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「中国は日本の古き友です」 |
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アローキャピタル代表取締役 矢野覚 氏
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略歴
1926年8月1日、香川県仲多度郡琴平町で生まれる。1952年に旧制大阪商大を卒業。商社に入社して海外勤務。1970年、プロミス創業者である神内良一氏との出会いで消費者金融業界に入り、1974年にプロミス取締役就任。代表取締役社長を経て、1982年にプロミス会長に。1985年、ジーシー椛纒\取締役社長。現在、アローキャピタル代表取締役。

矢野覚氏は1970年、神内良一氏と出会い、一代にして日本有数の消費者金融会社プロミスをつくりあげた。元商社マンだった矢野氏はその国際感覚から「日本にもいずれ個人金融時代が到来する─」との先見にて、個人金融ビジネスで先進国であった米国を視察するなど、神内氏と二人三脚で日本における消費者金融業界の近代化の基礎を築いた人物だ。79歳になった現在はアローキャピタルの代表取締役として、ベンチャー企業、IT産業など世界各国の新規事業、企業に投資。また、財団を通じて中国の農業振興へのサポート、さらに発展途上国の医療施設建設など多くの支援活動も精力的に行っている。今回は矢野氏の卓越した人生観、世界観、経営哲学、ならびに中国観についてインタビューさせていただいた。 |
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ウォーカーチャイナ編集部(以下、編) 今日は当誌の対談のため貴重な時間を割いて頂き、ありがとうございます。 |
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矢野 こちらこそ、こうした機会にお招き頂き、ありがとうございます。 | |
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編 今年で七九歳になられたとお聞きしていますが、とてもお元気ですね。
矢野会長は無から一部上場企業を築き上げた立志伝中の経営者ですが、今も尚、現役として第一線で活躍されています。そうした情熱はどこから沸いてくるのでしょうか。 |
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矢野 立志伝中の経営者と言われるほどのものではありませんが、神内会長と出会って無我夢中でやっているうち、一部上場企業にまでなってしまった、そう思っています。その途中はもう辛さや苦労の連続です。今でこそ消費者金融は経団連のメンバー企業ですが、当時はサラ金とまで言われて四面楚歌でした。でも、それらも今となっては懐かしい思い出です(笑)。 |
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編 わかります。どんな業種でも先駆者はそれなりの苦労や試練を体験しなくてはならない。創業者ゆえの試練ですね。 |
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矢野 そうですね。人間もそうですが、企業もまた叩かれれば叩かれるほど強くなる(笑)。 |
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編 矢野会長が現在行っている事業はどのようなものでしょうか。 |
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矢野 ビジネスとして様々な新規案件や企業に投資していますが、私自身、事業欲や富を目指しての投資とは捉えていません。時代の流れに関わりたい、世の中の動きを共感したいと願う気持からです。投資を通じて生きている実感というか、授かった命を燃焼させてみたいと思う気持でしょうかね。 |
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編 投資だけでなく世界各国で、いろいろ支援事業もなされているとお聞きしています。確か中国でも行っているとか。今日は、中国での支援事業をぜひお聞かせください。 |
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矢野 支援事業というほど大規模なものでもありませんが、実りあるものにしたいと思っています。中国は今、国民の収入に不均等が生じている。都市勤労者と農民の収入は五倍、一〇倍、それ以上の開きもあります。こうした現象をなんとか早く止めなければ、それこそ豊かさの平等化が行き届かない。そこで、中国の農民の収入をあげるには農業生産性を向上するのが一番、そう思ったわけです。そこで、日本の北海道に近代的な農業研究所・試験場を設立し、そこでいろいろな研究を行っています。そして、そこで得られた成果を中国の農村に提供しています。 |
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編 農業の生産性が上がれば農民の収入も当然あがります。 |
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矢野 そうなんです。でも、農産物の生産性をあげるにはバイオや先端農学など、最先端技術もさることながら、害虫対策や農産物の流通など様々な問題があります。我々がいくら技術的な支援を行っても、現地との密接な関係でやっていかなければ成果は上がらない。そこで、中国科学院と提携して同学院から優秀な農業関係者を推薦してもらい、彼らに生産性向上のための研究、活動に関わってもらうことにしたのです。それに費やされる費用は全額、われわれが無償で支援する。彼ら一人に日本円で約五〇〇万円を無償で提供しています。今の支援人数は一〇〇人です。また、彼らに農業生産性に関する教育を受けてもらうべく、吉林省の農業技術センターや北京大学農学部などに依頼しています。そして、そこで教える先生方の費用から経費まで全額を我々が負担することにしました。 |
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編 壮大な事業ですね。それこそが真の支援活動だと思います。一人の研究者を養成、教育すると、今度はその人が一〇〇人、二〇〇人の後継者に伝授していく…、それがやがて中国全体に拡がるわけですね。 |
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矢野 そう願っています。北海道の研究所、試験場でも中国から来た関係者が研修を受けています。その中にユニークな事業があります。雲南省で電気がきてない農村に電燈を提供すべく、人糞から出るメタンガスを利用する設備を提供しました。 |
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編 矢野会長が先日、北京に来られて一〇億円を寄付されたという件も、農業関連事業の一環だったわけですね。 |
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矢野 そうです。私が敬っている神内会長と一緒に訪中し、以前中国に設立した【神内財団】を通じて、支援をさせてもらいました。 |
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編 こんなにすごいことをなさっているのに、世間にはあまり知られていないのも寂しいですね。 |
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矢野 いや、支援とは知らせることも、報せることもしない方がいい。マスコミで派手に取り上げられると売名行為にとられかねないので、なるべく静かに応援したいと思っています。それに本当の支援とは、こちら側の立場ではなく相手の立場にたって行うものでなければならないと思います。 |
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編 的を射た、厳しき言葉ですね。今の時代、パフォーマンス的な支援事業が派手な話題を振りまいていますが、こうした地道な支援こそ、日中両国の友好を固めていくものだと思います。 |
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矢野 日本と中国は古き友人ですからね。 |
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長く付き合える友人こそ「朋友」 |
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編 今、日本と中国は経済面においては活気ある関係にありますが大局的な見地から眺めると、少しぎくしゃくしているところもなくはない。その辺りはどうお考えでしょうか。 |
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矢野 先ほども申し上げましたが、日本と中国は何千年もの前から関わり、交わってきた古くからの友です。中国からの文化が日本に与えた影響は、それこそ日本の骨格を成すものであったと思いますが、近代の哀しき歴史の中で両国は共有できない道を歩んでしまった。また日本は明治以降、欧米列強と渡り合える国力をつけ、さらに世界第二の経済大国に上りつめたことから、文明や物質的な面で格差が生じた。こうした背景をして、何千年もの前から関わってきた関係や事実が置き去りにされ、顧みないようになってしまったのではないでしょうか。 |
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編 両国の物差しが近代の歴史、経済的関係だけで計られるといった現象ですね。 |
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中央手前が神内氏。
北京で行われた農業援助プロジェクトの調印式にて。 |
矢野 そうです。もちろん日本も中国も独立した国家である以上は国策的、外交的、体制的には、相容れられない事情や背景もあるでしょう。それでも、お互いがもっと原点に立ち返って向かい合わなければならないと思います。人間も短所と長所をして表裏一体を成している。同じように、国家もまた短所があって長所がある。ましてや、広大な国土の中国には一三億人の人たちが暮らしているので、われわれの物差しだけでは捉えられない部分が多くあるわけです。捉えられない部分を「負」と解釈するか、それとも「未知」と解釈するかで答えも判断も違ってきます。 |
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編 矢野会長のお話はとても大きな視野での大局的な見解ですね。 |
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矢野 五年ぐらい前のことですが、日本の大手企業トップが、「中国に日本の最先端技術を移管すれば、その後ブーメラン効果となって日本の産業界に打撃を与えることになるのでは」と言いました。それを聞いて、私は「日本は漢字や文化という、技術以上のものを中国から頂いた。それに比べると技術ぐらいは」と思ったものです。もちろん、外交政策やビジネスにおいては時に駆け引きや戦略を必要とする場合もあるでしょうがその根底においては、それらを消化させうるだけの器量、尊敬をもって向かい合わなければならない。人間もそうですが「術」や「技」で向かい合っていると、いつまでたってもギクシャクした関係は解消されない。 |
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編 矢野会長のお話を聞いていると、なにか人間の生き方というか、哲学を感じます。 |
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矢野 年寄りの戯言です(笑)。 |
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中国の可能性 |
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編 中国に住んでビジネスをしていますと、日本から観た中国とは別の面…、それももっと深い面を日々発見します。中国は深いというか、一言では言い表せない面がものすごくあると思います。日本の文化は何でも一つの型に押し込めて決め付けるわけですが、中国という国は枠に収まらない。 |
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矢野 日本では今、あらゆるメディアが中国関連の記事を紹介していますが、そこには悪意に満ちたものもあれば、中国の可能性を絶賛しているものもあります。重要なことは、一部分をして、それがさも全体を表していると受け止めないことだと思います。これは中国だけに限らずどこの国にもいえることですが、相手の国を理解するということは、まず気持を開いて相手と心から相手と接することから始めなければなりません。お互い自分の物差しだけで相手を量り、図ってはいつまでたっても理解し合えないと思います。 |
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編 先入観や固定観念は理解の敵、という言葉があります。最後に、中国の将来に対する矢野会長の考えをお聞かせ下さい。 |
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矢野 これは当たり前のことですが、私は日本と中国は仲良く手をとりあって二一世紀のアジア、ひいては世界の発展に貢献していかなければならないと思っています。近来の日本が短期間で経済大国になったように中国も、また三〇年後、五〇年後、一〇〇年後には大きな発展を遂げていると思うのです。ですから、目先に捉われるあまり、両国における未来の可能性まで揺らがせてはならない。現実的にはいろいろ解決しなければならない問題も横たわっているようですが、要はどのような器量で向かい合うかでしょうね。 |
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編 中国の農業生産性を上げようと支援なさっているような、長期的な視野が必要ですね。 |
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矢野 中国は世界四大文明のひとつが誕生した国です。根底には大きなパワーを秘めている。今は過程における「一通過点」ですから、いろいろな問題も生じているでしょう。でも、その通過点にどのように関わるかで未来の関係も決まってくる。大切なことだと思います。 |
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編 今日は楽しいお話、それに有意義なお話をありがとうございます。とても勉強になりました。 |
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矢野 私の方こそ、楽しい時間でした。ありがとうございました。 |
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