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巻頭インタビュー
目指すはNo.1オフィスサービス・プレーヤー 「中国発の世界戦略」で次世紀を切り開く
コクヨインターナショナル株式会社 取締役・中国総代表 大田 豊 氏

 
  コクヨは海外事業部分を切り取り、それを完全分社化、中国から世界を切りひらくことを最大ミッションとするコクヨインターナショナルをたちあげた(2004年)。進出企業の総務代行≠うたってスタートしたオフィス構築支援サービスは業容を次々に拡大、オフィス家具や設備導入にとどまらず不動産仲介からアフターフォローにいたるワンストップサービス(一条龍=jを標榜している。昨年上海でスタートしたカタログ通販事業Easybuy≠ヘ今年10月、北京にも駒を進め、すでに2都市あわせた登録会員は18万事業所(11月現在)に達した。オフィスコンビニネットスクウェア≠熏D調、来年度中には店舗増設、他都市での展開も予定。3つの事業の相乗効果で一気に業績拡大をねらう。  
 
プロフィール:
大田 豊 氏
大阪府出身。02年11月に上海に単身赴任。高校、大学時代はサッカーで鍛えた。現在、中国・日本の拠点を東奔西走。上海で過ごすのは月半分のみだという
 
  ● SARSの渦中に事業モデル構築  
 
コクヨは九七年に合弁ファイル工場を上海に立ち上げ一度は撤退、そして〇二年、二度目の進出を果たした。  
捲土重来しての再挑戦、しかしそれは「背水の陣」でもあった。日本国内市場のオフィス家具、ステーショナリー需要は頭打ちし、将来の成長幅も限定されている。だれもがその名を知る業界の老舗、トップカンパニーであるコクヨは将来の展望に大きな危機感を抱いていたといえる。  
「日本で新たなる事業を立ち上げて成功するか、日本で築き上げてきたビジネスをもって新たなマーケットを切り拓くか、次なる成長のためにはいずれかしかないのです」(大田氏)。後者がコクヨインターナショナルのミッション。〇二年十一月より上海での活動をスタートさせた。  
上海で日系企業への営業を重ねるうちに大田氏は次のことに気づいたという。中国に送り込まれる出向社員の多くは営業や生産のプロフェッショナル、総務畑のキャリアを持ちオフィス作りの経験 がある人はほとんどおらず、かつ中国ではマルチプレーヤーとして業務をこなす必要があり非常に忙しい。オフィス作りに
  ショールーム
おいても大変な苦労をしている。大田氏は物販ではなく「お客様の総務代行」としてのオフィス構築ワンストップサービスに大きな可能性を見出す。クライアントに成り代わってオフィス探しからアフターサービスまでコクヨが全て請け負うというものだ。「オフィス作りは我々にお任せ頂くことでお客様にはできるだけ本業に集中して頂く」。  
時は〇三年夏。中国全土に吹き荒れたSARSの嵐もようやく過ぎ去ろうとしていた。
 
  ● 成長の軸の中心は「非日系」マーケットへ
 
 
  NETSQUARE
もちろんその後の経過がすべて順風満帆であったわけではない。途中で戦術変更の必要にも迫られた。当初、家具供給を担った台資大手家具メーカーとはWINWINの関係を築けず、その後別の台資系会社との提携に切り替えた。また、「ライセンスの問題がいちばん頭痛の種だった。何をとればどこまでの範囲のことができるかわからなかった」と事業構築における苦労を大田氏は語る。  
専門家に相談をもちこんでも回答がなかなか得られない。ならば自らアクションを起こすのみ――。試行錯誤を経て同社のオフィス構築支援事業は次々に業容を拡大、他社が追随できないワンストップサービスとして地盤を確立することとなった。四年前、たった三名からスタートした大陸ビジネスは、〇六年上半期、売上高十数億円に達するまでになっている。  
では、脅威となるライバルの動向はどうか。オカムラやイトーキだけでなく、工場案件の減少をオフィス案件でカバーしようとゼネコンまでもがマーケットに進出、シェア獲得をねらう。大田氏は、業績の急伸長に安堵することなく、市場競争のいっそうの激化という事態を想定し手綱をひきしめる。「先行の利」で蓄積したノウハウをいかに役立て、ライバルの追随を許さぬために何をすればよいか――。  
大田氏は非日系マーケットをターゲットとした市場に次なる成長を出そうとしている。「ワンストップサービスを求める日系企業とは異なり、欧米企業の場合、設計・施工・設備導入という一連のプロジェクトにおいて分業体制がきっかりと敷かれている。よい家具をよい価格でほしいというニーズが多い」(大田氏)。ヘイワースといった欧米の競合勢力の向こうを張り、コクヨがメーカーとしての本領を中国で存分に発揮できる時がついに到来したのだといえる。
  「非日系に成長の軸をうつし、二年ほどのあいだに日系マーケットにおける売り上げを追い越こすことを目標にしたい」(大田氏)。オーストラリア人のマネージャーのもと、アメリカ人、カナダ人、中国人のバイリンガルスタッフによって結成されたチームは、ますますその陣容を拡充しようとしている。
 
  ●欧米の強豪を前に
 
 
  赴任早々SARSの嵐に見舞われた。出鼻をくじかれたかに見えたが「結果としてそれが追い風となった」(大田氏)。上海に孤立したクライアントの声にじっくり耳を傾けることができ、それがオフィス構築支援事業につながった
次に展開をしたのは創業以来コクヨの核となっているステーショナリービジネスである。
「このマーケットはメーカーポジションでスタートしても商品に付加価値が付けづらく、厳しい戦いを強いられるだ
け。まずは我々自らが流通のプレーヤーとして仕掛けを繰り出し、我々自らがお客様との接点を広く確保していく」。  
その第一弾として〇五年三月に国誉商業(上海)有限公司を設立。コクヨが日本でAskulに対抗するために展開しているKaunetをベースに同年六月、日系大手として初めて中国でオフィス用品通販「イージーバイ」をスタートさせた。  
その後ハイブリッドサービス社から日系向け通販「オフィスダイレクト」を譲り受け、上海での規模を拡大すると同時に今年十月からは北京でもサービスを開始した。十一月現在で登録会員数は一八万を超え、次年度の売上は四〇億円を目指すという。  
競合は巨大資本を一気に投下しスピードで優位に立とうとするStaples,Office Depotのアメリカ勢二社。ローカル企業の買収・合併によりインフラを獲得し、そこにアメリカ本国のオペレーションを展開しようとする彼らのやり方に対し、大田氏は、「アメリカのオペレーションをそのまま中国のお客様が評価するなら彼らに分がある、そうでなければ中国のお客様に耳を傾け、お客様の立場に立ったサービスを提供しようとする我々に勝機が訪れる」と見る。
 
  ● ネットスクウェアの本当のねらい
 
  コクヨは今年、オフィスコンビニ「ネットスクウェア」を上海でスタートさせた。もともとキンコーズジャパンを立上げ、運営してきたメンバーが日本でスピンアウトし興したベンチャーにコクヨが資本参加し、東名阪に一〇店舗運営されていたものを中国でも展開したのである。  
このプリンティングサービスビジネスを第二弾の仕掛けとして四月に日系向け一号店、八月に非日系向け二号店をオープンしたところ、実際の店舗運営によるマーケティングの結果は上々、「我々は日中に店舗を展開しているため、日中間で連携したサービスのご提供も可能です。日系はもちろん日中で事業展開をされている中国系や欧米系のお客様にも喜んで頂くことができ、我々としても中国から日本のお客様の開拓が進み始めています。お客様がグローバルでのサービス提供を求められているからで、将来は日中だけでなく色々な地域間でのサービス提供が求められるようになるはずです。そうなれば我々にもグローバル化のチャンスが到来します」  
今後は日系向けと非日系向けのサービスを統合し、来年早々より上海にあと二店舗、広州に一店舗、北京に二店舗ほど一気に開設するという。「そこで再び収益性を検証し、再度確信が持てればその後いよいよ全国展開にチャレンジします」  
そこからが大田氏の本当の狙いである。  
「日米ではオフィス用品通販の流通シェアは二〇%弱、通販に満足できない八〇%のお客様に対するオフィス用品の納品サービス拠点として全国に広がるネットスクウェアを活用する」  「二つの仕掛けがともに成功し、我々自らがBBのお客様接点を確保し、インフラを構築できればその後はこの流通を活用してメーカーとしても中国に進出できるし、我々のインフラをBtoBビジネスの異業種プレーヤーにプラットホームとして提供することで水平方向にも展開ができる。そして更には…、いえ、その先はまだ内緒にしておきます」(大田氏)
 
  ● 「世界で働け!」
 
  コクヨインターナショナルが掲げるビジョンは明快だ。まず「オフィス用品・オフィスサービス市場における中国ナンバー1プレーヤーになること」である。  
そして次に「中国からアジア・世界に飛び出し、中国発のグローバル企業になる」こと。「ローカルの総経理がどんどん現れ、中国を飛び出して世界を切り拓いていってもらえたら」と大田氏は願う。
  「次の一〇〇年を経たとき私はこの世にいないけれど、トヨタやキヤノンといった、世界の誰もが知る企業にしたいと思っています」(大田氏)。  
その実現の可否はすべてこれからの人材?にかかっている。志ある優秀な中国の若者よ、わが社へ来たれ――。そんな熱い思いを大田氏は次の言葉に託している。
「世界で働け!」――。
(取材・編集部)