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  「大きな意義ある一歩」で 改革は加速段階へ
みずほコーポレート銀行執行役員・上海支店長 花井健 氏
 
 
  花井健・執行役員、上海支店長

ここに注目!
大胆予測!
メインシナリオ 1$=7.75RMB 人民元金利スワップ導入
リスクシナリオ 切り上げ圧力増し「プラザ合意」再現?

2005年中国は、管理変動相場制への変更、為替先物というリスクヘッジ手段の導入など、“小さな第一歩ながら大きな意義のある一歩”を踏み出した。一部識者と言われる方の中には、中国の金融改革は遅遅として進んでいないと見る向きもあるが、行政指導や当局規制緩和の実務に携わる我々にとっては、予想をはるかに上回るスピードで進んでいると見る。(特別寄稿)

  「大きな意義ある一歩」  
 
中国金融市場はいま正に大変革の渦中にある。
WTO加盟時の国際公約である二〇〇六年末までの金融全面開放に備え、「市場化」を強力に推進しており、各種改革が急ピッチで進行している。昨年を振り返ってみても、金利や為替などの制度改革をはじめ、業務規制緩和や国有銀行改革などで大きな進展を見せた。かかる動きは〇六年も更に加速すると見るしかない。
制度改革で特に影響が大きいのは、やはり人民元為替改革である。
〇五年七月には、人民元の対米ドルレートが約二%切り上げられるとともに、実質固定相場に近い米ドルペッグ制から、中国の貿易相手国の通貨バスケットを参考とする管理変動相場制に変更された。八月には人民元為替先物業務が外資銀行にも開放され、幣行もライセンスを取得し取引を活発化させている。
為替制度そのものが日米欧の先進市場と並ぶまでには、もう少し時間が必要という感もあるが、つい最近まで全てが当局規制下にあった市場において、人民元為替レートが小幅ながら日々動くようになり、また為替先物というリスクヘッジ手段が導入されたという意味において、「小さな第一歩ながら大きな意義のある一歩」と捉えるべきであろう。
為替制度の見直し以外にも、大きな変化が見られた。外銀の業務規制緩和については、人民元業務取扱地域の拡大、特に西部および東北地区では、人民元業務認可基準の緩和等、優遇措置も認められた。また、国有銀行改革では、〇五年六月の交通銀行に続き、一〇月には中国建設銀行の海外株式市場での上場が実現。このほか、中資系銀行に対する外資の出資規制が緩和され、欧米金融機関による資本参加が相次いだ。
これら一連の動きは、今年末の金融全面開放をにらみ、中国金融当局の中資系銀行の経営体質改善、競争力の強化を狙ったものと、欧米金融機関の中国での種々業務展開の足場固めを狙ったものとが、相呼応して出来た産物と言うこともできよう。
 
  通貨切り上げは四%前後か?  
 
さて、〇六年の展望だが、まず人民元為替相場について。
中国当局は急激な元高が国内経済にダメージを与えることへの警戒感は強く、極めて慎重なスタンスを崩していない。また、切り上げ以降の元高進行がわずかな幅に留まっていることや、人民元切り上げ観測がやや後退した当地為替市場では、意外に人民元の売買ニーズが均衡していることを考え合わせると、今年の変動幅も出来れば穏当なものに留めたいと当局は考えていると思われる。
ならばどこまでの変動なら耐えうるのか。字数の関係で詳細な説明は割愛させていただくが、正に金融全面開放の〇六年、人民元の切り上げを含む何らかの為替制度変更を実施しなかった場合に生じる市場の不信任を避ける必要からも、筆者としてはメインシナリオとして一$=八・〇八人民元前後から約四%程度(一$=七・七五香港ドルとほぼ同じレベル)の人民元切り上げは受忍せざるを得ないのではと考えたい。
他方、外資依存の経済成長を持続する中国としては、将来的にも市場開放の象徴的事象として変動相場制への移行(いわゆるソフトカレンシー化)をちらつかせながら、海外投資家に対して継続的な通貨高の可能性を市場に浸透させ続ける必要がある。
また、厳しい合理化、省力化、内外生産体制の見直しによる国際分業体制の構築、製品の高付加価値化等の抜本的な構造改革を行うことで円高を吸収して来た日本企業の例からして、中国としても自国通貨高を早期に吸収しながら経済体制を変える必要がある。さらに、米国が覇権国家としてのパラダイムを自国一国原理主義へとよりシフトし中国への為替政策変更への圧力を強化した場合、中国としてもリスクシナリオとして日本が味わったような大幅な通貨切り上げを甘受せざるを得ない可能性も否定出来ない。
 
  「金融のトリレンマ」が改革尊く  
 
  話は少し横道にそれるが、中国金融市場の変革がなぜ為替から始まったのかを考えたい。
「金融のトリレンマ」という言葉があるが、これは「為替」「金利」「資本」の全てを同時に統制することはできない、ということ。
これを現在の中国にあてはめると、「金利」は預金・貸出とも規制され、規制のない銀行間の取引金利や債券の金利は下限に張り付いている。「資本」も厳格な内外遮断管理がなされている。ならば「為替」については、好調な経済活動や外資誘致の成果として、外貨が国内に大量流入しているのだから、論理的には大幅な人民元高になるはず。ところが、昨年央までは「為替」も実質米ドル固定相場として規制されていた。その結果、まさに「金融のトリレンマ」が生じていたのである。
実際には、輸出競争力が向上し経常部門での外貨流入に加え、海外投資家からの「人民元先高観」で投資部門でも外貨が増加、その結果、中国の外貨準備は日本を追い抜かんばかりの勢いで伸びた。
これに対し、当局がやむを得ず国家的意思としてドル買い人民元売りの通貨介入を続けたが故に、人民元流動性が過剰になり不動産投機に流れるなどの問題が発生、人民元為替切り上げに繋がったと見ている。
また、人民元過剰流動性に端を発し過熱気味だった経済を安定的にさせるために発動されたマクロコントロール政策に関しては、業種別貸し出し規制などの面では我々外銀への影響は軽微であったが、人民元投機抑制のための外貨管理に関しては、外貨資本金の人民元転手続の厳格化や、外資銀行に対する外債枠管理(総量規制)導入などで規制が強化され、多くの外銀が体力を使うことになったのも事実だ。正に金融規制緩和は、うがった見方をすれば、外貨管理規制強化で経済自由化の回転スピードを鈍化させることと引き換えに成り立ったと言っても過言ではないのである。
 
  「金利」改革への胎動  
 
では、「為替」の次はどのような変化が起こるだろうか。今年は、「為替」と手を携えながら「金利」にも軸足が移るとみたい。中国は年率九%以上の高成長を誇る国である。人民元切り上げ後も、輸出は好調を持続している。一方、原油など世界的な原料価格の上昇にもかかわらず、インフレ率は落ち着いている。本来、高成長が続く経済では、金利は上昇するのが一般的なのだが、中国では金利が相対的に低水準に抑えられており、行き場に困った運用資金が不動産へシフトした結果、不動産の価格の高騰や、債券金利の低下を招いている。
原油価格の騰勢で、すでに世界経済にはインフレの足音が迫りつつある。中国は資源輸入大国でもあり、将来的にインフレの影響を受ける可能性が高い。人為的な低金利政策を長期にわたり継続することは困難と思われ、景気やインフレの変動に柔軟に対処できるような金融調節機能を早晩整備する必要が出てくる。重要なのは、為替と同様に、「市場」が水準を決定するようなルール作りであり、金融当局の役割は、正に水準の決定者からルールを作り、政策意図を市場に浸透させ、かつ市場の動きをチェックする役割に変わっていくと考えている。
また、「金利」改革は、金利上昇の可能性をはらんでいる。企業も金融機関も、将来の金利上昇に予め対処できるように、リスクヘッジ手段を準備しなければならない。金利スワップ、金利先物、金利オプションなど考えられるが、ニーズが高く企業の方々にとって手触り感があるのが金利スワップであろう。それ故、先ずは「人民元金利スワップ」が導入されると予想している。
「金利」改革のテンポに筋道がつけられれば、残る本丸は「資本」の改革である。
しかしながら〇六年末までに一気呵成に資本改革が進む可能性は低い。日本でも一九七一年の三六〇円からの円切上げから、八〇年の外為法全面改正による資本取引自由化まで九年。九八年の為替取引の完全自由化まで二七年を要した。中国では昨年やっと「為替」が始まったばかりであり、今年「金利」にまで手をつけることができれば上出来である。
中国金融市場の改革は、一部識者と言われる方の中には、遅々として進んでいないと見る向きもあるが、実際に行政指導や当局規制緩和の実務に携わる我々にとっては、外国の金融関係者の予想をはるかに上回るスピードで進んでおり、今後も一層加速していくように感じている。中国という国は、そう思わせるに十分な力を備えているし、実行力もある。
 
  「市場への貢献」を視野に  
 
〇六年は、中国金融市場の「市場化」、規制緩和が一層進展する中、我々外資銀行にとっては、これまで欧米市場などで培ってきたノウハウを幅広く提供できる素地が整い、ビジネスチャンスが広がるだろう。
弊行では、中国でも商業銀行業務に加え、投資銀行的な業務に重心を置いたノウハウ提供、サービス高度化に努めている。昨年末、上海で中国地場金融機関向けにシンジケートローンセミナーを開催したように、市場の改革を先取りし、取引先に対してより高度且つ先進的で利便性の高いサービスを提供する方針でいる。一外資銀行の立場から、特に「政冷経熱」と言われる中日関係の中、絶対に「熱を冷まさないこと」を原点にこの国の金融市場の発展により貢献出来ればと考えている。 
 
 
     
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