| 旅と空の新時代を拓く 『春秋国旅』『春秋航空』王正華董事長 |
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| 1944年、上海市に生まれる。62年に長寧区五金交電公司団総支書記、72年に長寧団委副書記に就任。81年、春秋国旅を設立し、2年後に長寧区経済党委副書記を辞任、旅行社経営に本格的に乗り出す。2004年、中国初の低運賃民間航空会社となる春秋航空を設立する。 | ||||||
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| ● 四〇歳で下海 | ||||||
役人からビジネスマンへの転身を、中国語で下海という。王氏は、上海春秋国際旅行社有限公司(以下、春秋国旅)の設立をきっかけに四〇歳で下海し、旅行社経営に乗り出した。民間旅行社の草分け的存在の春秋国旅は現在、国内旅行市場でトップシェアを誇る。そして〇四年五月、今度は、春秋航空有限公司を設立、航空業へ参入する。同社は、国内初の低運賃航空会社として内外の注目を集め、鳴り物入りでデビューした。 |
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| ● 散客市場に着目 |
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| 王氏の企業人生は一九八一年に遡る。上海市長寧区の経済党委副書記だった王氏は、地域の雇用拡大のため、区内の若者の民間企業設立を支援することになった。 「どんな企業の設立が考えられるか、まず検討しました。いくつか候補があがった中のひとつに旅行社がありました」(王氏) 自動車修理、刺繍加工など、五つの会社の設立を目指すも、資金不足からすべて頓挫した。最後に旅行社が残ったが、設立予算は他の会社への投資で消えている。そこで、王氏は突飛な資金集めを行う。 「求職者からエントリー料として一元を徴収することにしました。新聞に求人広告を出すと、二日間で一六〇〇名余りの応募があり、一六〇〇元が集まった。次に、三〇名を社員として選抜し、彼らにトレーニングを行いました。この訓練費用がひとり四〇元で、合計三〇〇〇元の資金が集まりました」 この僅か三〇〇〇元を元手に誕生した旅行社が春秋国旅である。 二年後、王氏は役人を退くと、同社の経営に本格的に乗り出す。 まだ計画経済時代の気分を引きずった八〇年代初め、旅行業界は揺籃期にあった。当時、旅行社が扱っていたのは「単位」(企業)が引率する研修や慰安のための団体旅行で、個人旅行や散客(個人〜四、五人の小グループ)を集めたパッケージツアーは少なかった。既存の旅行社が、研修・慰安旅行の奪い合いにばかり目を向けている中で、後発組の春秋国旅は 散客市場をメインにビジネスを展開にすることになった。 はじめて手がけたツアーを、王氏ははっきり記憶している。 「上海から蘇州までのツアーで、三〇人乗りのバスをチャーターしました。二五人集めて利益がでるのに、一八人しか集まらず、赤字となりました」 最初の一〇年間、個人旅行市場は一進一退だった。春秋国旅も利益を出すとそれを開店費用に当て、少しずつ店舗を増やしたが、大きな成長を遂げるには至らなかった。しかし、王氏は散客へのこだわりを捨てなかった。世界の旅行業界の情報を収集する過程で、中国でもいずれは旅行が個性化の時代を迎え、個人旅行やパッケージツアーが主流になると踏んだからだった。 | ||||||
| ●代理店ネットワークを全国に築く |
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| 九〇年代に入り、旅行業界は大きな曲がり角を迎えた。個人所得の向上に併せ、散客市場も盛り上がりを見せ、春秋国旅に大きなチャンスが到来した。この波を上手く捉えた同社は、設立から四半世紀が経過した現在、一一年連続で国内旅行市場シェア一位をキープする業界のリーディングカンパニーとなっている。 この成功を決定付けたのは、いち早く散客市場に着目しながら、代理店の開拓に努め、全国に広がるネットワークを構築したことだろう。 「以前、大手旅行社より、彼らが手がけられない小さな規模のお客様を委託されることがありました。そうした旅行社には、逆にわれわれのパッケージを委託販売させたが、こうして集まったお客様でツアーを組むことができたのです」 この経験が、王氏を代理店ネットワーク構築の発想へと導いた。 「個人旅行やパッケージツアーの業務は、全国に広がる巨大なネットワーク網を築いたところが成功する」 そう確信した王氏は、子会社を積極的に設立すると同時に、代理店開拓に力を入れた。 「利益の九割を保障する手厚いコミッション制度を採り、全国に散らばる中小の旅行社に代理店加盟を呼び掛けると、代理店網は一気に広がりました」 現在、同社は三四の子会社、四〇〇〇強の代理店からなる巨大なネットワークを誇っている。 また、このネットワークを生かすためのITインフラ構築にも入念に取り組む。九四年より国内旅行社としていち早く、全国の店舗網を結ぶシステムの導入を開始。〇一年には、支店・代理店の管理からツアーの調整、財務決済、品質管理、統計分析に至るまで、あらゆる業務を同じシステム上で管理する体制を築いた。 | ||||||
| ● 中国版サウスウエスト航空 |
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「二〇〇〇年以来、われわれが手配したチャーター機は三万強で、平均乗客率九九・〇七%を達成しています。しかし、これだけのチャーター機を高搭乗率で飛ばしても、利益の九割は航空会社のものになります」 そこで王氏は、自ら航空会社を運営することを思い立つ。 国内外の航空会社を研究する中で、王氏が注目したのがサウスウエスト航空だ。米国六三都市を低運賃で運行する同社は、約四七〇機を保有する低運賃航空会社の巨人。三〇数年来、黒字経営を続け る。 「中国では、飛行機に乗ったことがない人が九割もいる。バスや電車に乗るのと同じ感覚で、手頃な価格で飛行機が利用できる中国版サウスウエスト航空を目指そう」 王氏は、航空会社のコンセプトをこう定めた。以来、春秋航空有限公司の設立まで一〇年間に渡り、社員を海外研修へ送り続け、自らもサウスウエスト航空をはじめとする、各国の低運賃航空会社の経営の研究に努めた。 |
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| ● 主要路線は一九九元 |
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| 昨年の初営業フライトから一年余りが 経過した。 「年初に三機目の航空機を投入後、計画通り、利益がでるようになりました。今年さらに三機の追加を予定しています。状況はさらに好転するはず」 国内航空会社の平均搭乗率が六〇〜七〇%であるのに対し、これまで春秋航 空は九五%を保っている。この高搭乗率を支えるのが、春秋国旅から送り込まれる大量の旅行者である。しかし、王氏は観光目的の乗客に頼ることには消極的だ。 「旅行者数は、シーズンで大幅に変動します。安定した搭乗率を保つには、ビジネスマンのリピーターを増やすこと」と上海―青島、上海―天津、上海―厦門、上海―温州など、ビジネスマンの利用率が高い路線で、一九九元の格安チケットを集中的に販売する。 格安チケットは、一九九元、二九九元、三九九元の三つの価格帯を設定し、シーズン毎に価格を変動させる。今年上半期、最安の一九九元のチケットは、全体の一二%を占めた。 この低価格実現のため、徹底したコスト管理を貫く。特にチケット販売におけるコストを、国内航空会社平均の僅か三分の一に抑えている。 航空会社は通常、中国民航信息網絡が運営するチケット販売システムとチェックインシステムを使用し、多額の費用を払っている。このコストは、航空会社のボトルネックになっている。一方、同社は全国に四〇〇〇強ある春秋国旅の窓口と、インターネットの二チャネルでチケットを販売する。チェックインは独自に開発したシステムを活用し、国内航空会社としていち早く、自動チェックイン機も導入している。 |
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| ● 現状打開に民間同盟を結ぶ |
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| 新規参入である春秋航空への風当たりは強い。大手航空会社は、春秋航空が営業を開始すると、春秋国旅へのチャーター機の提供をストップした。これにより、上海から全国に飛んでいた一〇数のチャーター機の路線がすべてなくなってしまった。また、民間航空会社が飛べるのは、従来の航空会社のフライトが少ない路線、もしくはフライトのない路線に限られる。ドル箱路線の北京―上海路線は、大手五社が独占する状況だ。
この現状打開に向け、九月、春秋航空は民間航空会社四社と同盟を結んだ。機材・航路など多方面にわたる協力関係を築くことで合意している。 |
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| ● 業界の異端から牽引役へ |
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| 世界の航空業界の趨勢は、低運賃航空会社に向かっているようだ。米国では原油価格高騰の影響を受け、大手航空会社が経営危機に陥るのを尻目に、低運賃航空会社の業績は好調である。今年に入り、日本でも大手航空会社が低運賃航空会社設立の検討に入った。
今年八カ月間の中国航空業界の業績は、この流れを裏付けるような内容となった。大手航空会社四社のうち三社が損失を出す中、春秋航空は五億元の営業収入を稼ぎ、一〇〇〇万元を超える利益を上げている。民間航空会社としてはじめての黒字転換だ。 春秋国旅が業界の異端から牽引役へと変わったのと同様、春秋航空は一〇年後、中国航空業界の大手として君臨しているのか。 王氏は自信を持って語る。 「五年後には航空機三〇台を保有し、年間搭乗客数八五〇万人を達成する計画です。航空機を一五台前後投入できた時、春秋航空の経営は成長軌道に乗り、大きく飛躍します」 (取材・編集部 岩下) |
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