることができ、人民元リテール業務に参入する道が開かれる。昨今の報道でもご存知の通り、弊行を含む多数の外資銀行が業務拡大やサービス向上のため、金融当局に現地法人化を申請、現在準備作業を進めているところである。今年中には外資銀行現地法人の業務がスタートし、銀行間のサービス競争は新たなステージに入るものと予想する。
また昨年は、中資銀行側でも大きな進展があった。大手中資銀行は、一昨年来戦略投資家を招聘し、外国資本を受け入れると同時に経営改革を推し進めてきた。一〇月に中国工商銀行が過去最大級の規模で上場を果たし、投資家の注目を浴びたのは記憶に新しいところである。かように中資銀行も資本を強化し、来るべき「大競争時代」に向けて着々と準備を進めている。
 
  二〇〇七年の相場展望  
 
〇七年の相場展望に話を移そう。まずは注目の人民元為替相場から述べたい。中国当局の為替に関するスタンスは切上げ当初から終始一貫している。即ち、独立性・漸進性・制御可能性を改革三原則と し、じっくりと元高を進展させている。
本稿執筆時点で、人民元は1$=7・8250近辺であるが、この水準は〇五年七月切上げ直後の8・1100から約三・五%、〇六年一月四日仲値の8・0702から約三%の元高である。
この変動幅は、変動相場制に慣れて久しく、戦後の360円固定相場時代から九五年の80円割れまで経験した我々日本人にとっては、まるで時の流れが止まっているかのような悠久さを感じる。しかし、中国当局の視点は全く違う。ついこの間までのドル固定相場から「変動し始めた」こと自体が重要なのだ。
中国経済はこれまでに高経済成長と低インフレを両立して飛躍的な発展を遂げている。しかし国内経済は磐石ではなく、マクロ経済の歪はむしろ蓄積されつつあるように見える。このような環境を中国当局も十分に認識しているが故に、ドラスティックな変化を避け、さりとて経済成長を阻害せぬよう、細心のコントロールを行いながら、時間をかけて調整に臨んでいる。
従って、今後当面、こうした緩やかながらも着実な人民元高が継続する可能性が高い。但し、徐々に中国経済全体に為替変動の経験が蓄積され、一方で為替先物のようなリスクヘッジ商品が導入されつつあることから、〇七年の元高ペースは若干速まるだろう。筆者はズバリ、〇七年末の人民元を7・50と予測する。これは〇五年七月切上げ直後の8・1100から約七・五%、直近の7・8250から約四%の元高水準となる。
人民元が7・50水準に達することになれば、人民元が香港ドルの変動レンジ(7・50〜8・50)上限を上回ることになり、それ自体歴史的な事象と言えよう。今後、元高が進むにつれて香港ドル政策の在り方が議論を呼ぶだろう。今のところ、香港当局はドルペッグ制を見直す必要はないと言明しているものの、遠い将来には収斂するかもしれないこの二通貨の動きから目を離すことはできない。
人民元金利については、昨年春から始まった人民元金利の引締局面は〇七年も続くと見ている。昨年後半に漸く景気拡大ペースがやや鎮静化してはいるが、中国当局としてはもう少し穏やかなペースに持って行きたいはずだ。別掲の国債金利グラフをご覧のとおり、一昨年の金利低下局面の動きに比べれば極めて緩やかな上昇と言え、ここでも中国当局が慎重に差配しているのがうかがえる。
 
  中国金融市場改革の課題  
  さて、これまでの金融市場改革について、読者諸兄はどのような印象をお持ちだろうか。我々金融関係者の目から見ると、様々な課題を内包しており、そのために本来自由度が高いはずの金融市場に種々の制約があると感じることも多い。
課題はいくつもある。まず為替取引には厳格な「実需原則」があり、金融機関のポジション限度(持ち高限度)は外貨買い方向にのみ制限されている。金利については、金融市場の基礎インフラの一つである指標金利制度が確立されておらず、また中国人民銀行が規制する預金・貸出金利と、自由変動の銀行間資金・債券金利が分断されており、金融市場が二重構造を形成している。この他、金融取引仲介業者(マネーブローカー)の実質的な業務はつい最近開始されたばかり。このため市場情報が一元化されず、市場の透明性・公開性に欠ける。破産法や会計制度などの周辺法が整備されず、世界標準のデリバティブ契約書であるISDAの国内導入もまだ検討中の段階だ。
この中で、人民元相場予測とも関連する、為替の実需原則について少し解説を加えたい。実需原則とは、銀行以外の企業・個人は、貿易や資本といった実在する取引の裏付がある場合のみ為替取引が認可されるというものだ。裏を返せば、実需の裏付がなければ為替取引は認められないという厳しい規制である。
人民元レートの変動は、多くの市場参加者に為替リスクが生じるようになったことを意味する。為替リスクを適切にコントロールするためにはリスクヘッジ手段が必要で、現在の人民元では為替の直物・先物・スワップが具体的手段だ。実需を持つ参加者はこれでリスクヘッジができる。
しかしながら、実需の裏付がないか、もしくはあっても明細を確定できない参加者は、実需原則の制約があるため自由なリスクヘッジ行動ができない。実は日米欧などの先進市場における為替取扱高のほとんどは、実需に基づかない投機(スペキュレーション)によるものだ。
「何の制限もなく、好きな時に好きな取引ができる」自由度の高い市場であるが故に、実需だけでなく投機も含めて活発
 
  今後の金融市場改革の方向性  
  最後に、今後の改革の方向性を展望してみよう。筆者の見解では、これまでの中国金融市場改革は自由化ではなく規範化であり、個別のルールや商品の導入が相次いでいるものの、市場の基礎となるインフラそのものの整備が若干遅れているところもある。こうした基礎が整備されて自由化が進めば、その上に拠るルールや商品が有機的に機能し、先進市場に伍する一大金融市場に脱皮して行くだろう。
こうした認識から、今後の金融市場改革においては、「市場基盤自体の整備」が徐々に進められていく、新たな局面に入ったと考えている。もちろん個別商品の整備も同時に進められ、デリバティブの拡大導入が継続されるだろう。具体的には、通貨オプション、通貨スワップ、通貨先物、金利先物など、続々と解禁されると見ている。こうした商品の恩恵は市場関係者のみならず、一般企業にも当然に及ぶことになる。
結論として、筆者は中国金融市場の将来性に大きく期待している。国内経済規模が巨大で発展余地が大きく、世界有数の貿易国でもある。金融市場のベースとしてのポテンシャルは極めて高い。また金融市場創設にコミットする当局の強固な意思もある。中国は、これまで世界各国が自由化の過程で得た様々な経験を十分活かし、中国独自の手法により、これからも着々と市場改革が進められて行くものと確信している。〇七年は、こうした動きが加速し、より顕著に現れる1年になるだろう。かかる壮大な環境変化の中、幣行としても、これまで各国市場で培ってきた経験を活用し、顧客サービスの向上に努めつつ、微力ながら中国金融市場の発展に協力したいと切に願っている。
 
  「業務拡充のために必須。法人業務を主軸に、サービスレベルの向上を図る」
――現地法人設立の狙いとメリット
 
  中国銀行業監督管理委員会は一二月一一日、外銀八行の現地法人設立申請を受理した。第一陣リストに選ばれた、みずほコーポレート銀行は認可取得後、できるだけ早く業務を開始したい意向だ。

――外銀管理条例が改定され、中国金融市場の開放が実現したが、その評価は?
中国のWTO加盟時の公約履行として、外資系銀行の人民元業務に関する地域制限が撤廃された。また、法人化を通じて内国民待遇が与えられ、中資系銀行と同列での業務範囲拡大が可能となった。この点は歴史的にも意義があるものと認識している。

――外銀はリテール市場に主眼を置いていると見ていいか。リテール業務への参入計画は?
欧米、香港系などの外銀はリテール業務に積極参入する方針を打ち出しているが、当行はリテール業務へ参入することは現時点では考えていない。あくまで法人業務を主軸に据えて、顧客サービスの向上を図る。

――現地法人化で業務はどう変わるのか? 顧客の立場から見てメリットは?
法人化は、コーポレートガバナンスなど内部強化のコストはかさむものの、支店網・人民元業務・その他新規業務などの拡充のために必須であるとの判断から申請した。支店ステータスのままでいるより、取扱業務範囲やサービスレベルが拡大・向上し、お客さまにもメリットあるものと考えている。

――法人化後の中長期的な業務計画は?
中国は当行の国際業務戦略上の最も重要な地域だ。製造業に留まらず、流通やサービス業も対中進出が進んでおり、中国内販比率も向上している。新設する法人銀行を中心に、みずほグループの金融ノウハウを持ち込み、多様化する顧客ニーズに対処していきたい。
 
 
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