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特集 日系化粧品業 次の一手
  高級化・多チャネル化鮮明
                  品質追求、肌の違いにこだわる

世界の化粧品メーカーが、ここ半年、続々中国市場への本格的な取り組みを開始している。主に、対面販売であるプレステージ商品の多チャネル化を軸
に、「中国専用商品」をラインナップに加えたりして本来の高級化路線をひときわ鮮明にする一方、ミドルマスと呼ばれる中流大衆層への新規参入を具体化したりしている。思えば日系を軸に、この業界こそ、ごくごく初期に中国を市場としてとらえて進出を果たした。市場熟知の度合いはきわめて高い。年末、中国は外資に対する小売市場の全面開放を決めており、化粧品業界は中国ビジネスの先達として、もはや第二、いや第三のラウンドに突入する勢いだ。
  かわせるか欧米系猛追
                販路整備に合わせ普及品市場参入も
北京や上海などで外資系デパートをのぞけば分かることだが、その一階のフロアはほとんどが化粧品や高級アクセサリーのコーナーになっている。一部にオートクチュールの専門店やシューズコーナーが入り、いやがおうにも女性が消費の主役であることをアピールする。
もともと、国営デパートが主だった中国の小売業界を流通システムごと一変させたのが外資デパートであり、続いてスーパーマーケットやコンビニエンスストアがその道を徹底して拡大した。一連の過程で、テナントや品揃えの中心に、化粧品や香水、あるいはスキンケア商品がおさまったのもごく自然だった。そういう意味から言えば、化粧品業界の進出が開放へ向かう中国流通革命にとっての象徴だったともとれる。
日本の化粧品業界は、一九八一年、まず資生堂が輸入商品の販売を始め、八八年にはコーセーが合弁工場を建設、そして九二年、カネボウが販売を開始した。すでに現地生産による「オプレ」(資生堂)、「アクア」(カネボウ)、「アヴニール」(コーセー)などがあり、プレステージ商品を軸に、高級デパートから量販店にも販路を広げている最中である。
しかし、市場開放度が高まるにつれ、さらなる需要拡大を見込んでいるのは欧米系も同じ。いや、かえって昨今は欧米系化粧品業者の動きの方が活発に見える。
仏ロレアルは昨年一二月、中国の著名国内ブランドだった「小護士(ミニナース)」を買収していたが、四月八日、その存続させたブランドを使い、新たにスキンケア商品シリーズを発売した。ミニナースは九二年に誕生、中国三大スキンケア商品の一つとして、五%の市場シェアを有していた。
ロレアルは九六年に市場参入したが、LOREAL以外にLANCOM、VICHY、またMAYBELLINEといった一〇種類もの国際的ブランドを市場に投入。中国市場での昨年の売上高はグループ全体で一五万元。前年比約七〇%の増加だった。このミニナースの買収直後、米コティグループ傘下にあった地場ブランド「羽西(Yue‐Sai)」=羽西‐科蒂化粧品(上海)有限公司=を買収したことで、これまで苦手としていたミドルマス市場を直視した、その業容拡大戦略が明確化した。
また、米P&Gの存在が無視できない。中国市場でも、根強い人気のSKUと玉蘭油(OLAY)の両ブランドを擁するが、ロレアルが攻勢をかけるなか、有力な地場ブランドの取得が今後の発展を占う鍵となる。
また、同じ欧米系でも、エスティローダーは、そのアジア太平洋地区本部をシンガポールから上海へ移し、既設現地法人である怡佳美容用品(上海)有限公司を軸に、中国での高級品市場の開拓にいっそうの弾みをかける。同社もすでに一〇年前、上海に初の専用カウンターを設けて以来、「雅詩蘭黛(エスティローダー)」および「倩碧(クリニーク)」の両ブランドをもって、全国十余りの大都市に四三ヵ所の売り場を開設した。
中国の化粧品市場は数年前に韓国を抜き、日本に次ぐ市場規模となったが、上海万博が開かれる一〇年には、出荷ベースで日本と同規模の一兆四〇〇〇億円程度になると見込まれる(立花証券「立花月報」〇三年一〇月号より)。その後も伸び続け、アジアで最大、世界で第二位の市場となる勢いは、だれにも止められまい。
  ■花  王
的を絞っての展開着々  プレステージの「ソフィーナ」
                                         土屋芳視 花王(中国)投資有限公司副総経理
 
 
欧米化粧品メーカーの対中戦略が激しさを増しているなか、日本勢として最もホットな動きを呈しているのが花王である。全額出資の現地法人花王(中国)投資を設立し、この三月からプレステージ化粧品「ソフィーナ」の展開を上海で始めたばかりだ。
「日本からの最後発として進出した。初めての中国、上海圏で事業の基礎を作り、一年ぐらい勉強してから、エリア拡大を含めた本格展開を図る」。花王(中国)投資有限公司の土屋芳視(よしみ)副総経理は、謙虚な姿勢をにじませ、淡々と抱負を語る。
中国市場では、すでに一〇年も前から家庭用品を現地生産し、販売していたが、もちろん化粧品としては処女地である。しかも、重症急性呼吸器症候群(SA

「基本ケアは寒いところでのニーズが高い」と、北上戦略をほのめかす土屋芳視・花王(中国)投資有限公司副総経理
  RS)騒ぎがなければ、昨年一〇月にはスタートする手はずだったというから、半年遅れのデビューはさぞや痛く響いたに違いない。
ソフィーナは、本来家庭用品メーカーだった花王が一九八二年に送り出した自信作だ。海外展開のうち出遅れた感がある中国本土だが、初年度まず上海およびその周辺都市の拠点で、直販による小売りに入る。計画しているのは上海市内と南京(江蘇省)、杭州(浙江省)などでの一〇店舗。じっくりと攻める手法により、二〇〇七年度までに、大都市の高級デパート五〇店舗で売上高一〇億円を目指す。
商品は、土屋副総経理が「他社はメークアップなどを含めたフルセットだが、花王は基本的にはスキンケア中心」と言うように、シリーズのラインナップを洗顔類、基本ケア、スペシャルケアなどの三一アイテムに絞った。
小売価格は平均二五〇元と設定し、都市部に住むおしゃれに関心の高い二五〜三九歳の女性を主なターゲットとする。すでに基本ケアのアイテムはしっかりとした手ごたえが感じられるという。
上海における第一号店となった静安区の梅龍鎮広場では、自社開発の「肌診断機」を導入し、同社ではビューティーアドバイザーと呼ぶ美容部員が個々の客に最適の製品を選び出す。
ソフィーナは日本でも直販にこだわり、しかもアドバイザーの指導による販売を貫く。「なんといってもイメージが大事。直販が大事だ。売れればいいとマスを対象にした売り方では、容易に商品のイメージが壊れる」と強調する。
もともと、しっとりがいいとかさっぱりがいいとか、スキンケア商品に対する好みや適不適は個人によって大きな差異が
 

梅竜鎮伊勢丹店内のソフィーナ専用カウンター
ある。夏と冬といった季節による違いも大きいが、それに加えて広大な国土を持つ中国では、大雑把に言って北方と南方とでは気候や風土が全然異なるもの。そのためにも、対面販売は欠かせないと見る。
「中国の化粧品市場は、まだ日本の三分の一〜四分の一程度の規模に過ぎないものの、近年は二桁成長しており、一〇年には日本に追いつくはず」と土屋副総経理。
「もう伸びがなくなり、市場シェアの取り合いに変じた日本や欧米市場の状況に引き換え、中国はまだまだこれから。市場は大きいし、最後発のわれわれでも、ある程度はやっていける」と、控えめながらも確信に満ちた気構えを示し、しめくくった。
 
■資生堂
トップ狙い五〇〇〇店 投資会社を創設し全国再構築
                                                       宮川 勝 資生堂(中国)投資有限公司副董事長
中国における新たなビジネスモデルの構築を目指し、化粧品専門店を中国全土で展開している資生堂は、一〇〇%出資の持ち株会社「資生堂(中国)投資有限公司」を年初、上海に設立した。中国の既存事業と専門店展開を含む新規事業をより強力にバックアップする要と位置づけている。
資生堂(中国)投資の宮川勝副董事長によると、同公司開設の狙いは資生堂の中国事業のすべてを管轄し、今後の新規事業を投資会社として推し進めることにある。昨年九月策定の五ヵ年計画は、具体的には北京と上海の既存企業二社(資生堂麗源化粧品有限公司、上海卓多姿中信化粧品有限公司)の管理強

ボランタリーチェーンの店舗の一例。統一された内装と高い水準の応接マナーが基本
化とともに、専門店の全国展開が主眼と位置づける。
資生堂麗源は主に高級デパートで売るプレステージブランドの国内直営展開を手がけ、三月には直営一号店が北京にオープン。五月下旬には上海にも出店し、一〇年間で二〇〇店まで拡大する。また上海卓多姿中信は契約による専門店、またスーパー・ハイパーマーケットを照準にミドルマス・ブランドの展開を進める。二〇〇八年までに、契約専門店を主として店舗総計は国内最大規模となる五〇〇〇軒の店舗網となる。
同五ヵ年計画は、これらの成果により、同年、中国事業における売上高は現在の約五倍の一〇〇〇億円を目指すという遠大なビジョンを描く。しかし、宮川副董事長は、中国でビジネス展開するロレアル、エスティローダー、P&Gを加えた世界四大化粧品会社の一角にある資生堂として、まさに実現可能な規模であると強調する。
事実、五〇〇〇店化に向けての取り組みはこの四月から始まり、浙江省内の八店舗整備を皮切りに、年内にはまず二〇〇店がそろうことが確実だ。
専門店網はいわゆるボランタリーチェーンで、店舗内はというと、幅四・四メートルのコーナーを確保し、資生堂のロゴなどのPOPを施したうえ、統一したレイアウトを完備する。さらに、統一の徹底はこういったハードウエアだけでなく、ソフトウエアの面にも及ぶ。店舗経営者にノウハウを理解してもらうとともに、専従者を雇用し、資生堂式の応接マナーを身に付けるよう資生堂(中国)投資によるトレーニングを受講させるといった具合である。
宮川副董事長は「ハイイメージ、高品質、ハイサービスの三つを指して三高ビジネスと呼ぶが、スキンケア商品はリピート率が高く、これを追求していかなければわれわれの発展はない」と言い切った。

宮川勝・資生堂(中国)投資有限公司副董事長
全国展開のなか、武器となるのが主に上海で生産する中価格帯の商品「ゾートス」シリーズだ。これに中国専用化粧品ブランドとして成功したプレステージ商品の「オプレ」シリーズが加わる。オプレはイメージモデルに人気女優の趙薇(ビッキー・チャオ)を起用しているが、〇八年までに三〇〇億円規模のメガブランドへ育成する。ゾートス、オプレと、いずれも五ヵ年計画の中核ブランドにすえている。
「中国国産のオプレは国民ブランドとなり、北京五輪の公式化粧品にも認定された」と語る宮川副董事長。いま、かつて主流だった輸入品の比率は全体の半分にまで落ちているが、目指す中国一のため、舶来の高級イメージを維持しつつも、こういったブランドの現地化も必須であるようだ。
■コーセー
現地専用商品開発が軸 次の一五年に向け地ならし進行
                                                           長浜清人 高化粧品有限公司董事副総経理
コーセーは一九八八年一〇月、外資として初めて中国で化粧品の現地生産を開始した。一五周年目のことし、「次の一手」どころか、二手も三手も先を読んでいる。
三月、東京の本社に海外R&D戦略室を設立した。六月初旬にはこの分室を上海に開設する。また九月には、浙江省杭州市内にある合弁の高絲化粧品有限公司の本社部門を杭州経済技術開発区の新工場に統合、マーケティングと営業・企画部門を上海に移管する。同時に、かつては初期の生産工場を兼ねていた創業の地である本社施設を倉庫に変え、本格的な物流拠点とする。
同社はこれに先立ち、昨秋、台湾高絲(台湾コーセー。一九八四年設立)を全額出資の独資子会社に切り替えた。世界戦略のなかで、現地化と高収益化重視に向けた一連の編み直しが台湾地区でも進んでいることを示している。

「高級品の品揃えが鍵」と説く長浜清人・高絲化粧品有限公司董事副総経理
高絲化粧品は昨年九月一日付をもって、旧来の春麗絲有限公司から改称。これより先の九五年には、出資比率を五〇:五〇から九〇:一〇に引き上げた。
昨年の売上高は六〇億円で、前年比一二〇%増と好調。しかし、最高だったのは九八年で同七〇億円。長浜清人董事副総経理は「当時ミドルマス狙いで九五%が中価格帯商品。その後、『雪肌精』の輸入開始やイメージ重視に転換するとともに市場整備に入り、二〇〇〇年三月、デパート専用の『アヴ二ール』、続いて〇二年九月から高級化粧品『エクスノーブル』と、両シリーズを導入した成果」と説明している。
また、今回の上海シフトは、設立済みの高絲国際貿易(上海)有限公司が中核の位置づけとなるが、「R&D戦略分室では、スタート時、日本からの常駐者三人が中国向け商品の研究開発に専従するほか、原材料生産の検討や技術移転を進めることになる」と長浜副総経理。上海は情報収集の面で利点があるばかりか、マーケティングを進めやすい。さらに、意外なことだが、化粧品の容器などの調達にも利便が高い。
化粧品の開発はたいへん精密な処方(フォーミュラー)づくりが要求される。「水が変われば同じものなどできない」とか。「これまではただ日本人に合ったものをと進めてきていたものの、今後中国では北は北、南は南とその違いに合わせた商品を作り出していく」と強調する長浜副総経理は、この地域差を踏まえた今後の商品展開について、あくまで一

生産拠点としての重みを増す開発区内の新工場
部のみと断りながらも、詳述した。
まずノーカラーファンデーション。四月から発売を始めたが、日差しをさえぎり、紫外線を防ぐ効果がある。これは、ずばり南方中国向け。これまでファンデーションは南方では使用されていなかった。また今秋ボディエッセンスを発売する。これは北方中国向け。乾燥による肌のかゆみを取り除き、しっとりした潤いをもたらす。長浜副総経理は「そもそも南では必要ない商品」と断言した。
創業一五年。最初の一〇年は、品質のいいものを作って売れば、それだけでなんとか売れた。続く五年。競争も激しくなり、どうマーケティングを進めるかに悩みながらのものだった。そしてこれから。「R&Dにより、どのように専用商品を開発していくか。それが重要です」。
■メナード
訪販に代わり密着直販 マス追わずユニークな存在鮮烈
                                                  桑原 壽 蘇州美伊娜多化粧品有限公司董事総経理
訪問販売を中心とした展開で、化粧品業として世界五〇強にランクインする日本メナード化粧品。中国では手法を変え、代理店を通した流通から、いま直営による店頭販売に転換、全国で五〇余りの都市に百六〇ヵ所を超す専用カウンターを設けるまでに至った。ただ、会員制の推進強化など、メナードらしいその独特のマーケティングは随所に目立ち、日系化粧品業の一角という定位置の座を揺るがぬものとしている。
中国進出のそもそもがユニークだ。蘇州百美化粧品有限公司は一九九四年一月、メナードや旧ヤオハン・グループ、また中国側企業などの六社とともに、対日輸出を主目的とするメーカーとして、合弁(中国側出資比率二〇%。現在日本側独資に)により設立された。その翌年、新工場が稼働し、本格的な現地生産と一部製品の国内流通に着手した。
当時は得意な訪問販売による業容拡大を進めていたものの、中国では訪販業がマルチ販売と同一視される傾向が募り、三年後の九八年三月、ついに政府の禁止措置を受け、完全な店頭販売に転じた経緯がある。ただちに代理店網の構築に入り、全国で六〇店舗のネットワークを立ち上げたものの、その後種々の問題から、直販を重点に置く経営に転じている。
のちにメナードの全額出資で設立された蘇州美伊娜多化粧品有限公司の総経理を兼ねる桑原壽・蘇州百美化粧品有限公司董事総経理は「いやもう、もし政策転換で訪販が解禁されたとしても、当社はもうやりません」と明快だ。「マーケティングの基本は変わらない」として、今後とも店頭販売を軸に中国国内市場に浸透を図るかまえだ。
同時に専門店化は欠かせない。現時点で八〇%が直営で、残り二〇%が代理店の関連によるもの。前者は今後とも増加させる方向での機軸が確定している。
メナードの顧客層のターゲットは比較的はっきりしている。「中国人女性の化粧品消費はパーセンテージが高い」状況のなか、商品単価で一〇〇元以上の商品が九八%。この価格帯の商品を日常買える層は限られているが、桑原総経理らの調査によれば、その顧客層は「OL、教師、医師、公務員が多い」という。
「愛用者管理をしっかりしないといけないのは、店頭販売も訪販とも同じ」という。会員のリストつくりはもちろん、顧客に「浮気」が起きないよう、繰り返してのコンタクトは必須だ。こういったきめ細かな営業努力があってこそ、他の大企業に伍

桑原壽・蘇州美伊娜多化粧品有限公司董事総経理

蘇州高新技術開発区の生産拠点、蘇州百美化粧品有限公司
しての中国市場参入が実るというものだ。
一方、生産拠点となっている蘇州高新技術開発区の蘇州百美化粧品は生産能力ぎりぎり。二〇〇〇年までは毎年秋冬がシーズンだったが、いまはそんな時代ではない。すでに月に一〇万個前後のリミットに達している。「生産については、ことしはなんとか乗り切れるだろうが、設備の更新について、ことし中に拡張計画をまとめなければならない時期に来ている」と桑原総経理は言う。さらに、全国に張り巡らされた物流システムの再構築も必要となっている。
経営目標として、桑原壽董事総経理は「一定の規模に達するであろう二〇一〇年、売上高七億元の目標は達成できるはず」と強調している。
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