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連載
新連載 中国で売る! 第1回
 
中国が製造拠点としてだけではなく、消費地帯として捉えられるようになって久しい。13億人、沿岸部だけでも4億5,000万人の巨大な市場が広がる。WTO加盟5年目を迎え、国民所得のさらなる向上が見込まれる本年、日系企業は中国人民にどう売り込むのか?消費財メーカーの取り組みを連載する。
中国の食品市場は、少子高齢化で頭打ちの日本市場と対照的に急拡大している。たとえば二〇〇四年の即席麺の年間消費量は四八〇億食と、九七年の一四七億食の三倍強。一人当たりでは二〇―三〇食と、日本の五〇食や韓国の七〇食を下回るが、人口の多さで市場は大きい。しかしその分、現地企業だけでなく外資の参入も活発化して競争は激しい。加えて、一食三元以下の地元系の外食に対抗するためのコストダウンも求められる。こうした状況下、日系企業はどのように製品を浸透させているのか。
ターゲットの限定で売上拡大
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表@2004年即席麺の企業別売上高・生産量

各社に共通するのは、日本の味をそのまま持ち込まず調査を重ねて中国人向けにアレンジしている点と、中高所得者をターゲットにしている点だ。  
たとえば日清食品(中国)投資有限公司は、数百社のメーカーが乱立する即席麺市場で、拡大路線から販売地域を絞る戦略に切り替えた。同社は九六年に市場参入し中国全域での展開を打ち出したが、農村部で苦戦。物価の安さに、主力とする小売価格四・二元のカップ麺が太刀打ちできなかった。袋麺、カップ麺を合わせた年間消費量四八〇億食のうち、半分は一元以下で売られている。これに合わせるには、物流コストや小売りマージンを勘案すると〇・五元以下で製造しなければならない。しかし外資の場合は、人件費や、沿岸部での製造によるエネルギーコストがかかり難しい。  
このため上海日清は、上海、江蘇省、浙江省のホワイトカラーにターゲットを絞った。製品別ではカップ麺を強化。中国ではまだカップ麺の比率は五%未満だが、「屋外でも食べられるし手軽。伸びが期待できる」(佐藤弘徳・董事、総経理)とみて、同社のカップ麺と袋麺の比率を八対二にしている。一方、地方向けには、中国の即席麺製粉メーカー・河北華龍麺業集団有限公司に出資して〇四年に設立した華龍日清食品有限公司で手堅く展開している。こうした戦略の結果、日清の中国における生産量は〇三年の三億食から〇四年は二・八億食に減ったにもかかわらず、売上高は四・六億元から五億元に増えた(表@)。  
ターゲットを絞るとともに品質面の強化も視野に入れる。今年一〇月に乾燥野菜などの残留農薬、抗生物質、微生物を検査する安全研究所が中国で完成する。日本輸出向けだが、「中国側もこうした点を重視するようになるだろうから、いずれは中国向けの検査事業も立ち上げる予定」(同)だ。

地域特性を重視
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表A2004年国別ビール消費量
競争が激化している市場という点ではビールも同様だ。中国の消費量は〇三年以降世界一位で今後も中長期的な成長が見込まれる(表A)が、すでに世界の大企業が入り乱れている。こうしたなか麒麟(中国)投資有限公司は、東北、長江デルタ、珠江デルタの三地域に経営資源を集中させる戦略をとっている。  
年率一五%の市場拡大が見込まれる珠江デルタでは、昨年末に麒麟酒(珠海)有限公司を完全子会社化して、新工場の建設に着手。〇七年の竣工後は、製造能力が既存の一〇万キロリットルから二〇万キロリットルに倍増する。新工場稼働後は、引き続き現地ブランドビールや、一番搾り製法による「麒麟純真味酒」の拡売を目指す。一連の投資額は一〇〇億円に上る。  
東北は、成長率が高く寡占化が進んでいないとして重視。グループ会社の大連大雪酒有限公司で現地ブランドのビールを製造・販売している。〇四年一二月期の販売量は一八万キロリットルと珠海の九万キロリットルの倍。
長江デルタでは、日系市場や高級ホテル向けに「一番搾り」を販売。現地市場向けには「麒麟清醇」を開発し、〇三年から販売している。  
中国人は一般的に、苦くなく薄い味のビールを好むが、「地域によっても異なるので、今後もさらに消費者調査を重ね、地域特性に合った事業展開をしていく」(阪崎史郎・董事、副総経理)方針だ。
日本の食文化を中国人に広げる
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日式カレーの試食販売に興味津々
一方、すでに市場が確立され選別段階に入っている即席麺やビールと異なり、新たな食文化を浸透させる場合は、幅広くアピールする戦略がとられている。  
上海好侍食品有限公司は昨年四月、カレーとご飯を一緒に食べる「日式カレー」として、中国初の固形カレーを発売した。製造に際しては日本の「バーモントカレー」をベースに中国人の味覚調査結果を加味。シンプルで食べやすい味にし、色は中国人がカレーと聞いてイメージする黄色にした。アピールのため、昨年はテレビCMを放映したほか、小学生九〇〇人を工場見学に招待し、店頭では三〇万人に試食販売を実施した(写真)。  
この甲斐あって、ターゲットとする都市生活者の認知度は発売九カ月で七〇%近くに達し、〇五年の販売量は計画比二ケタ増を達成した。〇六年は二〇〇万人に試食販売を実施する予定で、販売量は「〇五年の三倍を計画している」(渡辺健・上海好侍食品董事、総経理)。
固形カレーに先立ち、上海好侍味之素食品有限公司は〇二年一〇月にレトルトカレーを発売。「中国人は具材に価値を求めることが分かったので増量」(西隆司・上海好侍味之素食品副総経理)するなど改善を重ね、現在は一一種類を製造。販売地域は上海、北京、広州の三大都市から青島、大連、蘇州など周辺都市まで広がっている。
また、上海好侍客客壹番屋餐廳有限公司は上海で直営カレーレストランを展開。顧客の中国人比率を現在の六三%から七〇〜七五%に引き上げるほか、「近年中に一〇店舗展開し、同時に他地域にもフランチャイズで一気に展開する」(寺脇徹・上海好侍客客壹番屋餐廳総経理)予定。固形、レトルト、レストランの相乗効果で日式カレーを中国に根付かせる狙いだ。
拡販方法が課題
ただし課題もある。従来のように中国で製造して日本や第三国に輸出するのでなく、中国人に売る際にポイントとなるのは「どのようにして売るか」だ。この点では、日系企業の多くがまだ苦慮している。  
まず販促費が高い。CMを流すには多額の費用がかかる。問屋からは製品を店頭に揃える代わりにCMを流すことを求められる場合があるが、「店頭にない地域でCMが流れても意味がない。どちらを先にするか」(食品メーカー)が悩みどころだ。
また、スーパーなどに新たに製品を置く際は、多額の入店料が必要になる。同じ製品でも重量などの変更でバーコードを変えると、再度入店料を払わなければならない。加えて特売の際に別途、支払いを要求されることもある。対処するには「商品力、ブランド力を高めて交渉力を強めるしかない」(同)。
売掛金の回収も多くのメーカーが頭を痛める問題で、出荷停止措置に追い込まなければならなかったケースもある。
こうした課題を克服しながら、食品メーカー各社は、少しでも広い棚を確保し目立たせるために、同種の品で多様な味を開発・発売するなど、拡販にあたり様々な工夫をしている。
今後、中国では国民の生活水準の向上で、味や安全性といった食品に対する要求もますます高まることが予想される。日系企業は、こうした需要に対応しやすい。また、日系の参入余地の大きな加工食品分野では、小麦粉や野菜など様々な農産物を使うため、三農問題の解決に貢献できるという見方もある。日系食品の市場への浸透は、中国の食生活だけでなく社会構造にも変化をもたらす可能性がある。
 
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