Walker
中国最新情報満載!!
その他
   日系企業における
                  ------人材マネジメント上の最大の課題 (上)
                  マーサー・コンサルティング  美世諮詢(上海)有限公司 コンサルタント 柏倉大泰
 
  柏倉大泰(Tomohiro Kashiwakura)
マーサー・コンサルティング・美世諮詢(上海)有限公司 グローバル人事戦略コンサルティングチーム、中国・香港・台湾地区担当コンサルタント
組織・人事系で規模・拠点数ともに世界最大のマーサー・コンサルティングの上海オフィスを拠点に、日系企業のグローバル人事戦略に関するコンサルティングに多数従事。

Tel:86-21-6335-3789(Ext.151)
Fax:86-21-6361-6533
E-mail:tomohiro.kashiwakura@mercer.com
 
「金を残すは下、事業を残すは中、人を残すは上」。
明治時代のこの金言ほど、現在の中国における日系企業の課題を的確に表している言葉はないかと思う。在中国日系企業の人材マネジメント上の最大の課題となっている「事業」の中核を担う優秀な「人」の育成をテーマに、今回は典型的な課題について、次回は具体的な取り組み施策について、二回にわけて考えていきたい。
  最近の動向  
  在中国日系企業からマーサーへ頂く組織・ 人事関連の相談内容としても、優秀な人材、特に「経営幹部」の育成に関するものが現在は最も多い。また世界の工場から世界の市場となった中国におい、開発から販売まで一貫して行うため進出企業が増えていることから、各企業のまとめ役となる地域統括会社(投資性公司)、いわゆる「傘型企業」が日系企業でも五〇社以上設立されており、最近の相談の特徴といえる。
この経営幹部の育成と傘型企業を結びつけるキーワードは「キャリア」である。キャリアは中国における人材マネジメントにおいて必ず取り上げられられるキーワードでありながら、日系企業の不得手な領域でもある。そこで欧米系企業と日系企業を比較しながらキャリアに着目して経営幹部の育成と傘型機能について話を進める。
 
  欧米系企業のキャリア育成  
  欧米系企業のビジネスの特徴を一言でいえば「意匠」である。ここでいう意匠とは個々の製品やサービスのデザインではなく、利益が生み出せるように描かれた事業全体のデザインを指している。製造部や営業部がそれぞれ利益を追求するのではなく、事業として儲かるように全体的な視点から開発から調達、製造、販売までが一貫して描かれたビジネスモデルともいえる。
例えば中国のPC市場においても大躍進のデルが良い例である。意匠が競争力の源泉である企業は、環境に応じて意匠を展開することで中国においても十分に意匠の強みを発揮している。
意匠重視の企業では、意匠の一貫性を追求するあまり過去の成功体験に縛られ時代の変化に取り残されないように、二年程度で次々と優秀な人材に要職を経験させ、一貫性を維持しながらも環境の変化に応じて意匠を変えられる全体的な視点をもった経営幹部を育成していくことが必然的に求められる。
こうした企業は急激な成長を続ける中国においても、市場と同じ速度でキャリアアップを期待している優秀な人材に意匠を叩き込むために要職を次々と走り抜けさせ経営幹部を「稲妻」のように育成していく。
 
  稲妻型の傘型機能  
  稲妻型のキャリア育成において傘型企業に求められる機能として
・配置計画に基づいた優秀な現地人材の選抜
・現地人材へのサクセッションプラン
・魅力的なトータルコンペンセーションの提供
が上げられる。
稲妻型の傘型機能では、優秀な人材を選抜し集中的に経営幹部として育成するために、広範囲に渡って注意を払う多くの人事プロフェッショナルが必要となる。マーサーが二〇〇四年に実施したサーベイでは、在中国の一〇〇〇人規模の欧米系企業で平均一六人の人事専任者がみられた。
さらに、今の優秀な人材だけでなく将来における優秀な人材も見越して計画的に経営幹部を「再生産」するサクセッションプランも重要な機能である。欧米系企業を中心に実施したマーサーのサーベイでは、五四%の企業が五年以上滞在した本社からの駐在員を現地採用に切り替え、五七%の企業が報酬を現地水準へと移行させており、一定期間内に後継者を育成させる背水の陣を組織的にしいている。
そしてアップ・オア・アウトの厳しい稲妻型のキャリアレースに優秀な人材を参加させ続けるために、福利厚生も含む魅力的なトータルコンペンセーションを提供することも求められる。在中国欧米系企業のマーサーへの依頼の多くは報酬・福利厚生のベンチマークであることもその事実を裏付けている。
「現地化」を現地の拠点任せにせず、本社も含めて傘型が一貫性をもって計画的に取り組んでいるのが稲妻型の傘型機能といえる。
 
  日系企業のキャリア育成  
  さて、日 系 企業の特徴は「匠」にあるのではないかと思う。ここでいう匠とは、長年の鍛練により高度な「芸」を体得した人そのものを指している。一般化され誰もが習得しやすい「技」ではなく、言葉では表しにくく感覚的で模倣に多くの期間と経験を要する特殊技能を持った名人ともいえる(「やきとり」と「フライドチキン」の決定的な違いはここにあると個人的には思う)。
芸を有する様々な匠を複合的に組み合わせることにより品質とコスト両面において競争力をもった「MADE IN JAPAN」を作りだすところに日系企業の強みがある。しかし同時に匠という人材そのものを競争力の源泉とする企業では、計画的かつ大量に匠を再生産することが難しいため、世界規模での事業展開においては弱みともなりうる。
例えばトヨタが世界同時モデル切り替えに向け、昨年「グローバル生産推進センター」を設立し、芸ではなく「標準化された技」を国内外の人材に修得させていることは、匠の抱える課題の取り組み例といえる。
匠を重視する企業では、 組織内に蓄積された芸を経営幹部に体得させるために、 重要となる関連領域をゆっくりと 「螺旋」のように異動させていく。しかし優秀な経営幹部を動機づけていくために、 定期的に人材を異動させていく必要がある (「できぬ堪忍するが堪忍」と育てられてきた日本人にも堪忍の限界はあると思われる)。そのため一貫性のある意匠が重要となる要職においても、意匠の習得とは無関係に定期的に螺旋をまわしてしまい、最悪の場合には意匠不在で匠頼りのでたとこ勝負となってしまっている。
しかしここにも大きな葛藤がある。昇進と報酬を平準化し仕事のやりがいや自己成長、仲間からの尊敬を動機付けの糧とする内的な動機付けが強みの日系企業では、暗黙的な順番に従って定期的に螺旋をまわす傾向が強い。この螺旋が海外拠点の要職も含んで回っているため、螺旋に乗っていない現地の優秀な人材にとって螺旋は「ガラスの天井」となる。そのため匠に強みを求める螺旋型の育成と、早期のキャリアアップを求める中国の優秀な人材の期待に大きなギャップができてしまっている。これが中国における日系企業が抱える最大の課題の原因である。
 
  螺旋型の傘型機能  
  こうした課題を抱える螺旋型のキャリア育成において現在の日系傘型企業に求められる機能は、
・日本人がつくべきポジションと中国人がつくべきポジションの洗い出し
・現地幹部ポジションへの現地人材登用に向けた本社との調整
・優秀な現地人材への早期のキャリア提示
ではなかろうか。
まずは中国人が担当すべきポジションと日本人が担当すべきポジションを洗い出し最適な現地化の絵柄をつくることが、現地の経営幹部を育成するための出発点となる。
その上で、中国事業を強化するためには本社から多くの匠を中国に派遣するのではなく、中国人の優秀な人材を可能な限り早期に螺旋に乗せていくように本社に働きかけることである。
また、「日式」の様に「誰とはいわないがみんなの中に将来の経営幹部を期待している人物がいる」といった一見誰にも昇進の機会があたえられているような曖昧でじれったい公平性は中国では通用しにくい。優秀な人材には直接的かつ早期に次のキャリアを提示することが、経営幹部へと育成し定着させるためには不可欠である。
これらは中国事業の成功だけではなく、グローバルに競争する日系企業においては近い将来の人材不足を補う上でも重要な取り組みとなる。
 
ウォーカーチャイナ今月号
巻頭インタビュー
特集
Business Event Schedule
Business Scene
企業レポート
連載
中国ビジネス相談Q&A
私も起業家
知的法講座
China Economic Review「全国」
China Economic Review「上海」
その他
上海、北京、中国全土の広告掲載について
ウォーカーオンラインではバナー及びテキスト広告スペースを用意しております。
広告掲載ガイド 掲載の受付