Walker
中国最新情報満載!!
特集
  鉄鋼業  
 
鉄鋼業、再び熱い舞台へ

今、世界経済、中国経済の体温を示す重要指標の一つが、中国の粗鋼生産量だ。一九九六年に世界一となって以来、急ピッチで生産量を増やし、年率で約二〇%前後のペースで増産を続けている。「中国経済過熱論」の出てくる背景でもある。
「〇三年の中国粗鋼生産量が約二億二〇〇〇万トン」、と言ってもピンとこない方が多いだろうが、世界二位である日本の二倍に達し、年間増加量だけで、新日鉄(会社別世界二位)の生産量を上回る規模だ。日本の高度成長期における粗鋼生産の伸び率に迫る勢いだ。
日本の高度成長期と現在の中国経済を比較する説明が増え、富裕層ではマイカーブームに火がつき始めている。現在、鉄鉱石需要の四〇%、石油消費の約四〇%、自動車用高級鋼板の多くを輸入に頼る中国経済が、世界の資源価格、エネルギー価格、物価動向に影響を与える。 
中国の急ピッチで進むインフラ整備、住宅、ビル建設、製造業そして外資導入を支える基盤の粗鋼生産量は、世界が注目するに値する指標と言えるだろう。
現在、中国の旺盛な需要で、日本の鉄鋼主要各社が揃って〇四年に最高益を記録する見込みなど、鉄鋼業が、日本、中国、両国経済の牽引役として再登場している。
 
新日本製鉄}
  歴史脈打つ新合弁会社
自動車用高級鋼板を生産
 
  宝鋼新日鉄汽車板有限公司(今年七月三〇日発足)が仮事務所を置く宝山賓館は今から約二五年前、宝山鋼鉄一号炉建設のため、新日鉄から来た技術者達の宿舎として、建てられたことで知られる。
新工場は、既に外観が出来上がり、周囲の工場を圧倒するかのように、きらきらと光り、壮観な姿を見せている。自動車用鋼板の生産工場は、長さ五〇〇メートル以上、高さ七〇メートル以上にも達するという。
日中経済協力の象徴とも言われる新日鉄と宝山鋼鉄は、新会社設立により、新たな歴史を迎えた。
新たな歴史を迎えた。鉄鋼特集にあたり、新日鉄上海事務所のご厚意により、新会社・宝鋼新日鉄汽車板有限公司の董事、副総経理として赴任したばかりの横山雄治さんに、貴重な時間をいただいて実現したインタビューを紹介します。
 
  ● 特別インタビュー宝鋼新日鉄汽車板有限公司横山雄治さん(董事、副総経理)
宝鋼、アルセロールと新合弁会社を設立された目的は何でしょうか
 
 
鉄粉などを金型に入れプレスした直後の部品類。この後焼結工程に移る
中国で生産される高級自動車用の鋼板需要に応えるためのものです。中国の自動車生産台数は、既に世界第四位、販売台数ではドイツを抜いて三位です。日本では生産台数のうち、輸出がかなりありますから、国内市場規模では、中国は数年後には日本に追いつくでしょう。世界の自動車メーカーが、中国市場の成長を見据え、生産工場を競って準備しています。自動車メーカーからの要望もあり、高付加価値商品である高級自動車用鋼板の現地生産が必要と判断しました。
 
中国での自動車生産は、各社とも最新モデルへと比重が移っています。古いモデルに留まっている自動車メーカーは、販売シェアが落ち気味ですが、最新モデル用には自動車用鋼板にも最新技術が求められます。これまで、中国は海外からの輸入でカバーしていたのですが、自動車メーカーから、生産台数の増加を考慮し、鋼板現地調達の要望もあります。
投資規模は、これまでの当社の海外事業としては、最大規模です。北米でのイスパット・インランド社との共同事業規模に匹敵するものです。当社は、他にタイのSUS社、ブラジルのUNIGAL社などを通じ、重要な海外事業をこれまでも行ってきています。
会社別で世界最大の粗鋼生産量を誇る欧州のアルセロール社とは、資本提携関係こそありませんが、戦略提携の関係にあります。中国では、欧州の自動車メーカーが販売シェアで先行していますから、日、中、欧の鉄鋼トップ各社が参加することになりました。
 
 
  ● 新会社設立までの交渉について、うかがいたいのですが  
 
 
当然のことですが、鉄鋼は国の基幹産業であるため、外国投資の受け入れには、中国側はいろいろな条件要素が必要となります。新日鉄側は、自動車用鋼板の顧客を確保するのが目的ですが、宝山鋼鉄側は、新日鉄の誇る高級鋼板生産の技術を取得し、宝山鋼鉄の技術を向上させるのが目的です。双方の目的が異なるため、どこで妥協するのか、極めて難しい交渉になりました。
中国側五〇%、外国資本五〇%と、同じ出資比率ですが、日、中、欧のトップ企業による合弁事業なので、「強者連合」と自負して呼んでいます。
正直に申しあげると、交渉がデッドロックに乗り上げた気持ちになった時もありましたが、両会社のトップが、合弁事業を確信し、最後まで双方の信頼関係はゆるぎませんでした。この信頼関係が、新会社設立の実現した最大の理由だと思っています。新事業を始める時、慎重な意見の人も、当然双方にいますから。私も担当者として、三年間で八〇回以上も上海に通いました。途中で正確に数えるのをやめてしまいましたが。
 
  ● 新日鉄と宝山鋼鉄と言えば、単に鉄鋼での共同事業というだけでなく、「大地の子」で紹介された日中間での協力の歴史として、多くの人が関心を持っているようですが
 
  実は、新日鉄の千速会長と宝山鋼鉄の謝董事長は、二人とも一九七八年、一二月二三日、宝山鋼鉄で行われた「製鉄所起工式」に、両代表団の随員として出席していたのです。その両トップが、起工式から丁度二五年目となる二〇〇三年一二月二三日に、新たに合弁契約を締結することで決意を固めていました。両者の協力の歴史は、今回の合弁会社設立にもしっかりと生きています。
新日鉄側では、協力の歴史にも関心が強いのですが、宝山鋼鉄側には若いスタッフが多く、歴史の重みというより、これからの共同事業にかける熱意の方が極めて高く、圧倒的にまさっている感じがします。中国側の鉄鋼産業の発展にかける意気込みの熱さは、今の日本ではあまり見られなくなったもので、羨ましく思うことも、たびたびあります。
 
  ● ー赴任されたばかりですが、上海での生活はいかがでしょうか  
 
毎日、来年春の生産開始にむけ、全力投球です。これから更に日本人スタッフも増えますが、通訳の不足が気になっています。
出張とは違い、帰りの切符がないというのは、かなりのプレッシャーを感じます。どうしても、仕事ばかりの生活で、出張で来た時と違い、上海見物というのもあまり出来ない毎日です。慣れない洗濯をして、気分転換というところでしょうか。
 
  ● 世界最大の生産国だが、発展にハードル多し海外メーカーとの合弁設立、業界再編へ
世界最大の粗鋼生産国でありながら供給不足が続くという需給アンバランス、エネルギー価格の高騰や物流インフラの未整備、コスト競争力の低下など、中国の鉄鋼業が抱える課題は少なくない。海外企業との合弁企業設立の動きが進む一方、小規模で劣悪な溶鉱炉しか持たない各地の弱小メーカーの整理・再編など、中国経済を支える基幹産業として中国鉄鋼業界は新たなダイナミズムを形成しようとしている。
● 各地に乱立、小規模「ミル」、難しい「品質」確保
 
  中国のWTO加盟(〇二年施行)によるインパクトは大きく、粗鋼生産量において劇的な増加をもたらすこととなった。昨年の生産高は二億二〇〇〇万トン。これは二位である日本の一億一〇〇〇万トン、三位のアメリカの九〇〇〇万トンを合わせた数値よりさらに大きく、世界の粗鋼生産の四分の一を占める。今年は一月から八月までの実績が一億七〇〇〇万トンに及んでおり、〇四年は年率換算にして二億五〇〇〇万を超えると予測されている。
ところが、白熱する鉄鋼市場に商機を見た中小企業の市場参入が相次ぎ、広く地方に分散する小規模「ミル」が増産を行っている現状は、にわかに供給サイドにおける大きな矛盾として注目されるようになっている。
老朽化した小規模の「ミル」による違法行為、すなわち、「国の基準に満たない不良鋼材(建設鋼材)」の生産と販売に対して取り締まりが行われた結果、摘発対象としてリストアップされた企業は四六〇社にのぼるという(九月二〇日時点)。手抜き工事など工法上の問題もさることながら、粗悪な銅材を用いて建設物などが建設された場合には大きな危険をはらんでいる。
中国鉄鋼工業協会の呉渓淳氏も、世界一の生産高を誇る鉄鋼業界は「新たな発展段階」にあるものの、資源や環境、東部沿海地域と西部内陸部との生産格差など取り巻く環境は「厳しい状況」にあること、そして「低水準の能力拡張に対する取締まりがなされず、小規模な『ミル』の乱立状態に歯止めがかかっていない」ことを問題視している(今年六月五日に行われた国際鉄鋼会議での報告)。
 
  ● モータリゼーションが火付け役になった現地生産への動き  
 
日本鉄鋼連盟 北京事務所 首席代表伊藤 仁 さん
では、需要サイドの動きはどうか。
〇八年の北京オリンピックや一〇年の上海万博など、国家発展の重要な節目に向けた公共投資、設備投資、インフラ開発などの建設需要は急速な拡大傾向にあり、〇五年から一〇年にかけて二三%増という大幅な伸張が予測されている。「見掛け消費」(生産−輸出+輸入)は過去ほぼ一貫して粗鋼生産高を上回り、不足分は輸入によって補うという構図は今後も続くとされる。
ただ、現時点では三%(日本では二〇%)にとどまっている自動車業界における需要が、〇五年から一〇年にかけて四三%増という飛躍的な成長が見込まれるとあっては、「冷延薄板」など、品種によっては日本からの輸入だけでは到底追いつかず、需給のアンバランス問題はますます顕著なものになってくるに違いない。
鋼板の安定的生産・供給を求める需要側の期待に応えるべく、新日本製鉄はこの度「強・強連合」と呼ばれる合弁企業設立に踏み切った。一方、JFEスチールも自動車メーカーからのニーズ急増を見込んで生産体制拡充に着手しており、このような「需要立地」型の合弁会社設立の動きはますます活発になってくるだろう。
 
  ● 中国製はもはや「安さ」を売りにできない!?  
  ところで、中国の鉄鋼石輸入量は、〇三年に日本を抜いて世界一となり、今年は二億トンを上回ると見込まれる。七割を国内鉄鉱石で賄っていた中国の鉄鋼業は、いまや六〇%の量を輸入に頼り、一段と依存度を高めている。
電力の問題も深刻だ。送電網の整備など供給体制の改善に向けて取り組むものの、いざとなれば発電所への原料供給が優先され、製鉄所への供給が滞るという事態も招きかねない。そのほか、中国は世界最大のコークス輸出国だが、国内需要の拡大で輸出削減措置をとったことで国際相場は大きく揺さぶられることとなった(〇三年の原料炭輸入は二六〇万トン)。結果として、輸送費の大幅な上昇やインフラ環境の未整備とも相まって、中国国内鉄鋼メーカーはコスト競争力という点でも、苦戦を強いられているのが現状である。
このような数々のハードルを抱えながら、中国の鉄鋼業は継続的発展を期して、中央のマクロ調整策による国内中小企業の再編・統合、外資との合弁企業の展開等々、業界の構造改革に注力していくことになろう。
 
  {JEFスチール}
 
  NKK(日本鋼管)と川崎製鉄が統合し、新日鉄と肩を並べる規模で誕生したJEFホールディンングは、統合効果もあり、〇五年三月期の業績がJEFホールディンング全体で新日鉄を上回る経常益に達すると予想され、勢いをみせている。
「鉄鋼は日本、中国を含め世界的に需要が強い」(関係筋)として、好調な業績が続くと予想する。
自動車用鋼板では、現地で製造出来ない、あるいは他国で製造出来ても需要を充足出来ない高級製品を販売する海外戦略を打ち出している。
一方、鉄鋼需要の急拡大が続く中国では、輸出と並行して、直接投資の検討を進める方針だ。
JEFは更に昨年、合弁で溶融亜鉛メッキ鋼板を製造するため、広州JEF鋼板有限公司を発足させた。出資比率は、JEF側五一%、広州鋼鉄四九%で、JEF側に一%ながら有利になったことに注目するむきもある。
広州では、現地生産で先行したホンダに加え、トヨタ、日産が工場建設を進めており、日本のビッグスリーが名を連ねている。一貫製鉄所で現地生産出来れば、大きなビジネスチャンスとなる。
関係筋では、「現段階ではFSの結果がどうなるか、予想出来ない。FSの話も広州鋼鉄側から持ち込まれたもので、FSの費用も支払ってもらう。現在の広州鋼鉄の敷地がアジア大会の会場となり、移転するので一貫製鉄所建設の話が持ち込まれた」として、慎重な姿勢を崩していないが、実現すれば投資規模も大きく、鉄鋼業にとって、夢のあるプロジェクトだけに、かつてない注目を集めている。
 
  {住友金属}
 
  中国の急速なエネルギー需要拡大を支える壮大なプロジェクト、「西気東輸」は十月一日に全線開通、本格的に天然ガス輸送を開始した。
「西気東輸」は、新疆のタリム盆地から十の自治区・直轄市を経て上海まで、総延長約四二〇〇キロにわたり、天然ガスをパイプラインで輸送する国家事業。
住友金属は今から約四年前、二〇〇〇年一二月、住友商事、宝鶏石油鋼管廠との合弁で、宝鶏住金石油鋼管有限公司を陝西省に設立した。資本金三億四〇〇〇万元、投資額六億七〇〇〇万元で、初年度からフル稼働、年間約一〇万トンの水準で、鋼管の生産を開始した。注文の急増で初年度から黒字を確保している。
日本の鉄鋼会社が受注するUO鋼管と言われる主要鋼管は、高級鋼板を加工したもので、都市部などの人口密集地で安全性を確保するために使用される。日本の鉄鋼会社の持つ高度な技術が、中国のエネルギー輸送を支えている。
天然ガスは、中国国内で消費量が毎年着実に伸びており、クリーンエネルギーとしての期待は大きい。中国経済の最重要課題であるエネルギー確保に、日本の鉄鋼会社が貢献している。その先駆となったのが四年前、住友金属の参加した合弁会社である。
 
  {日新製鋼}
 
  規模は他社と比較し小さいが高炉を保有し一貫生産する、ステンレス、特殊鋼、表面処理など、薄板類に特化した日新製鋼は、着実に中国事業を進めている。〇五年三月期の連結業績予想は、前期比で経常利益八〇%増と、他の鉄鋼各社と同様、極めて好調だ。
一九九六年には宝山鋼鉄と寧波市のステンレス冷延合弁事業に参加、現在は寧波宝新不鋼有限公司として、第四期拡張計画(生産能力六〇万トン/年)に着手している。また、天津市、江蘇省太倉市では、コイルセンターに合弁で参加している。
「高品質でも日本から中国への製品輸出が増えると、セーフガード等、何らかの輸入規制の懸念があり、合弁事業は必要」(関係筋)との方針だ。
今年九月には、上海宝鋼集団と両者経営幹部が戦略的な観点から情報を交流する会議を設置するなど、着々と布石を打っている。
 
ウォーカーチャイナ今月号
巻頭インタビュー
特集
Business Event Schedule
Business Scene
企業レポート
連載
中国ビジネス相談Q&A
私も起業家
知的法講座
China Economic Review「全国」
China Economic Review「上海」
その他
上海、北京、中国全土の広告掲載について
ウォーカーオンラインではバナー及びテキスト広告スペースを用意しております。
広告掲載ガイド 掲載の受付