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巻頭インタビュー
北京外食市場に旋風 仕掛けるのは新進気鋭の「女老板」
『北京好運投資管理有限公司』 姜海琳 総経理

 
  各国大使館、高級アパートメントが集まる北京・燕莎エリアにオープンした「国際美食モール・好運街(ラッキーストリート)」。そのマネジメントにあたるのが北京好運投資管理有限公司の総経理、姜海琳氏だ。20代、女優顔負けの美貌。「各テナントでの一人当たりの平均予算10米ドル」など、ユニークなコンセプトで独特の空間を創出、北京の外食産業に旋風を巻き起こしている。  
 
プロフィール:
山東省出身。北京市大興区人大代表。中共党員。解放軍装甲兵工程学院卒業、北京公安局指揮中心を経て、北京政 法大学で法律を専攻。北京好運投資管理有限公司の総経理に就任し、昨年末、北京第三使館区に「国際美食モール・好運街(ラッキーストリート)」をオープン。才色兼備の若手辣腕経営者として脚光を浴びる。「ベストマザー・コンテスト」「ミセス・コンテスト」でグランプリ受賞。2005年度「10大中国経済女性」突出成就人物賞、2006年度「中国精英女性」銀賞受賞。
 
  ● 知性のオーラ  
 
  国際色豊かなグルメストリート――好運街
「北京・燕莎エリア」に位置する第三使館区。この国際情緒あふれるエリアに今年三月、新たな目玉スポットが登場した。「国際美食モール・好運街(ラッキーストリート)」である。
全長三〇〇メートル、一・五万平米のストリート。ヨーロッパ調の建物にベーカリー、カフェ、日本料理店など個性派レストランが軒を連ねている。
同ストリートの運営を担うのが北京好運投資管理有限公司。姜海琳総経理は中国人民解放軍装甲兵工程学院工学系卒、中国政法大学法律系修士課程を修了、若くして大興区の人大代表に就任するなど華やかな経歴をもつ。
一方、北京テレビ主催の「ベストマザー(漂亮媽媽=きれいなおかあさん)コンテスト」で一位、「ミセス(太太)コンテスト」でもグランプリを受賞するなど、「美人経営者」としても各メディアの注目を集める新進気鋭の経営者だ。
彼女と出会った人は誰もがこういう。知性のオーラが漂ってくるような女性だと。
「芸能界入りを勧めてくれる方もいましたが、私にとって、各コンテストでの受賞は、あくまでも自身のキャリアにとってひとつの通過点に過ぎません」(姜総経理)
まだ二〇代後半。彼女が言うには「内面にある知性が人を魅力的にする」のだという。「活到老、学到老」――活きて老に到るは学びて老に到るなり――そんな固い信念が、いわば彼女の行動原則にもなっているのだといえる。
 
  ● 変化の最中にある「食」観念
 
  そんな姜総経理が、数々の斬新なアイデアを元に、好運街をオープンさせたのは二〇〇五年の末のことである。
「燕莎エリアの五つ星ホテルにあるフィットネスセンターでリフレッシュした後、友だちと気軽に食事を楽しめる場所があったら……こんな発想から(好運街のプロジェクトは)始まったのですよ」と姜総経理は振り返る。
確かに、同エリアには気軽に利用できるレストランやカフェがそれほど多くない。各国大使館や高級アパートメントが立ち並ぶ場所柄、レストランやカフェというと、どうしてもホテル内の施設がほとんどというのが実情だ。
毎回ホテルのカフェを利用すれば出費がかさむ。そこで「ビジネスパースンであれ主婦の方であれ、燕莎エリアに住む方々がリーズナブルに楽しめるレストラン街をつくろう」(姜総経理)という着想に至ったのだという。
顧客ターゲットとして想定するのは、外国人居住者、ビジネスマパースン、そして中国人の富裕層だ。
「経済の発展に伴って、私たち中国人の食に対する考え方も変化しています。一昔前は『ただ食べられれば良い』という発想がほとんどでした。しかし現在は『食も文化のひとつ』と考える富裕層が増えています」(姜総経理)
 
  ●「懐が深い」北京外食市場
 
  では、内陸に位置する北京ではどういった外国の食文化が受け入れられるのだろうか。
北京の外食文化の大きな特徴を姜総経理は「博大精深(懐が深い)」という言葉で 説明する。
「上海エリアではレストランにも流行があるように思えます。たとえば、フランス料理が流行すれば、みんな右に倣えで、次々にフランス料理店がオープン。消費者の方も、フランス料理を食べることで流行に乗るといった流れがあるのではないでしょうか。
それに対して、北京の外食産業を一言で総括すれば『何でもあり』。さまざまな食文化をそのままの形で吸収できる街と考えています。四川料理、広東料理、日本料理、イタリア料理など、ひとつの街の中に異なる食文化が共存している環境とも いえますね」(姜総経理)
北京人はにぎやかな雰囲気や友達との飲み会が好きということでも知られている。
「たくさんの人が集まっていれば『あれは何だろう?』と興味を示すのが北京人です。また、友達の一人が『いま好運街にいるんだけど』とか、『一カ月に一〇回も好運街で食事しちゃったよ』と言えば、家族、友達、クライアントを連れて食事に行く人が出てくると思います」(姜総経理)
 
  ● 「個性演出のためのカラクリ
 
 
  辣腕経営者にして美しき母=B数々のコンテストでグランプリを受賞する
各種消費者調査など、一連の事前準備のプロセスを経て、昨年一二月一六日、全体の五〇%のテナントが営業にこぎつけた。
『お手ごろな価格で、ビジネスや社交の場を提供する』という当初のコンセプトから、各テナントでの一人当たりの平均予算を一〇米ドル(約八〇元)と割り出した。
「現在の外国人ビジネスパースン、富裕層の中国人にとって、リーズナブルな価格に設定しました」(姜総経理)
なお、北京のバーストリートに見られるしつこい客引きは一切禁止するなど彼女は理念の浸透にこだわりを見せる。
「どのお店で食事を楽しむかは、お客様自身が決めることです」(姜総経理)
各テナントでハイレベルなサービスをキープするために彼女が導入した独特のマネジメントとして『准入和清退』というものがある。
好運街に入店できるテナントは、『世界の美食』というコンセプトを通過した物件のみを厳選する。オープン後は、テナントとの連絡を密接にして、経営状況を定期的に把握する。売り上げが芳しくない場合、もしくは顧客にとって魅力的でないと判断した場合は退出してもらうというサバイバル方式を採用しているのである。
その外、姜総経理が各テナントに要求していること、それは「お店のオリジナリティ」だ。ショップそれぞれの個性を重視しつつ、サービス内容が重複しないように調整する。
「たとえば、好運街にイタリアレストランが一軒あるとします。その場合、別のイタリアレストランから申請があっても、入店は原則として受け付けません。世界美食モールという性格上、一カ国一レストランというのが好運街のコンセプトだからです。
二つめのレストランを出店する場合は、必ず一店舗目との違いを出すことを条件にしています。例を挙げると、寿司レストランと居酒屋というケース。同じ日本料理でもそれぞれ別カテゴリーとして捉えられますよね」(姜総経理)
さらに、『管家制度』という管理会計制度も採用している。これは多くのホテルで行われているマネジメント方式で、店舗と基本的な設備(水、電気、ガスなど)の提供、その他、マスメディアへの宣伝活動の請負、出店手続きの代理など、さまざまな角度から各テナントをサポートするシステムである。
 
  ● 知名度アップに次々と布石
 
  オープンから約半年余が経過。好運街は客足もすこぶる順調、今後は、各種プロモーションの開催で知名度の向上を狙う。その際には、マスコミの力は欠かせないと姜総経理は話す。  
「七月から九月にかけて国際美食祭を開催する予定です。各メディアを通じて大々的にアピールするつもりです。そのほか、世界の食文化を紹介するイベントも企画しています」(姜総経理)
北京駐在の各国大使館員を招待して、世界の食文化を紹介。各国の家庭料理を好運街で楽しみながら、グローバルな文化交流の場を提供したいとも考えている。
また、中国国内で人気のチベット族の歌手、韓紅(ハン・ホン)によるチベットレストランが間もなくオープンする予定だ。好運街では、同レストランのオープニングセレモニーに全面的なコラボレーションを考えているという。
「彼女のようなビッグネームの影響力を借りることで、好運街の認知度を一気に高められるのではと期待しています」(姜総経理)
イメージキャラクターの登用も検討する。「マスコットとして私自身を起用してみようかしら、と考えたこともありました(笑)」と姜総経理はおどける。
ところで、北京で大いに実績をつくった後、好運街の全国展開はあり得るのだろうか――。
「その地域に必要とされている形での展開が重要ですね。たとえば、青島で北京と同じ『世界美食モール』という売り出し方をしても、受け入れられるとは限らないですよね。
北京、上海、内陸部と、それぞれ文化的背景も違いますし、求められるものも当然異なってきます。おそらく違った形でアピールすることが必要になってくると思います」(姜総経理)
好運街をわが子のごとく愛しい存在だと言ってはばからない姜総経理。「大切に育てて行きますので、今後の展開にご期待下さい」(姜総経理)。辣腕事業家の表情に屈託のない母親の笑みが浮かんだ。
(取材・北京支局 村田 吉弘)