Walker
中国最新情報満載!!
特集
    自動車輸送を軸にシステム構築
  「ジャストインタイム」や共同配送モデル化
 
日本企業がいま中国で、自動車(完成車)とその部品の輸送を主軸とした物流システム構築を進めている。日本ブランド車の現地生産が本格化しているとはいえ、国内集配送、さらには輸出入にまでいたる各ルートの独自整備は、実は自動車メーカー本体でなく、いわば取引先となるその周辺産業が担う。さらに、自動車輸送以外でも、たとえば生産地の上海と出荷先である日本と直結する高速RORO船(編注:ロールオン・ロールオフ船。トレーラーシャーシや完成車を自走により積み卸しする荷役方式の船舶)も出現し、所要を大幅に短縮した。陸路、鉄路また海路やときには空路といったさまざまな手段を活用し、ジャストインタイムの実現と究極的なコスト削減を目指すその展開が、中国の物流概念自体を大きく変える副次効果を生んでいる。
  伊藤忠商事編
環境対応重視前面に
内陸部も鉄道使い輸送の効率化実現
 
伊藤忠商事は今年五月、鉄道部傘下であった中国鉄路物資総公司と包括取引契約書を締結した。同総公司にとって、民間企業との初の包括取引契約となったが、それに先立つ二月、伊藤忠は子会社のアイロジスティクスとともに、中鉄物資総公司の物流子会社中鉄現代物流科技股分有限公司と中国全土をカバーする物流新会社「中鉄伊通物流有限責任公司」を設立している。
鉄道部系企業との相次ぐ提携は、とりもなおさず、伊藤忠が中国での物流事業展開に関し、鉄道を重要視している現われである。
伊藤忠(中国)集団有限公司の野村保之物流部長は、中鉄物資総公司との関係について「自動車関連の物流事業がメインになる」と説明しながら、同時に「モーダルシフトによる環境対策を強化するため」と、鉄道を選んだ理由を強調する。
中鉄との合弁第一号となった中鉄伊通物流有限責任公司は湖北省武漢市を本拠とする。武漢は本田技研工業と日産自動車の乗用車生産拠点である。関連メ
「モノ余りの中国で、まずネットワーク戦略を展開する」と語る野村保之物流部長
「モノ余りの中国で、まずネットワーク戦略を展開する」と語る野村保之物流部長
  ーカーの現地進出も目立つが、他の地域から両社に宛てて発送されるパーツなどの生産財の取り扱いを目的として、すでに敷地面積三万平方メートルのターミナルを稼働させている。
また、もう一点の根拠となる環境対策に関してだが、伊藤忠(中国)直系の上海伊藤忠商事有限公司などは、商社として環境対応の国際認証「ISO14001」を取得済みであるなど、もともと全社的にこの面の意識が高い背景がある。
これまで陸運分野でのトラックの過積載は、主にディーゼル排気による大気汚染を招来する事実だけにとどまらず、余波として交通事故の頻発、また高速道や一般道の路面短寿命化を確実に促してきた。モーダルシフトの需要は中国だけでなく、日本においても指摘され続けて久しいが、すでに先行する欧州では鉄道利用への転換が盛んである。
 
武漢で稼働する中鉄伊通物流
武漢で稼働する中鉄伊通物流
伊藤忠はこれまでも中国で、資金とノウハウを提供し、産業としての物流、そして優秀な専門の人材を育て上げてきた。
その成果の一つでもある北京太平洋物流有限公司(一九九六年稼働)とその子会社に当たる広州忠達物流有限公司(同年稼働)などといった国内物流拠点は、「自動車関連の製品以外に家電、精密機器などの生産財のほか一般生活資材を取り扱い、工場や大手量販店への共同配送などのかたちで、流通コスト引き下げを率先して実現するモデルとなった」(野村部長)。
もう一方で、伊藤忠はもともと関係親密なパートナー的存在、「康師傅」ブランドの頂新国際集団と共同で集配送のシステム開発に乗り出すなどの具体化も急ぐ。
鉄道輸送インフラの活用による国内広域自動車物流サービスの展開は今後も軸として進める方針だが、将来的には、自動車物流以外の分野でのモーダルシフトの積極展開も視野に入れている。
  日本郵船編
国内物流に本格参入
乗用車などの海陸一貫輸送整備が軸
日本郵船(NYK)が中国大陸をまたにかける勢いで、本業の海運業と連携する物流のニュービジネスに手を染めている。その輸送対象となるブツは乗用車。自動車輸送で世界最大の経営規模を誇る同社だが、中国で、完成車と部品を含め、外国企業が海陸一貫する輸送体制を構築するのは初めての例となる。
日本郵船はすでに2年前、中遠集団(COSCO)とNYKCOS(広州)を合弁で設立し、内航船による完成車輸送に参入するとともに、遼寧省瀋陽市を拠点とするNYK ULSを昨年九月に設立し、現地生産に入ったBMW車を、陸運を含めて一貫輸送するシステムを立ち上げている。
さらに、これらと並行するかたちで港湾経営に参画。上海市浦東新区外高橋の上海ROROターミナルに五%の出資を果たしたほか、大連でもこのほど、〇六年稼働を目指す自動車専用ターミナルを建設・運営する合弁企業を設立した。
同様の計画は天津でも進められている。輸出入だけでなく、地場市場向けの国内輸送を意識したプロジェクトが多い。
上海を本社とするNYK  Logistics(China)=NLC=は上記の各合弁会社を活用・連携し、自動車工場とカーディーラー・港湾、また部品メーカーと直結する陸上物流網の確立を目指している。
NLCの服部浩董事長兼総経理は「日本郵船はもともと完成車の海上輸送で実績をつくってきた会社だが、物流事業部門は他の先行企業と異なり規模も小さく、なお揺籃(らん)期にある」と控えめに語る。しかし、日本郵船の本社も中期計画にコアビジネスのひとつとして物流の強化を盛り込もうとしているように、現地法人としても、今後の経営の柱として、自動車産業の発展を見据えた国内物流システムを確立したいと強調する。
NLCの服部浩・董事長兼総経理と吉田明博・市場開発部総経理
NLCの服部浩・董事長兼総経理と吉田明博・市場開発部総経理
広大な規模を誇る上海ROROターミナル
広大な規模を誇る上海ROROターミナル
そのため「日本へ向けて提供してきた、リアルタイム輸送などのサービスを中国に取り入れていく」とし、調達部品と完成車の輸送、補修部品の供給を具体化していく。一般に、乗用車一台は二万五〇〇〇点以上の部品から成り立つ。さらに関連産業を含めれば、自動車産業がはるかに裾野の広い産業であることは明白であって、基本的に自動車を軸にすえた展開になることを見込む。
しかし、同社は、先行き従来からの主力分野である家電、OA機器、機械、また素材といった一般消費財あるいは生産財も含めた総合的な物流システムを構築するデザインを描いている。

豊田通商編
定着したミルクラン
華東で究極のコストダウン追求体現
「そんなこと、できるわけがない!」。豊田通商が北米他で行っているミルクラン(編注 : 生乳の巡回集荷に似た物流方式。通常、発注側メーカーが行う)を導入しようとして自動車部品を作る中国地場メーカーを訪問し、協力を依頼した際、先方の担当者は開口一番、拒否反応を示した。
毎日何時何分までに部品を生産し、出荷の準備を済ませておくトヨタ流ジャストインタイムの一端がまったく理解できなかったからだ。
しかし、いま上海地区では自動車部品メーカー二〇社が、多いときでトラックによる一日二回の集荷を受け入れている。ルートは五本あるが、最遠隔地は浙江省寧波市。一回で天津トヨタ汽車において生産する小型車「ヴィオス」二〇〇台分の部品を満載して集める。天津では各部品について四時間分の在庫しか持たない--- 。
自動車部品関連の物流事業といったら豊田通商、である。トヨタグループの商社として、まさに中国での現地生産の拡大を物流の面から一身にサポートしている感がある。
そのトヨタは広州市南沙でエンジン工場を立ち上げるが、豊田通商もそれらの展開に応じ、華北から華南までカバーする体制を整えつつある。しかし、今回は実際にいま稼働している上海周辺でのミルクランに絞って、興味深い詳細を聞いた。
豊田通商は、天津地区と並びトヨタ系メーカーが集中する上海地区で集めた部品を、次は、専門的に「クロスドッグ」と呼ぶシステムで上海市内のセンターで梱包し直し天津トヨタに供給する。天津まで三八時間かかるが、コストが高いとして、北京│上海間を結ぶ京滬高速道でなく一般国道を延々走るところがトヨタ風か。
「コストダウンに代表される物流の効率化は、現時点ではこのシステムがベストな対応」と豊田通商(上海)有限公司の田中英規董事総経理は説明する。ミルクラン

ミルクラン効率化に知恵を絞る毎日の豊田通商(上海)有限公司の田中英規董事総経理ら
ミルクラン効率化に知恵を絞る毎日の豊田通商(上海)有限公司の田中英規董事総経理ら
にしても、どの回り方が最も効率的か、何度もマッピングと調整を繰り返した結果である。日本だけでなく、北米、タイ、欧州、また南米のブラジルと、トヨタ車を生産するそれぞれの現地で培われた「二十年来のノウハウ」(豊田通商物流部物流事業グループ・原弘毅氏)という。
陸送中、事故などの異常事態にすぐ後続便が出せるような迅速な対応も必須。それもこれも、すべては「生産ラインが止まらないように」との配慮からである。
中国では冒頭で紹介した地場メーカーのように、異文化に触れるかのごとき受けとめ方もされたミルクラン。ところが以外なことだが、クロスドッグは片道のみで、帰路はカラである事実が憂慮されている。「将来的には、華北製の部品を積んで帰ってくることもありえる」と田中総経理は期待をつなぐ。トヨタ流コストダウンにジ・エンドはありえない。

日本通運編
中日間「海上の道」
日本で積み替え配慮しドアツードア
トレーラーシャーシー積み込み中のSSE
トレーラーシャーシー積み込み中のSSE
白熱化する自動車輸送の話題とは離れ、中日間の距離を短縮した日本通運の「上海スーパーエクスプレス」(SSE)の活躍ぶりに触れたい。なんといっても、あのJRコンテナ(一二フィートコンテナ)をそのまま海上コンテナ同様に積載することも可能であるなど、輸出仕向け地がほとんど日本だけの生産企業にとっては朗報となった。
SSEは上海・外高橋港と福岡県の博多港を直結し、二七時間という従来の半分の所要時間を実現した高速RORO船である。航空便よりコストが安く、荷役もごく短時間で済む。しかも、博多港において日本国内を運航する内航船やトラック、また鉄道とのシームレスな接続も容易である。
たとえば、九州地区では博多入港日当日の午後、関西・中部・関東の各エリアも翌日配達が可能だ。華東地区から東京に向けてのコンテナは通常八日かかる
が、SSEであれば四日の所要となる。
そういった観点からすると、「ドアツードアで日本全国につながり、国内輸送の延長を実現した」との飯塚哲男・上海通運国際物流有限公司董事総経理の説明もうなずける。また実績から、中国を代表する経済都市である上海と、同地にいちばん近く、日本におけるアジアからの玄関口・博多港を「あえて選んだ」結果はまちがいではなかったようだ。
昨年一一月の就航以来、現在週二便の運航で、上海から博多向けの一航海あたり平均約七〇FEU(四〇フィートコンテナ換算)の積載となっている。これから秋のピークシーズンに向けて満船(一二一FEU)となることを期待する。
上海通運国際物流有限公司の飯塚哲男・董事総経理
上海通運国際物流有限公司の飯塚哲男・董事総経理
「消費者マーケット向けの雑貨や日本で最終組立を行う中間品などがどんどん運ばれている」(飯塚哲男総経理)のが現状。積荷の種類として多いのは、OA機器や白物家電、繊維・アパレル製品など。いずれもライフサイクルが短い商品で、売る側からすれば在庫リスクを低めることが必須の足の速いものばかり。 こういった輸出入業者に貢献するSSEは、住友商事と日通が四〇%ずつ、商船三井が一五%、上組五%の出資比率で設立した「上海スーパーエクスプレス」が運航する。住商、上組とも華東地区では独自の物流網を構築しており、それに日通と商船三井が加わり、中日両国における陸運ネットワークと直結した快速サービスを実現した。
日通は、SSEとは別に、すでに需要家の集中する上海市内に加え、蘇州、昆山、無錫、常熟の各地にある電子部品メーカー六八社を網羅し、外高橋港と結ぶ独自のミルクランをスタートさせていることから、単なる外航船の就航のみにとどまらない、システマチックな物流サービスの構築を目指していることが見て取れる。

ジュピター編
隠れた国際物流
ハンドキャリー
中国大陸をまたにかけた、きわめて大規模な物流システムの構築が進む一方、どっこい古典的かつシンプルな物流サービスが改めて脚光を浴びている。ハンドキャリーサービスである。日本航空が主体となって香港に設立したジュピターグローバルリミテッドは、世界のネットワークを組織したうえで、このハンドキャリーを「隠れた主要事業」として位置づけている。
ハンドキャリーは、要するに旅客個人名義の手荷物として、航空便により商品サンプルやパーツなどを運ぶことである。
ジュピターはもともと重要書類を携行輸送するオンボードクーリエ(OBC)のサービスのひとつとしてハンドキャリーをとらえていた。同社はれっきとした国際フォワーダーであり、貨物上屋を有し、エアカーゴを主柱とする一般貨物から総合
物流までのトータルサービスを売り物にする。
しかし、世界の五三都市に展開するネットワークを使い、この方面の事業拡大を図ってきたことで、ハンドキャリーも徐々に業績を伸ばしてきた。専門業者として最初に広告も出稿し、同事業の第一人者とみなされている。
マーケットとしては日米間が主。中日両国のあいだはまだこれからといっても、それでも「日本から上海向けだけで月平均一〇件の硬いビジネスとなっている」とシャンハイジュピター・インターナショナルフォワーディングの野々山純一副総経理は言う。
なんといっても信頼度が高い。ジュピターが委託するクーリエはほとんど日航OB。通関などの実務に精通し、外国語に問題もない。また以前は、発注を受託する側のクーリエ候補者は常時関係国・地域のビザを取得していた。
「ノウハウが違う」と野々山副総経理。こういったニッチサービスに付き物の利用者のリスキーな部分がないことが、事業を継続させてきた大きな資源となっている。
商品を預かり受託クーリエの出発=成田空港で。ジュピターグローバル提供=
商品を預かり受託クーリエの出発=成田空港で。ジュピターグローバル提供=
ウォーカーチャイナ今月号
巻頭インタビュー
特集
Business Event Schedule
Business Scene
企業レポート
連載
中国ビジネス相談Q&A
私も起業家
知的法講座
China Economic Review「全国」
China Economic Review「上海」
その他
上海、北京、中国全土の広告掲載について
ウォーカーオンラインではバナー及びテキスト広告スペースを用意しております。
広告掲載ガイド 掲載の受付