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巻頭インタビュー
中国メディア界の風雲児
第一財経日報 総主編 秦朔氏

 
  『第一財経日報』は、中国初の金融・経済・ビジネス日刊紙として04年11月15日に創刊した。上海文広新聞メディア集団、広州日報報業集団、北京青年報社が提携、テレビとプレス(新聞)という二大メディア間の垣根を取り払い、速報性に富んだ高クォリティーの記事配信を実現させた。同紙の陣頭指揮に立つのが「最も影響力あるメディア人」の一人とも評される秦朔総主編である。  
 
 
机上には10歳となる愛娘の写真が置かれている。デイオフ時のスイミング、そして
家族と一緒にくつろぐこと。それが秦氏流儀のリフレッシュ法だという

第一財経日報 総主編
秦朔 氏

プロフィール
第一財経日報 総主編 秦朔 氏
1968年河南省開封出身。復旦大学新聞学部を卒業後、広州で『南風の窓』の主編として活躍、同誌は全国的に影響力の大きい政治経済誌≠ニして注目を集める。2000年にカルフォルニア州立大学に留学、公共管理修士(MPA)を取得。03年8月より『第一財経日報』の創刊準備に着手。04年11月15日に創刊号が発行。

 
  ●中国を代表するクォリティーペーパー「速度&正確」重視の報道で影響力拡大
 
 
  『第一財経日報』は月〜金発行、電子版を同紙サイト
http://www.china-cbn.com)で閲覧できる
『第一財経日報』は、〇四年一一月一五日、上海文広新聞メディア集団、広州日報報業集団、北京青年報社が提携、中国では初めて華北・華東・華南をカバーする金融・経済・ビジネス日刊紙として創刊された。
テレビとプレス(新聞)という二大メディア間の垣根を取り払い、速報性に富んだ高クォリティーの記事配信を実現した点で同紙の存在感は大きい。上海エリアでは経済新聞のジャンルで広告収入トップ、北京でも購読者数が前年比五〇%伸長したことを受け、先行するライバル紙『二一世紀経済報道』『経済観察報』の実績に肉薄しようとしている。
昨年、国六条に関するスピーディーかつ正確な報道が高い評価を受けた。経済ジャーナリズムの旗手としての責任感と気迫が随所に散りばめられた一つ一つの報道が、読者の厚い支持をとりつけることとなったのである。
もっとも、いまに至るプロセスがすべて順風満帆だったわけではない。一企業との紛糾が訴訟直前にまで発展しかけた「富士康事件」は、社会正義と真実、メディアの使命とは何かを世間に問う事件としてさまざまな論議を呼んだ。
幾多の波風にさらされながらも、『第一財経日報』のメディア界におけるプレゼンスはますます大きなものとなってきている。しかし、伝統的メディアとして孤高を守るのではなく、新たなものへの挑戦の意思が秦朔総主編の次のような言葉にも表れている。
「伝統メディア、ニューメディアのどれが優れているかというのではなく、多元化したメディアが相互作用を持ちながら市場をつくりだしていくのが長期的な趨勢だ」
 
  ●Q『第一財経日報』は北京、上海、広州という主要エリアをカバーする「全国紙」として創刊されましたが、こうしたケースは初めてなのでしょうか。
 
 
  全国各都市への出張が相次ぎ、年明け早々、席が暖まることは滅多にない。今回のインタビュー時も例外ではなく、記事内容の確認を求めるスタッフや、海外メディアからの訪問依頼の電話連絡が相次いだ
経済新聞としては『二一世紀経済報道』『経済観察報』などがありますが、月曜日から金曜日まで"日刊"というかたちで発行する新聞は改革開放後より今に至るまで登場することはありませんでした。
日刊新聞を発行するには、市場ニーズに呼応したものを出す必要があります。さまざまな模索を続けながら、もし日刊を出すならジャンルとしては金融・経済・ビジネスでのみ可能性が考えられるという結論に達したのです。
じつは、上海文広新聞メディア集団(SMG)自体はテレビ報道の全国展開を希望していました。『東方衛星テレビ』はすでに衛星システムを通じて放映されていますが、関連法・規定の制約から、ひとつの企業が二つ以上のメディアを衛星放送で流すことはできません。そこで、まず新聞媒体を通じて全国展開し、テレビと新聞という二つのメディア間で相乗効果を高めていこうとしたのです。
 
  ●Q二年という短期間のうちに大きな影響力をもつメディアに成長しましたが、どんな苦労を感じられますか?
 
 
  秦総主編にとっての座右の銘。それは科学哲学者カール・ポパーが遺した言葉だった
まず課題として挙げられるのは販売ルートでしょう。個人客に対する小売という手段ではなく、マーケティングに際してはデータベースを構築しながら、法人向けに販売していくことに重点をおくこととなります。
第二に、金融・経済・ビジネス紙の市場は非常に熾烈であるといわざるを得ません。通常、読者が慣れ親しんでいるのは週刊誌です。日刊ビジネス新聞という市場は開拓段階にあるといえましょう。
第三に、やはり人材マネジメントの問題があります。私は以前、『南風の窓』『ニューマーケット』という雑誌の編集を手がけたことがありますが、スタッフは六〇名、それも一地域に限定されていました。これに対して、現在では多くの地域に散在する記者、編集者の数はおよそ五〇〇名。マネジメントという意味では実にタフな挑戦を続けています。
 
     
  ●Q『第一財経日報』はすでに海外でもその存在をよく知られることになっています。今後、海外拠点の開設プランはありますか?
 
  海外の通信社などから提携を持ちかけられることは多々あります。もっとも、市場戦略としては、まず中国国内市場に重点を置くべきで、こちらのマネジメントを固めたうえで、「走出去」政策を検討するというのが基本方針となるでしょう。
 
     
  ●Q今年二〇〇七年の中国経済を占ううえで、キーポイントとなる事柄についてアドバイスいただけませんか? どんなビジネス潮流に注目すべきでしょうか?
 
  まずは製造業ですね。「走出去」政策のもと、グローバル企業に成長していく企業の動向についてはぜひ注視してもらいたいと思います。
次に消費マーケット。「世界の工場」から「世界の市場」へ。中国が消費市場としてひときわ国際的にも脚光を浴びてきていることが挙げられましょう。
第三に、エネルギー。「世界の工場」とされる中国では莫大なエネルギーが消費され、その規模は年々増大しています。石油、金属、鉱石といったエネルギーに対する需要が高まる一方で、存在感をアピールするエネルギー業界の企業動向に目を向けてもらいたいと思います。無錫尚徳太陽能電力有限公司に続いて、常州新能源公司が上場に成功し、保定天威能もまもなく上場を実現することでしょう。
第四は金融です。現在、中国のGDPは世界第四位、対外貿易額は三位、外貨準備高にいたっては日本を追い越し世界一になりました。こうした実情と金融市場の実態は整合性を欠くところがあるといえます。
今後、保守的ともいえる金融業界が、グローバル化の関門を乗り越え、よりフレキシブルに成長軌道にのっていくことが予想されます。金融業界の発展の潜在性は非常に大きいといえましょう。
第五には通信・インターネットを挙げたいと思います。インターネット人口は一億、携帯電話ユーザーは三億といわれ、この市場に大きな商機を見出す企業は多いことでしょう。
 
     
  ●Q人民元の切り上げや労働コストの高騰といった問題が指摘されることがあります。外資企業の投資動向についてはどうでしょう?
 
  土地、資金、労働力、ガス・電気・水といった生産コストの上昇、そして人民元の切り上げは漸進的であり、外国企業の投資を抑制する足かせになることにはならないでしょう。
むしろ、労働コスト上昇の一方で、インフラ整備や労働生産効率の上昇が見られているというメリットについても注意を払いたいものです。
教育レベルの向上は業務効率の向上をもたらし、ひいては生産力の向上に結びついていきます。労働コストが高まっても、総合的に見れば決してコスト高にはなっていないという事態もあるはずです。
なお、勤勉、正直な労働力が充足する中国では、まず供給不足の現象は現れないはずです。
 
     
  ●Qところで、秦朔総主編が司会を務めるテレビ番組『会見財経界』(第一財経チャネル)が好評、視聴率も高いと聞いています。
 
  A『会見財経界』はニュースにまつわるキーパスンを選び出し、時事問題を深く掘り下げていくことを目的としており、カバーするジャンルもかなり広いといえます。もっとも、まだ放送がスタートして半年、葉蓉キャスターの『財富人生』といった五年も続いている番組も他にはあるわけで、まだまだこれからといったのが正直な感慨です。
 
     
  ●Q九〇年代には『南風の窓』の総主編としてご活躍されたことがありますね。新聞、雑誌、テレビという主要メディアに関わられ、なにが一番充実していますか?
 
  A思い描いたものが形になりやすいという点では、雑誌制作は面白みが多いかも知れません。
新聞となると「白紙黒字」(証拠に残る、元にもどせない)の世界であり、責任は重大です。社会記事を書くための記者養成に三年かかるとすれば、金融・財政となれば五年以上。大変な世界です。
カール・ポパーが語ったように、「自らが身につける全ての知識が証明するもの。それは自らの限りない無知にほかならない」のです。