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  岐路に立つファッション・繊維産業  
 
ジャパンファッションフェアのオープニング
ジャパンファッションフェアのオープニング
日本ブランドの浸透なるか
ファッション・繊維製品の中国市場販売にむけ、「インターテキスタイル」「ジャパンファッションフェア」という大規模イベントが、相次いで上海で開催された。
日本の製造業では、国際競争力の弱い「例外業種」と言われるファッション・繊維産業だが、日本政府の全面支援を受け、「インターテキスタイル」のジャパン・パビリオンには、124社が参加、「ジャパンファッションフェア」には、ブランドを持つ43社が出展した。
いずれも活況で、中国側への反響も大きく、判明しただけで計6億円近い成約見込み、代理店申し込みは、ジャパンファッションフェアで360となった。
米国とEUの輸入制限が、WTOにより今年一杯で廃止され、繊維産業は新たな国際競争時代に入る。同時に中国国内の商業領域で独資参入も始まる。
先進各国における衣類の輸入額(経済産業省)
中国から世界市場への繊維製品輸出が更に増加するとともに、中国市場への関心も飛躍的に高まる。「中国から欧米への輸出制限がなくなれば、一大チャンス」「中国の繊維会社は、マーケティングがまだ極めて弱い。日本のファッション・デザインに優位性がある」という日本の大手商社は、繊維製品の製造、販売統括会社を来年早々に上海に設立予定だ。新たなサプライチェーンが中国を拠点として形成される。
中国製品の日本市場への圧倒的浸透で、全体ではジリ貧状態の続くファッション・繊維業界が、日本ブランドを前面に立て、復活への道を進むことができるだろうか。
 
  日本ブランドのブース紹介(ジャパンファッションフェア)  
  ● [イオリ]  
  フランチャイズ展開を拡大
アウターからバック、シューズ、小物まで、イオリ(本社:東京都渋谷区)の華やかなブースは多くの来場者を引き寄せた。
二〇代後半から三〇代前半までの大人の女性をターゲットに、カジュアルなレイヤードスタイルを提案する「イオリ」は、すでに大連でフランチャイズ店を一店舗出店。三年前に事務所を開設した上海には、今年一二月に企画、生産、卸しの独資現地法人を設立する計画だ。上海を拠点に、フランチャイズ展開を拡大させる。
 
  ● [イサムインターナショナル]  
 

中国販売は為替リスク軽減の経営戦略
ハンドバッグのイサムインターナショナル(本社:大阪府堺市)は、販路の六割が日本向け、四割が欧米、アジア向け。
これまで中国の高級バッグ市場は未発達との見方から中国進出を控えていたが、華僑の既存客が上海、深で販売を始めたところ、意外にも反応は良好、今回のブース出展を決めた。
同社常務取締役の神谷高締氏は「販売戦略やブランディングはいまだ模索段階」と語るも、ブースの集客の多さに手ごたえをつかんだ。
同社は、深にオフィス、ショールーム、工場、そして従業員宿舎に福利厚生施設まで揃えた一大拠点を構える。「グローバル展開の中で、為替リスクの軽減にもつながる」(神谷常務取締役)と、中国販売に期待を寄せる。

 
  ● [クロスプラス]
  九割を現地生産
マタニティ市場にも注目

クロスプラス(本社:名古屋市西区)は、カジュアルブランド「A/C DESIGN BY ALPHA CUBIC」とともに、マタニティウェア専門の「ALPHA CUBIC MOTHER」を出展。中国では、妊娠後も仕事を続ける女性が多いながら、マタニティウェアの市場が発展途上であることに着眼した。
同社はアパレル製品の九割近くを、青島の合弁会社、青島喜案飛服飾有限公司をはじめ、上海周辺を中心とする多数の協力工場で生産。今年九月には、上海市に検品・検針の全額出資子会社を設立している。中国での現地生産体制を強化して、内販にも着手する狙い。
 
  ● [フーセンウサギ]
高級輸入ベビー服、富裕層が狙い
ベビー服の老舗、フーセンウサギ(本社:大阪市西区)は、グループ会社として上海風船兎時装有限公司と上海風船兎国際貿易公司の上海二拠点を有する。現在は、数ブランドを中国で生産・販売している 。
今回展示した「CELEC」は、高品質、高機能にこだわった新生児服の最高級ブランド。中国生産ではなく、日本からの輸入品で高級感をアピールする。値段は通常の二〜三倍するが、「いいものに対してお金を惜しまない富裕層がターゲット。一人っ子政策の影響も大きい」と上海風船兎国際貿易の西川正知副総経理。まずは上海市場を攻略してから、他都市への拡大を図る。
  ● [林田]  
  ブランド展開で本格化
輸入販売会社設立も

メンズニットの林田(本社:大阪市天王寺区)は、中国市場でハウスブランド「レセント」「サムスクーリ」の販売に乗り出す。同社は、〇二年に良質なカシミヤ原料の確保を目的として、内モンゴル自治区に合弁会社、包頭高林服飾設計有限公司を設立。現地生産の商品をはじめ、上海に輸入販売会社の設立も視野に入れる。
現在、中国国内での販売代行として、伊勢丹などの名前が挙がっているほか、今回の展示会でハルピン、瀋陽から来たバイヤーからも好反応を得た。
また、イタリアからのデザイン、素材を使用した製品も手掛ける同社は、イタリア製の糸を中国で縫製して日本に輸出するなどして、大手アパレルメーカーとの差別化を図る。
 
  〔専門家インタビュー〕
日本ブランドの特徴と浸透の可能性
東華大学・日本文化服装学院 劉 微・副院長、教授
 
  ● 日、中両国、ファッション・繊維産業の現状
中国では、日本のマーケットを調査し、参考にしながら生産する企業が多くなっています。頻繁に日本を訪問し、流行を常に調べ、日本から得たアイデアを採用しています。
日本企業の多くは、中国で縫製していますから、半年先にどんなデザイン、色を流行させようとしているか、上海では準備段階でそれとなく情報が伝わる感じがあります。中国の縫製会社は、日本のアイデアソースをいち早く察知し、製品化する点では、かなり能力が高まってきたと言えるでしょう。

劉微教授の略歴
1982年 上海大学美術学院卒業
1988年 文化服装学院卒業
1992年 東京スタイル・デザイナー
1995年 装苑デザイナー
2003年 文化服装学院・教授
2003年 東華大学・日本文化服装 学院、副院長・教授
  ● 日本ブランド、中国進出の可能性  
  日本のブランドが、中国で人気を博する可能性は大いにあるでしょう。米国のファッションはまだ歴史が浅く、洗練度は日本が上だと思います。欧州のデザインは、奇抜さが一部の人に人気があるのですが、多くの人向けでは、日本のデザインが普及する可能性があります。
日本のデザインの特徴は、「シンプルさ、上品、優しさ」がポイントです。シンプルなデザインで、自由に組み合わせられるオリジナル性の高い服を追求しています。女性が欲しいと思う商品を作り、様々なシルエットを表現します。色は白やベージュなど優しい色を使い、欧州と違い、黒やグレーといったダークカラーも多いです。
 
  ● ファッション、繊維の新しい人材育成が始まる  
  私の勤務する東華大学・日本文化服装学院は、日本の文化服装学院との合作による新しいコースが、三年前政府から許可され、設立されました。昨年、第一期生を募集したところ、競争率は一〇倍近くに達しました。この新しいコースは、中国で二年半、日本の文化服装学院で一年半の教育を受けますが、東華大学の四年制大学卒業、日本の文化服装学院卒業が認定されます。若い才能を伸ばし、世界で通用するファッションデザイナーを、是非中国からも出していきたいのです。
中国では一人っ子政策の影響もあり、子供にハイレベルの教育を受けさせようとする親の力の入れようは並大抵ではありません。最近、私立学校による教育が上海で許可されたのですが、既に一五〇〇の私立学校設立の動きがあると言われています。長い間、公立しか認められなかったので、私立学校へのニーズは高いと思います。私の母校である文化服装学院の連鎖校、「上海装苑文化服装学校」でも、この八月から授業を始めています。
 
  ● ファッション産業誘致に動く上海市長寧区
 
  東華大学は以前、「中国紡績大学」という名称で、紡績、ファッションなど繊維関連で中国を代表する重点大学でした。ご存知の様に、上海には以前、紡績、縫製工場などが街中に沢山ありました。
東華大学のある上海市長寧区は、最近、ファッション産業の振興に力を入れています。長年の繊維の伝統を生かし、日本のファッション産業の誘致にも力を入れ始めました。
長寧区は最近、「上海ファッション・ハブ」という施設を建設しました。ここには、日本を代表する企業「ワールド」や、先の上海装苑文化服装学校、中国デザイナー協会、アジアファッション連合が入っています。日本のファッション、繊維会社からも、長寧区の取り組みに期待は高まっています。
 
  地場繊維企業も中国で浸透めざす  
  ● 三年連続で上海市場調査ミッション
   ニット日本一の新潟県五泉市
 
 
新潟県五泉市は、五十嵐基・市長(写真)を団長に、繊維、ファッション市場調査を目的とした調査団を三年連続で上海に派遣している。今年は一一月五日から五泊六日で訪問。ニット工場、卸会社経営者が参加した今年は、新しい商売に結びつけようと、工場視察(松江区、ユー・エフ・オー株式会社)、在上海企業懇親会(上海商工倶楽部)、ジャパン・ファッションフェア・イン上海二〇〇四の視察、百貨店、上海マート、ジェトロ研修など精力的に廻った。
五十嵐市長は、「視察三年目、是が非でも実際の成果が必要。メイドイン五泉(GOSEN)のブランドを、上海に売り込みたい。生産額は九〇年から半分以下に落ち込んだままなので、上海への進出でどうにか浮上のきっかけを」と話している。
 
  ● 「ジャパンクオリティ」を前面に
  インターテキスタイル 上海
 
  インターテキスタイルは、二四の国と地域から約一〇〇〇社が参加した中国最大級のテキスタイル展。ジャパンクオリティ」と銘打ったジャパンパビリオンには、大手商社、メーカーだけでなく、地場産地である大阪、福井、石川などの中小企業からも出展、計一二〇を超える企業が参加した。
ジャパンパビリオンは、今回初めてジェトロ主催となったが、展示事業部海外見本市課の池下譲治課長は、「昨年に比べ、ブース数増加に伴い、商談数、成約数も格段に増えた」と述べる。
安価な労働力による「縫製工場」としての色合いが強かった中国も、今では「市場」としてのポテンシャルに期待が高い。日本製テキスタイルのセールスポイントは、何といっても「高機能繊維」。アテネ五輪の競泳金メダリスト、北島康介の水着に使用した東レの鮫肌素材、帝人ファイバーのナノテクを応用した光発色繊維「モルフォテックス」などは、日本の繊維技術、世界ナンバーワンの象徴と言われる。
日本にしかできない「ジャパンクオリティ」が勝負の分かれ目であり、裏を返せばそれだけ中国繊維産業の技術スピードが増していることになる。 
 
  〔独自ブランドを上海から〕  
  ● 手作りのファッションショー
 
  独自ブランドがまだ育っていないと言われる中国で、上海生まれの強莉娜さんと徐邦寧さんは、自分たち独自のブランドを作ろうと、一〇月一六日、多くの友人たちの協力で、手作りのファッションショーを開いた。巨鹿路の歴史ある建物、「文学会館」で開かれたショーには、強さん、徐さんのデザインに関心を持つ五〇人程が集まった。
まだ二〇歳台の強さんだが、「異族情節」という自分の店をブティックの街、陝西南路(二二三号)に持ち、自作の服、小物、アクセサリーなどを販売している。アトリエは淮海中路の上海図書館の近くで、二人のアシスタントも雇っている。「どうしても自分のデザインした物が売りたくて、始めました。値段が手ごろで、オリジナルデザインなので、今では良い売れ行きで、日本人のお客様も多いです」と自信をみせる。
自分のデザインについて、「中国の古いデザインをモダン化し取り入れている」と説明する。「日本の着物は本当に美しい。若い世代には日本のデザインが好きな人が多い」と好意的だ。
 
  ● 上海の発展、これから一〇年にかける
 
  徐邦寧さんは、強さんのビジネスパートナーとして、自分でデザイン、製作をする一方、独自ブランド確立にむけ動き出している。日本に留学、一〇年間滞在していた徐さんは、その後アメリカで五年間暮らした後、上海に戻って来た。「淮海中路で日本総領事公邸のあるあたりで育ちました。昔はみんなが、同じような暮らしだったのに、上海の変わり様には、上海っ子の私も驚くばかりです。子供の頃、遊んだ建物もほとんど無くなって少し寂しい」と思い出を語る。
「これから十年の上海は、素晴らしい時になるはず。自分たちの独自ブランドで勝負します」と、上海の発展にかけている。
独自ブランドは、「BABU」といい、親しみ易い名称だから決めた。自分でロバをイメージしてキャラクターも作った。
繊維の街、上海で生まれ、その変化を四〇年間見てきた徐さんと、新しい世代、強さんのコンビで、独自ブランド「BABU」は船出した。日本のKENZO、KOSHINOなどに続く、アジア生まれのブランドが、上海から出て来るのは遠くないかもしれない。最初から道はあるのでなく、人が通った所が道になるのだから。
 
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