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巻頭インタビュー
「強い組織」を基盤に国際競争を勝ち抜け!
ヘイ・コンサルティング・グループ グローバルディレクター 堀江徹氏

 
  海千山千のグローバル企業が真剣勝負で挑む中国市場で日本企業はいかに闘うべきか――。シビアなグローバル市場競争に勝ち抜くための「強い組織」構築とビジネス戦略の実現をテーマに経営ソリューションを提供する世界的に著名な米国企業ヘイ・コンサルティング・グループ。商社財務のエキスパートから経営コンサルタントに転進して7年、グローバルマネジメントのプロフェッショナルとして「真のグローバル化」に挑む日本企業に数々の提言を行う同グループ日本企業担当グローバルディレクター・堀江徹氏は上海から全世界の日本企業担当チームを統括する。  
 
 
もともとの堀江氏の専門は財務。シンジケートローンのアレンジや、国家機関からの資金調達など商社ファイナンス担当として数々の大きなプロジェクトに関わったという。2000年のこと、帰任の辞令が下った。日本にもどってファイナンスのエキスパートとしての道を歩んでいく選択肢があったが、敢えてコンサルティングの世界へ。「めざましい発展を続け る中国をこの目で見続けていきたかった」(堀江氏)

プロフィール
大阪府出身。早稲田大学卒。住友商事の財務担当としてロンドン、上海などに駐在する。2000年同社を離職、その後、経営コンサルタントに転身し、リーダーシップ開発、組織風土改革、人材育成、人事制度構築等、幅広いコンサルティングに従事する。現在、ヘイ・コンサルティンググループ グローバルディレクター。講演・執筆歴も多い。

 
     
●いまなぜ「グローバルマネジメント」が必要とされるのか
 
  ――「グローバルマネジメント」の構築をテーマにコンサル活動をされています。
 
 
  ヘイ・コンサルティング・グループ グローバルディレク ター堀江徹氏。ロンドン、シンガポール、上海、バンコクと、一貫して海外畑を歩んできた
もともと私の専攻はファイナンスであり、大手商社では財務担当として海外駐在をしてきたのですが、上海に駐在となったとき組織・人事の問題に頭を痛めることとなりました。若い優秀な人材がどんどん転職する、駐在員事務所から現地法人へ会社のステータスを変更し規模を拡大する、自ら考えて稼ぐ組織風土の創造、といった必要性に直面し、あるコンサル会社と一緒になって対策を練ったのです。
いろいろ措置を施していくうちに組織がとても生き生きとしてきた。人がやめなくなり、皆やる気を見せて働くようになった。そして企業の業績も上がる――こうした変化を見たとき組織や人事の仕掛け作りがとても面白いと実感したのです。やがて自身の成功体験をもとに今度は経営コンサルタントとして日本企業の方々のサポートをしていきたい、それが自分ならできるはずだと考えるようになりました。
 
  ――その後、中国は「世界の工場」から「世界への市場」へと変貌しました。
 
  モノ・カネの面では中国市場に賭ける真剣さ、意気込みが伝わってきます。日本企業にとって重要な拠点、中国、東南アジア、欧州、米州という四極のなかでも、まずは中国、中でも上海をグローバル展開の橋頭堡としてとらえる企業が多いようです。それゆえ私自身も上海に本拠をおき、上海からグローバルを統括し、日本を含む世界各地に出張するという形をとっているのです。  
  ――日本企業への警告も盛んに行われています。
 
  かつて職務主義や成果主義が流行り、自分の会社の経営理念や組織風土、戦略のことも顧みず、見よう見まねで取り入れてうまくいかなかったという会社もありました。同じことがグローバルマネジメントにおいても起きているという印象を受けます。
グローバルマネジメントは一種の流行で、東京で我々がセミナーを行うと数百名の参加者がすぐに集まります。ローカルスタッフの意識調査をしたり、各拠点の人員構成を明らかにしたり、資格制度の統一化(GlobalGrading)に取り組む企業も増えてきました。しかし、どうしてこうしたことをやるのか、戦略とどう結びついているのかを把握していないと、問題が続出し後になって解決に困ることになります。
 
     
  ――流行に乗ろうと形だけを追っていてはいけないということですね。
 
  企業のグローバライゼーションにも 段階があります。まず企業が海外に進出 する最初の段階はインターナショナル化 です。あくまで日本を中心にした国際化 です。次にいろんな国・地域で現地のしき たりに従って経営を試みることになるこ とで企業はマルチナショナル化(多国籍 化)します。グローバル化はその先にある 段階です。世界をひとつの市場としてと らえ、最適な事業の分配とは何かを考え ることです。
どのステージにあり、どの形態を目指 すのかは企業によって、また国によって 異なるはずです。モノ、カネの部分では日 本企業はグローバルマネジメントについ て真剣に議論し戦略・戦術を策定してい ます。しかし、ヒトの面ではグローバルマ ネジメントに関して十分に検討されてい ません。
 
     
●できる人材には日本企業は人気がない正しい「ひいき」のマネジメントを
 
  ――ジョブホップの問題は中国進出企業にとって悩みの種です。  
  日本企業が現地の人材にとって魅力 を欠いた職場となっているのは明らかです。優秀な人材となるとその傾向が一段と強くなります。昨年弊社が行った調 査では、働きたい企業ランキングで日本企業は欧米、韓国企業、中国地場企業、台湾・香港地区系企業に及ばず最下位。その原因は、ビジネス戦略に基づく人事戦略、 各人の職責・権限、昇格基準、報酬制度、評価制度、キャリアパスなど、一言で言えば ハード面(制度)が曖昧で合理的な説明がつかないため、上昇志向が強く、制度好きで、中長期的なキャリアを求める中国人の特性には合わないのです。
一方、ソフト面でも、人の選抜や育成、 コミュニケーション、組織風土といったところに焦点は当てられていません。企業の経営理念やビジネス戦略に基づいて 将来を担っていくリーダーの資質や要件を見極め、それに合った人材を早期に選抜して育成していく、といった幹部育成の方法を採る日本企業は少ないため、できる人材にとっては魅力がないのです。 これは中国に限ったことではなく、世界中どの国でも多かれ少なかれ似通って います。
 
  ――新人教育については充実が見られるようですが。  
  「みんなのレベルを一緒に上げていく」という一見理想的な理論に基づいてみんなを一様に報いてしまうと、ダメな人と同じような扱いをされることに耐え切れない優秀な人材がやめてしまう組織風土をつくってしまうことになりかねません。ワーカーレベルで全員の技術レベルを引き上げるというのならわかりますが、スタッフ、マネジャーについては優秀な人をひいきすることが高業績文化を生み出して優秀な人材を引き留めるためには必要になってきます。ひいきというとよくない響きがありますが、優秀な人材をひいきしないのは、優秀でない人材をひいきしていることと同じです。  
     
●「働く場所」としてのブランドづくりを社是社訓は日本企業の十八番
 
  ――人材流出を防ぐには正しいひいきが必要なのですね。
 
 
  ヘイ・コンサルティンググループ日本企業担当チーム(JCS)の本部は上海。そのほかタイ、シンガポール、インド、イギリス(ロンドン)、アメリカ(ニューヨーク)に日本人コンサルタントが計11名滞在、ローカルスタッフとともに日本企業のサポートにあたる



ボーナス、昇給率がポイントになる華南、中・長期的なキャリアパスを重視する上海など地域によって事情は異なりますが、中国人を信じて、選抜し登用していくことを検討してほしいですね。 
某日系ビールメーカーが地場ビールをおさえて上海でトップのシェアをもったのは、商品開発やマーケティング、販売戦略を考える要職に最初から中国人に活躍の場を与えたからです。ある製薬メーカーは、突然ビジネスがグローバル化して対応できる日本人駐在員が殆どいなかったことから背に腹を変えられずローカルの人に任せることとなり、結果的にそれが成功モデルとなりました。グローバル展開で成功するキーポイントが人材登用にあることの良い例かと思います。もちろん、不正防止のための管理体制をしっかりと敷く必要がありますが。
 
  ――トップにローカル人材を据えて失敗したケースもあります。  
  自社の組織風土を顧みず極端な人材登用を行うのではなく、ローカライゼーションには段階と準備期間を設けることがやはり必要です。たとえば五年後にどうするかという幹部登用プランを公表し、それに基づいて人材の選抜、育成を行ってもらいたいものです。  
  ――日本でできたノウハウがグローバルに転化できていないのですね。
 
   働く場所としてのブランディングについても同じことがいえます。たとえば海外の有名大学に対して奨学金を支給している日本企業は多いですが、欧米企業は金額も人数も日本企業に比べると桁違いに大きいです。学生のインターン制度や施設設立といった社会貢献でも欧米企業はPRがうまい。各国の現地の言葉でウェブサイトも整備されています。製品のブランディングに日本企業は熱心ですが、この会社で働くことが魅力あることだという企業のブランディングについてはあまり考えられていないのではないでしょうか。  
     
  ――九〇年代は欧米企業の躍進が目立ちました。
 
  日本企業にとって「失われた九〇年代」はバブルがはじけ、本業の建て直しに追われ、組織・人事戦略ではほとんど何もしてこなかった時代だといえます。その間、リーダーシップの面で進化を遂げたのが欧米企業です。八〇年代はトップダウンによる意思決定が定番だった欧米企業は、ボトムアップやチームワークといった考え方を日本から学び、経営体制に変貌を遂げました。  
  ――日本でできたノウハウがグローバルに転化できていないのですね。
 
  「○○ウェイ」「○○バリュー」といったものはもともと日本企業にとって十八番中の十八番であったはずです。どの会社も経営理念、社是社訓といった文化を大切にし、それによって社員も自身の行動の判断基準を求めてきたといえるのではないでしょうか。ところが、今の日本でこういったものが薄れているばかりか、多言語に翻訳すらされずローカルスタッフへの浸透について何ら施策を講じていない一方で、ローカライゼーションできない理由として経営理念がわからないことを理由に挙げる企業が少なくありません。欧米企業は日本から学び、自社の経営理念、ミッション、ビジョンを文書化・明確化している企業が多く、人材の採用、評価、選抜、育成などにグローバルで適用させています。  
  ――組織活性化の道のりは険しいでしょうか。
 
  ヒトの部分に関する戦略・戦術は明らかに日本企業は遅れていますが、モノ・カネ部分はやはり日本企業は強いわけです。トップ自らがヒトについて真剣に対策を検討し、組織の変革を通じて、真のグローバルマネジメントを推進していただけたらと願っています。グローバル競争で勝つために日本企業をなんとかサポートしたい、そしてそうすることが私自身の使命だと感じています。
(取材:編集部)