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人材育成の課題と定義 vol.7
------「中国現地日系企業にみる人材育成の課題と提案」 下 UFJ綜研(上海) 林久美子 |
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〜日中社員双方に見る教育課題〜 |
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林久美子(はやしくみこ)
1989年岡山大学卒業後北京に留学
1990年黒竜江省ハルビン科学技術大学にて日本語講師
1992年(株)ヤオハンジャパン入社、95年上海赴任、八佰伴総本部にて広報・PJ開発担当。
1998年電通の現地法人にて広告営業
2000年三和綜研(上海)有限公司(現UFJ綜研)入社。人事教育コンサルタントとして、日系企業向けの教育研修事業に従事。11年間に及ぶ中国経験を活かし、日中社員双方に価値のある教育提言をしていくことをモットーとする。 |
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日中社員間の溝 |
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弊社が日系企業に勤務する中国人社員一八五名に調査をした結果、モチベーションを下げた理由に「人事制度」以外に、「人間関係」や「認められない」というメンタリティの部分を指摘した声が半数を占めた。
【資料一参照】
多くの日系企業と接する中で、日本人と中国人双方から相手に対するコミュニケーションギャップの声はよく聞かれる。コミュニケーションは仕事の八〇%を占めると言われる。当地でのマネジメントをスムーズに進めるためには、コミュニケーションという問題を軽視することはできないだろう。今回は日中社員双方の角度からコミュニケーションスキルの改善点についてご説明したい。 双方に見られるコミュニケーション上の「悪い習慣」は下記のとおりである。

【日本人社員の悪い習慣】
・ 「これぐらいのこと言わなくてもわかるだろう」と言葉を省略する ・ 「こんなの日本では常識だ」とつい言ってしまう・ 「だから中国人は・・・」と断定する ・ 中国人部下の話を最後まで聞かない ・ 日本語のできる社員としか話さない ・ 中国人部下からホウレンソウ(報告・連絡・相談)の無いことに憤る 【中国人社員の悪い習慣】 ・ すぐに言い訳を言う ・ ホウレンソウを軽視する ・ わかっていなくても「わかりました」と言う ・ 理解不十分、一〇〇%の保証が無くても「問題無し」と言う ・ 根拠の無いその場しのぎの言い方をする「応該・・・」 ・ 曖昧な数値表現をとる「馬上」「差不多」「几天」 ・ 自分は無関係という他責の言い方をする「他們」これらコミュニケーション上の課題を永遠のテーマとせず、ともに働く 以上は相互理解を促進するアプローチの方法が必要となるだろう。
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中国人社員とのコミュニケーションスキル |
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一方、日々の業務の中で中国人社員とのコミュニケーションに「苛立ち」を感じていない人も多い。けしてコミュニケーションギャップを感じていないのではなく、彼らに理解納得させ、状況を前進させるよう自分なりに工夫している。そのような人に特徴的なのは、「異文化」に対して許容範囲が広いことである。
まず、左記のように、マネジメント層各人の人材育成に対する概念の転換が必要である。
『異文化コミュニケーションワークブック』(三修社 八代京子、荒木晶子、樋口容視子、山本志都、コミサロフ喜美 著)では異文化理解には左記一〇項目の態度が必要だと紹介している。
一. お互いの考え方を理解、尊重する姿勢
二. 自文化中心の物の見方だけにとらわれない態度
三. オープンマインド 四. 即断せず判断を保留する力 五. 感情をコントロールする力 六. 柔軟な心 七. 相手への共感 八. 良い聴き手となること 九. 違いを楽しむ気持ち 十. 自分の失敗を笑うことができる余裕
中国人社員との日々のコミュニケーションをスムーズに行っている人には、事実に対して相対的に見る目、最初から決めつけない謙虚な態度、常に前向きな気持ちがある。「彼らは経験が無くて知らないのだからできるはずありませんね。やり方はこちらが教えてあげないと」「ホウレンソウをしないのであれば、彼らがしなくてもこちらがわかるようなしくみをつくればいい」というようなことを言われる。「できない→だからだめなのだ」というネガティブな発想ではなく、「できない→できるように教えよう/システムを変えよう」というポジティブ思考をするのが特徴的である。
またこのような人に共通して見られるコミュニケーションのとりかたは下記のとおりである。
一. 論理的な説明をしている 二. 的確な質問により事情を把握しようとしている 三. 明確な指示命令を出すよう気をつけている 四. 言いっぱなしにせずよく確認をとっている 五. 社員との対話を心がけている 何度でも同じことを繰り返し言い続ける粘り強さと、社員に理解してもらおう、不必要な誤解を回避しようという相手への愛情を感じる。中国では些細な誤解ですぐに中国人と日本人との対立になりやすい。「日本人は中国人を信用していない」という意見は中国人社員からよく聞かれるが、ある社員にそう思う理由を聞いたところ「日本人の部長は中国人部下が推薦した取引先は却下して、自分が探してきた取引先とは取引をしている」ということであった。お互いもう一歩踏み込み、中国人部下は推薦する理由を説得力のある資料を作成して提出し、日本人部長もなぜ却下するのか、会社基準に合わない理由を相手が納得できるよう説明をしていれば、恐らくこのような誤解は避けられたのではないだろうか。 日本で自分が何も言わなくても部下が察してくれた環境にいた人の場合、中国で中国人部下を相手に明確でわかりやすい言葉を使い、背景や目的まで細かく説明するのは骨の折れることである。そこで中国人社員がわかるレベルにまで落とし込んだ詳細な作業マニュアルを作成することもコミュニケーション促進の一助になると考える。
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中国人社員の説得能力を高める |
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一方、中国人社員による日本企業や日本人上司に対する不満の声を聞く中で、中国人社員にもコミュニケーションスキルの教育の必要性を強く感じる。中国人社員からよく出る意見としては、「日本人の考えを押し付ける。日本人は傲慢だ」「提案したらさまざまな角度から質問を投げかけられ、結局提案を却下された。中国人を信用していない」などである。「上司を説得するくらいの意気込みを見せてほしい」「ローカル社員から一向に提案が出てこない」という日本人上司の嘆きと矛盾する。
リーダーシップのある日本人上司が中国人を動かすコミュニケーションができると同様、いわゆる「できる社員」と評価される中国人社員には「説得能力」がある。組織の中で自己を発展させたいと望む以上、自分の意見を上司に理解させ、必要な資源提供を上司に承諾してもらい、上司の権力を利用して自己実現するくらいのパワーが必要である。そのためには「日本人上司を動かす」ための左記コミュニケーションスキルが中国人社員には必要となる。
・ 提案内容は数値、データ、事例に基づく根拠や分析で構成され論理的である
・ 提案資料にはグラフや図、写真がもりこまれビジュアル的に見やすくわかりやすい
・ 実施過程においてはポイントをおさえたホウレンソウをおこたらない
・ 仕事に責任感をもち他責にしない
・ 会社や上司の立場を考える
これらスキルは一朝一夕に身につくものではない。美辞麗句を使い、文章は長ければ長いほうがいいという教育を受けてきた中国人社員には、日本人が好むコンパクトで一目瞭然のわかりやすい資料を作成するのは難しい。日々の業務を通じて教える必要がある。最初はエクセルのデータを貼り付けた資料しか作成できなかった社員が、日本人部長の教育指導によりグラフ化し分析した資料ができるようになった、という事例もある。
人材マネジメントとはつまり日々のコミュニケーションの積み重ねではないだろうか。日中社員双方が相手の価値観を理解し、効果的なコミュニケーションを行うことのできる社内の環境づくりを構築することこそがトップマネジメントとしての大きな役目であろう。 |
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