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自動車部品市場概論 巨大製造・販売基地に脱「系列」の波
 
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  工業用ファスナーを中国・欧米系メーカーに拡販
欧至愛国際貿易(上海)有限公司
 
 
 
飯嶋政景・総経理  
世界でも稀有の高度な技術を有する日系自動車部品メーカーが、中国市場で中国系や欧米系メーカーから強い引き合いを受けている。JAPPE2006広州に引き続き、JAPPE2006上海にも出展を予定するオチアイもその一社である。
 
  工業用ファスナーの老舗  
  オチアイは、約七〇年の歴史を持つ工業用ファスナーの老舗メーカーだ。中国での製品拡販と将来の製造工場建設のための調査を目的に、二〇〇三年一〇月に上海で欧至愛国際貿易(上海)有限公司を設立した。  
工業用ファスナーとは、部品と部品を繋ぐ板ばねの締結部品。オチアイの製品は、自動車業界に六五%、家電業界に三〇%、建築関係に五%の割合で納品されている。自動車を構成する部品は三万点と言われるが、工業用ファスナーはそのうちの約一〇〇〇点を占める。エンジン、ブレーキ、ミッション、シートと、あらゆるパーツに使用されている。
 
  世界最高クラスの品質が信頼に  
 
 
板ばねの締結部品・工業用ファスナー  
製品設計や生産に必要な金型の設計・製作から、プレス及び塑性加工機を使った製品の加工、熱処理、各種の表面処理まで、一貫生産しているオチアイの工業用ファスナーは、アジアでトップの売り上げを誇る。欧至愛国際貿易(上海)有限公司の飯嶋政景総経理は、「世界最高クラスの品質を維持することで、これまで大手メーカーからの信頼を勝ち得てきた」と話す。
日本での販売は、国内七カ所の営業所と二六社の代理店で行う。一方、海外には上海以外に、米国シカゴとシンガポールに販売拠点を置く。工場は日本とインドネシアにあるが、インドネシアの工場で製造
 
熱処理の様子。オチアイは製品設計から表面処理まで、一貫生産で行う  
されるのは、あくまで同国二輪車市場向けの製品に限られる。「いい製品にはいい素材が不可欠」と、 あくまで日本材にこだわり、日本での生産を行っている。
 
  取引先の一割が中国系  
  欧至愛国際貿易(上海)有限公司は、これまで売り上げを毎年倍々で伸ばしてきた。今年は前年比五〇%増を見込む。  
顧客は日系の自動車部品メーカーを中心に、中国系、欧米系メーカーにまで及んでいる。「中国ではメーカーの系列を越えて、積極的に顧客開拓を行っている」(飯嶋氏)。現在の取引先構成比は、日系八五%、中国系一〇%、欧米系五%となっている。  
特にここ一、二年で中国系からの引き合いが増えている。「当初、中国メーカーとの取引は、品質=コストの常識が通じず、販売価格の交渉が難航した」という。しかし、安価な部品を使用した場合のリコールの大きなリスクに気づきはじめた中国系メーカーが、保険としてオチアイの製品を採用する動きが出てきた。「我々と同等の高品質な工業用ファスナーを製造する中国メーカーはまだ存在しない。高品質を求める風潮が高まれば、弊社製品の中国市場でのポテンシャルはますます高まって行く」と飯嶋氏はみている。
 
  デリバリーの迅速化を目指す  
  日本でオチアイ製品を購入し、中国に持ち込んでいた日系企業は、欧至愛国際貿易(上海)有限公司が設立されたことで、為替リスクを回避し、リードタイムを短縮できるようになった。 「『ジャスト・イン・タイム、ミルクラン(巡回集荷)に対応できる』と日系企業に喜ばれている」(飯嶋氏)。
市場競争が激化する中で、各メーカーはリードタイムの短縮に躍起である。同社は現在、より迅速なデリバリーのために販売拠点の増設を検討中だ。「天津、広州、重慶などに販売拠点を持ち、代理店との協力関係も生かして顧客のニーズに応えて行きたい」と飯嶋氏は意欲を見せる。
 
  「現地化」の到達ラインと障壁
自動車部品の輸入関税問題 
 
  自動車部品の現地化をめぐる議論が再び熱を帯びている。 九月一五日、中国の自動車部品に対する輸入関税がWTOの協定に違反しているとして、米国、EU、カナダは共同で、紛争処理小委員会(パネル)の設置を求めて中国を提訴した。
争議の発端は昨年四月一日から施行された「完成車の特徴を構成する自動車部品輸入管理弁法」。同規定は自動車部品の輸入行為を規範化し、国産部品の使用促進を狙いとするもので、CKD(ノックダウン)やSKD(セミノックダウン)による輸入、さらに輸入部品の価格総額が当該車種完成車の価格総額の六〇%以上(○六年七月の施行を予定)などの場合、「完成車」とみなして輸入関税を徴収するとしている。
これを受けて、米国とEUはすぐに反対を表明。今年に入ってから、正式協議を要請したが、中国側から納得のいく対応を得られなかったことにより、最終的に今回の共同提訴に踏み切ったという経緯がある。
だが、中国は一定の譲歩を与えている。今年八月、「完成車規定の輸入部品の価格総額が当該車種完成車の価格総額の六〇%以上の場合」及び「自動車ユニット(システム)規定のA、B類キーパーツの区分標準」(注 :「ボディー」、「エンジン」、「トランスミッション」の各ユニットを分割した部品が規定の数量基準を超過する場合)については、施行時期を〇六年七月一日から〇八年七月一日に延期すると公表したのだ。
しかし結果として、この譲歩に対して米国、EUは納得しなかったということになる。背景には、年々増加する中国との貿易赤字に対する国内圧力の高まりがあると予想される。
 
  高級車の節税 を取り締まる  
  そもそも、なぜ欧米はこの規定にこれ ほど強硬な姿勢を取っているのか。
これまで一部の外資メーカーは、自動車部品の関税率が完成車よりも低いことを利用して(現在、完成車の輸入関税は二五%、自動車部品の関税率は一〇%)、「国産化」の旗印を掲げながらも実際はKD方式による現地組み立て生産により、節税を行っていた。
これらKD車には「BMW」、「ベンツ」、「キャデラック」などの高級車が名を連ねる。これらブランドを見れば、欧米が反発する理由もわかる。
いずれにせよ、中国側の施行延期により、KD生産を行なっていたメーカーには二年間の猶予が設けられたことになるが、この猶予期間にどれだけ部品の「現地化」を進められるのか、大きな課題を背負っている。
このうち、積極的に対策に乗り出しているBMWの例を見てみよう。現地合弁会社である華晨宝馬は〇七年の現地化計画として、中国国内での部品調達額を現在の八億七〇〇〇万元から二五億元に引き上げるほか、一級サプライヤーの数を四六社から八三社に拡大させるなど具体的な目標を明らかにしている。また、目標達成のため、社内に現地化プロジェクトの専属部門も立ち上げるという。
対照的に、上海GMの「キャデラック」と北京ジープの「チェロキー」はともに国産車(KD車)を輸入車に切り替えると発表している。
 
  「現地化」が困難な理由  
  「キャデラック」や「チェロキー」の動きは、「現地化」へのハードルの高さを物語っている。
外資メーカーについては、KD生産に傾注し、現地での研究開発や生産にまじめに取り組まなかったツケという見方もできる。一方、品質要求に適うローカルの部品メーカーがいなかったというのもまたひとつの事実であろう。さらに、合弁生産に踏み切ろうにも、技術流出というリスクがつきまとう。
輸入管理規定は、国産部品の使用を促進するという狙いもあった。中国側としては欧米からの反発は必至という中で、敢えて強硬手段に出なければならないほど、ローカル部品メーカーの技術力、経営力が危機的状況に追い込まれていると言ってよいだろう。
ある統計によれば、中国の自動車部品企業において、研究開発費が年間売上総額に占める比率は一〜一・五%と圧倒的に低く、技術レベルの問題を改めて浮き彫りにしている。
 
  日系メーカーの余裕とチャンス  
  日系メーカーはどうだろうか。今春から武漢工場で「シビック」の生産を開始した東風ホンダは、広州の合弁会社で製造したエンジンを使用しているため、現地化比率への圧力はほとんどないという。中国メディアの取材に対して「現地化比率はすでにクリアしている。(施行延期前の施行日である)今年の七月一日でもまったく問題 なかった」とのコメントである。
ホンダ以外の日系メーカーも同様に、規定による現地化水準はほぼクリアしていると言われる。完成車メーカーの進出に伴い、部品メーカーがはせ参じたのが現地化比率を高めた要因のひとつでもあろう。ただ、コスト削減に努めていくという意味でも、今後さらなる「現地調達」が必要になるのは確実だ。
また、KD生産を行なっている欧米メーカーが現地調達率を高めようとすれば、それだけ新たな供給ルートが生まれることになる。日系の部品メーカーからすれば、輸入管理規定はむしろチャンスの到来となるかもしれない。
 
 
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