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巻頭インタビュー
東方衛星テレビニュースセンター首席キャスター 葉蓉氏
  『財富人生』―― 著名企業家がいかに財をなしたかをトークショーという形で紹介する番組である。すでに放映開始して4年。日本でいえば『プロジェクトX』に相当する人気を誇ると言ってよい。しかし、前者が財を築いた創業者の「人生」そのものに比重を置くのに対し、後者は「名もなき」ビジネス戦士たちが一致協力して完成させた製品や事業にスポットをあてるなど、相違点は多い。『財富人生』をレギュラー担当し、その才腕に注目が集まる葉蓉氏。彼女がインタビューを行った著名企業家はすでに210名を超えたという。番組成功にまつわるエピソード等について聞いた。  
 
プロフィール:
上海東方衛星電視台、新聞中心・首席キャスター。四川省成都出身。北京広播学院放送学部卒業後、ニュースキャスターとして93年より活躍。現在、『財富人生』など3つのレギュラー番組を抱える。2000年中国TV放送学会司会賞受賞。慈善基金会宣伝大使と理事を歴任。
 
  ● 『財富人生』の成功で一躍時の人に  
 
葉蓉氏の出身地は四川省成都。北京広播学院放送学部を卒業後、故・X小平氏が呼びかけた「一年一様、三年三様」のスローガンに啓蒙され、人生の活路を上海に求めた。ニュースキャスターとして早々と頭角を現し、一九九九年には「第二回上海文化新人一〇傑」に選出されている。
「新上海人」を代表するインテリ女性。地元メディアはこういって彼女を称える。外地、外国問わず、あらゆる「個性」を取り込み、それを「新上海人」と呼ぶところに、国際都市・上海のダイナミズムがあるのかも知れない。
葉蓉氏がレギュラーとして担当する番組のひとつ『財富人生』は、放映が開始されてからすでに四年、経済関連の番組としては抜群の人気を誇っている。放送内容を収録、編纂した書籍もあり、既刊四冊の発行部数は二五万冊(二〇〇五年一二月時点)とも。〇六年一月には五冊目が発刊される。
『財富人生』の概要を一言で説明すれば、財界人とのトークショーといってよい。著名企業家がいかに事業を起こし、財を築き上げてきたかの経緯や、企業家たちの処世術、人生訓をざっくばらんな対話のなかで導き出そうという趣旨の番組である。すでに二〇〇名を超える著名企業家たちが登場し、中には欧米や日本の企業家を紹介した回もある。
飛躍的経済成長を続ける中国。多くの人々の精神的ベクトルは経済的成功、富裕出世に向かっている。『財富人生』は、こうした人々のニーズを見事にとらえ、一躍、人気番組としての地位を確立することとなった。
ただし、成功者たちと接することで「多くを学び得た」(葉蓉氏)ものの、その叡智を葉蓉氏自身は「理財」に応用してはいないようだ。「財盲」と皮肉られることもある。
ところで、「財富家」たちの華やかな名声や社会的成功がある一方、日陰の世界もまた存在する。アモイ事件などに見られる大型脱税事件に始まり、腐敗や汚職が露わになるケースは枚挙にいとまがない。
一方、抜本的な解決策を見出せない貧富の拡大。学業に就けない児童が内陸部には相当数いる。やみくもに物質的富を求める人々のエネルギーは、「富の社会への還元」へと軌道修正されるべき時期にさしかかっているといえよう。
こうした社会のひずみの是正に貢献しようと、懸命にメセナ事業に取り組む経営者も少なくない。今回インタビューの斡旋をしてくれた慈善基金会普慈口腔問診部の陸方博士もまた「白手起家」の一人だが、すでに数千に及ぶ貧困老人に無料診療を行ってきた。また、筆者が知る上海在住の日本人にも、貧困地域の学童に対して「足長おじさん」役を自ら買って出ている人がいる。葉蓉氏が慈善基金会の宣伝大使を務めるのも、バランスを持った経済発展への願いと、富の社会還元というテーマに深い関心を抱いているからに他ならないだろう。
自身内面に築いた「財産」をいかに社会に還元するか――葉蓉氏の挑戦はこれからも続く。
 
  ● 『財富人生』が放映されるまでの経緯についてお教えください
 
 
上海テレビは〇一年年末、チャンネル編成が一変し、ミドルハイレベル以上の視聴者を対象とした「財経チャンネル」が生まれました。この時、局内で経済的成功を収めた企業人をトークショーという形で取り上げようという企画が持ち上がり、ディレクターは私に番組を担当しないかと声をかけてきたのです。
当時、私は他に抱えていたレギュラー番組に専念したいという気持ちがありましたが、多くの成功人士に学ぶ機会が得られるのはかけがえのないチャンスだという説得に心を動かされました。なるほど一年五二週、毎週放映するとして年間五二名の財富家たちから成功の秘訣、人生教訓など有意義な話を聞く機会が得られるのです。トークショーを担当した経験はありませんでしたが、思い切って挑戦することにしました。
 
  ● 放映開始から四年。ロングランとなりましたが、番組編成上心がけていることは?
 
  誰を取り上げるかは何度も選抜作業を行い、番組の収録まで七九のステップを踏むなどスタッフ一同、制作には慎重に慎重を重ねています。すでに二一〇名を超える人を取材しました(〇五年一二月九日現在)。
インタビュー時は、とにかく相手が心の窓を開き、他のメディアにまだ漏らしていないことも語ってもらえるように努めました。創業の経歴を詳さに聞き、相手の個性はどこにあるのか、成功者の共通点はどこにあるのか等を明らかにするとともに、人間の力、ヒューマニティーに着目し、人生の機微や財を築く秘訣等を紹介するのです。また、経営リーダーとしての人物的魅力を浮き彫りにしながら、彼らが築き上げた企業文化についても触れるように心がけています。
 
 
  ● これまでの取材を通じて、印象に残 った人物を挙げると?  
 
  『東京ラブストーリー』など「日劇」に親しんできた年代。作品の舞台に魅かれ沖縄や箱根などを訪ねたこともあるという
「財富家」のタイプを分類分けすると、三つの時代に区分されるのではないでしょうか。
「苦労を耐え忍ぶ」というのは中国人(の経営者)に共通する素質であると思いますが、八〇年代は「艱難辛苦忍耐」型が成功を収めています。たとえば張果喜(果喜集団有限公司・董事長)は新中国初めての「億万長者」です。改革開放によって打ち寄せた荒波を乗り越え、聡明な才覚と不断な努力で成功をつかみました。劉永好氏(新希望集団・董事長)もこのタイプでしょう。
九〇年代は「海亀派」が脚光を浴びました。張朝陽(ボータルサイトSOHU.COM=捜狐=創立者)、陳逸飛(美術家)、唐駿(マイクロソフト栄誉総裁、現在は盛大網絡総経理)等です。
今世紀に入っては、「現地派」のIT界精鋭の活躍が目立ちます。馬雲(B2B電子商取引ウェブサイト阿里巴巴=アリババドットコム=CEO)、江南春(フォーカスメディアCEO)、李彦宏(BAIDU=百度=総裁)等が代表的人物として挙げられるでしょう。
 
  ● 外国人も番組に登場していますね  
 
  「ヨーロッパ人はコーヒーに親しみ、成都人はお茶を嗜む」とも。しかし、日進月歩の上海においては緊張の毎日、くつろげる時間は乏しい
日本、欧米の方も何人か取り上げたことがあります。
太田敏郎氏(ノーリツ名誉会長)は、口ひげまで白くなっており、かなりの年長者という印象があります。進駐軍の管理下に置かれた時代であったにも関わらず、米軍基地に出向いて商談を行うなど、とても勇気のある方です。日本人が持つ素質からもいろいろ学び得なければという思いを持ちました。
フランスのDassault航空会社の羅朗・達索氏(Laurent Dassault)はとても控えめで、穏やかな感じの方でした。カルティエの総裁、伯納メ・福納斯氏に対しては、アメリカで教育を受けているにも関わらず、スタンダードなヨーロッパ人としての気質を備えている方だというのが印象です。
唐鋭涛(美国智威湯広告総裁)も面白い方です。ユダヤ系アメリカ人として生まれ、中国の伝統文化への想いから単身中国に渡ってきました。かつて勤め先で雇い主から「最も広告業界に相応しくない人物」と評された彼は、現在、グローバル広告会社のリーダーとして活躍しています。
 
  ● 慈善基金会の宣伝大使を務めていますね  
  「救急不救窮」という諺があります。
その場しのぎの手助けはできても本当に救おうとすることは難しいことです。かつて、白内障の児童を救うために募金活動を行い、お金を送り届けたことがあります。こうした公益活動を行うのは、現在の企業家の方々に、事業の成功と同時に貧困者・困窮者に救いの手を差し伸べることに関心を持ってもらうためです。
 
  ● 『財富人生』を通じて学んだことは?  
  「八〇%の人は私と同じだけの(成功を収める)ことができる」と馬雲は言っています。多くの成功人士たちとの面談から、物事に対する見方において様々な啓発を受けました。
私もまた、「好きなことを選んだからには、その自らの選択を愛しなさい」という言葉を座右の銘として、より内容の充実した番組をご覧いただけるように努力していくつもりです。
 
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