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チェーン展開に挑む 外食ブランドの勝算
 
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  「食」の健康の伝道*を担う
ベジタリアン・レストラン「棗子樹」
 
 
棗の樹がシンボルの門構え
徹底した「純ベジタリアン」を標榜するユニークなレストラン「棗子樹」。
門前にはシンボルである棗子(ZaoZi)の樹(Shu)が植えられ、店内には「早吃素」(Zao Chi Su)と書かれた書が掲げられている。ベジタリアン・フード(素食)を食べる習慣(Vegetarian Life Style)を早く身につけてほしいという願いを店名に重ね合わせたのだという。

「棗子樹」のコンセプトは「煙(タバコ)なし、酒なし、卵なし、肉なし」。大豆と黒キクラゲを使った上海ガニ、コンニャクイモをエビに見せかけ、キノコ類で「肉料理」を装うなど、ユニークな料理が目白押し。「種明かし」の説明がなければ誰もが「肉料理」と信じるほど精緻な出来栄えが人気の秘密だ。
さらにニラやニンニクなど臭気の強い食材もタブー。使用するのは、有機栽培した茶葉や野菜、そしてアルカリイオン水という徹底ぶりである。
「棗子樹」曽芳瑩氏
創始者は台湾地区高雄出身の宋渊博氏、曾芳瑩氏の夫妻。一号店、二号店を立ち上げた後、彼らの経営理念に賛同する支持者が増えてきた。そして彼らとともに資金を募って新店舗をオープン。「棗子樹」のチェーン展開は、いわば「委託直営」と表現するのが確かかも知れない。
現在上海に3店舗、寧波に1店舗(今秋に成都店が開業予定)。それぞれの店舗は独立した法人であり、宋氏、曽氏は全ての店舗に株主として経営参加している。
二人はレストラン経営のノウハウや経験を持っていなかった。宋氏が長く生業としてきたのは不動産業である。曽氏に至っては専業主婦≠セった。そんな二人が高収入に支えられた何不自由のない生活を捨てて、一念発起、二人三脚でレストラン経営に携わることになったのは宋氏の母の病気が原因だったという。
二人は仏教に帰依、当時3歳に過ぎなった子ども含め、一家すべて「素食」(Vegetarian Life Style)の実践を始めるとともに、「素食」の理念を社会に伝達しようと決意したのだという。
「棗之樹」一号店オープンのための資金は、不動産資産の売却で得た収入を充てた。時は不動産市況が熱を帯びる前のことである。もともと120万元で購入していたという物件の売却額は68万元に過ぎなかったという。利益度外視の「投資」――当時、そんな見方をする声も周囲には多かったに違いない。
もっとも、彼らの事業をビジネス原則から乖離していると見るのは間違いだ。価格を「中」レベルに抑え、サービス水準を上げ、味覚を徹底追求するなど、台資外食産業の成功モデルを無意識のうちに体現、実践してきたといってもよい。
新メニューの開発も積極的に進める。その数は毎月数十種類に及び、6年間このペースを堅持、レシピをデータベースとして 蓄えてきたという。
東洋的なベジタリアンフード、そこには仏教の「修身」という意味合いがこめられている。しかし、それをトレンディーな生活様式の提案という形で演出したところに「棗子樹」の個性がある。
曽氏はこの秋に開店する成都店については「確かな経営判断とは言いがたいかも知れない」と言葉をためらう。ロケーション的に資金の負担も大きい。四川の人たちが好む味覚にあった商品を提供することができるのか――。不安がよぎる。
それでも、さまざまなリスクを感じつつ、なおも店舗開設のために彼女はひたすら邁進する。その原動力な何なのか――。
2年近く前のこと、曽氏はネットでとある惨劇を伝えるニュースに接した。甘粛省で起こった事件で、その内容は女性が腸部をむきだしにされて殺されるというおぞましいものだった。一方で、彼女は、四川省に「生口鵞腸」(ガチョウの腸を生で食する)という料理があることを知る。四川省、甘粛省は、李白をはじめ多くの文化人を輩出した歴史的由緒深いエリアだ。仏教文化が漢民族文化に融合する地でもある。それゆえにこの二つの情報から受けたショックは甚大なものだったと彼女は語る。
動物や環境を心からいたわる気持ち、生命愛護という自分たちの理念を何としても伝えたい――猛烈な使命感がこみ上げてきたのだという。
この春、夫・宋氏は「希望小学」(学校に行けない貧困地区・貧困家庭の子供たちを支援する国家プロジェクト=希望工程=によって造られた小学校)への寄付のために2,250キロに及ぶ四川省行脚を行った。
宋氏、曽氏夫婦が二人三脚で進める「世直し」と「社会貢献」。それを支えるのは揺ぎない信念からなる熱い情熱である。
「もっと多くの人が生物へのいたわりの気持ちをもってくれれば世界はさらによくなるはず――」(曽氏)。自分たちの理念に対する賛同者が、海を越えて出現していくことにも彼女は密かに手ごたえを感じているかのようだった。
 
 
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