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  同時通訳突き詰め、養成学校を開設
「諦めない」が成功呼び込む
 
  上海盧湾区育成翻訳培訓中心 王建明 代表  
 
初級、中級、上級にクラス分けされ、幅広い外国語習得ニーズを取り込んだ語学学校はいくらでもある。だが、その先のレベルとなる「プロの通訳」を養成する学校は上海に一校しかない。中日英の同時通訳者養成学校「上海盧湾区育成翻訳培訓中心」。その代表を務める王建明さんは、自ら教壇に立つ教師でもある。

「翻訳者は人格者でなければならない」と受講生に日々言い聞かせる王さんの生きがいは教壇に立つこと。「苦労を楽しみ、何事も諦めないこと」を信条とする。趣味は読書で、遠藤周作の全集を持っているほどのファン。
 
  「語学は学業、通訳は職業」  
  外国語習得ブームという目の前にある巨大な市場を相手にすれば、確実に利益を確保できる。そこを敢えてターゲットを絞り込み、潜在市場の開拓に挑んだ。それは、上海対外貿易学院の日本語教師という肩書きもある王さんが、日本での一〇年の滞在を経て「通訳」という仕事のあり方について考え抜いた末の結論である。
日本に留学し、大学院を卒業した王さんは、日本企業で通訳や中国語教育を行っていたが、二人目の子供が生まれたことで帰国。「中国語をうまくしゃべれなくなっていることに気づきました。新しい単語を聞いただけで鳥肌が立ったんです」と帰国した当時を振り返る。そこで改めて感じたのは、外国語を習得のためには母国語を向上させなければならないということだった。
ただ、「プロの通訳は外国語ができればいいというわけではないはず││」。同時通訳とは何なのか、いかなる存在であるべきかをはっきりさせることができないまま、進出企業のコンサルを主な事業内容とする上海集慧林商務有限公司を設立する。
転機は「語学は学業であり、通訳は職業である」と気付いた時にようやく訪れた。「この考えが正しいことを認めてもらいたい」。これが同時通訳専門の教育機関をつくる直接の動機となり、今の王さんを支える原動力ともなっている。
 
  「やり始めたら、諦めない」  
  二〇〇三年に開校した通訳学校は、いきなり猛烈な逆風に曝された。SARSである。同時通訳養成用に設備投資をしたにもかかわらず、受講生が思うように集まらないため、講義を開始できない状況が続いた。それでも「一旦やり始めたら、絶対にあきらめない」という持ち前の性格で困難な時期を乗り越えた。
その苦労が報われたかのように、王さんに追い風が吹き始めている。二〇一〇年に万博を控える上海では、国際レベルの会議が頻繁に開催されるようになり、同時通訳をこなす人材の需要が急増した。今では広告を出さなくても、口コミで評判が広がり受講生が集まってくる。
ようやく黒字転換の見通しが立った今年、王さんは新たな事業をスタートさせる。コンサル会社の会議サービス部門を独立させて、新会社を設立、日系大手の会議・イベント会社と提携する計画だ。同時通訳はもちろんのこと、イベントコンパニオンのチームを組成し、派遣することも視野に入れる。「国際レベルの大きな舞台では顔やスタイルといった外面的な要素だけではなく、通訳、接客、商品宣伝がきちんとできるプロフェッショナルな人材が求められている。その集団を育成したい」(王さん)
 
  「本当は主婦になりたかった」  
  午前中は大学、午後から夜にかけて通訳学校の授業、そして会社経営と多忙の日々を送る王さんは、二人の子供を女手ひとつで育てる母でもある。一二歳の男の子と八歳の女の子。そして、その子供たちの体よりはるかに大きい体重九〇キロの愛犬・セントバーナードを併せて「三匹の子供たち」と王さんは愛着を込めて呼ぶ。「本当は主婦になりたかった」と語り、忙しい中もできるだけ子供たちと一緒の時間をつくることを心掛けている。
五歳まで日本にいた長男は、日本語を勉強したいと上海で唯一日本語を教える中学校にこの秋から進級する。そう話す王さんは事業家の姿から離れて、母親の笑みをこぼした。
 
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