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人材育成の課題と定義 vol.6
------「中国現地日系企業にみる人材育成の課題と提案」 上 UFJ綜研(上海) 林久美子 |
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〜社内教育体系構築の方法〜 |
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林久美子(はやしくみこ)
1989年岡山大学卒業後北京に留学
1990年黒竜江省ハルビン科学技術大学にて日本語講師
1992年(株)ヤオハンジャパン入社、95年上海赴任、八佰伴総本部にて広報・PJ開発担当。
1998年電通の現地法人にて広告営業
2000年三和綜研(上海)有限公司(現UFJ綜研)入社。人事教育コンサルタントとして、日系企業向けの教育研修事業に従事。11年間に及ぶ中国経験を活かし、日中社員双方に価値のある教育提言をしていくことをモットーとする。 |
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1. 日系企業の教育への投資 |
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毎年中国系の人材紹介サイト「中華英才網」が実施する中国人大学生に人気のある企業ベスト五〇社の中には、マイクロソフト、P&G、ノキアなどの欧米系、海爾、聯想などのローカル系の大手企業が名をつらねる。一方二〇〇四年度の結果では日系企業のランクインは、二六位のソニーと四六位の松下わずか二社のみである。ベスト五〇社に入っている企業の特徴としては、中国の大学に寄付をしたり、中国国内での宣伝量が多い消費財メーカーであるなど、若い大学生の目から見ると「イメージ」として好感がもてるといったことも人気がある要因のひとつといえよう。
一方、この人気投票の結果を見るまでもなく、日系企業に対するイメージが、決して高いとは言えないことは、「優秀人材が定着しない、採れない」などの悩みを抱えている方にとっては、年々深刻な経営課題となっていると言えよう。
その原因としては、人事制度が成果主義ではなく悪平等、社内にはガラスの天井がありローカル社員の昇格は頭打ち、社内に体系的な教育制度が無いといった人事制度に端を発するものが大半である。ローカル社員を労働コストではなく「人材」として位置づけ、いかにその潜在能力を発揮させるかということに、トップマネジメント自らが発想の転換をはからないかぎり、日系企業に見られる人材マネジメント上の問題は永遠に解決できないだろう。
下記は、中国にある非日系有力企業の教育研修に投入する時間数であるが、これらの企業と比べることにより、自社の教育研修への投資不足をお感じになるのではないだろうか?弊社研修参加者を対象とした調査では、日系企業に勤務する管理職は勤続五年間のうち受けた管理職研修は合計五〇時間が平均値である。多くの欧米系各社における管理職の年間研修時間が四〇時間であるのと比較すると実に五分の一の時間投入である。「自己の市場価値を高める」ことに熱心なローカル社員から見ても、この数字は魅力の無いものであろう。
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2. 人材育成は誰の責任か |
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中国に派遣されてくる日本人社員は往々にして生産や営業、財務の専門家であり、人事専門家が派遣されてくるパターンは大手傘型企業の一部に見られるのみである。日本本社であれば、社員教育は人事部や教育部門が主体となり企画運営しているため、派遣されてくる日本人社員の中には、「ローカル社員の育成が自らの役目である」と自覚している人は少数派であろう。しかしマネジメントの最大の役割は「部下育成」であり、「自らの手で後継者を育成する」というくらいの意気込みが必要である。「社内に優秀人材がいない」という嘆きは、企業訪問をしていてもよく聞かれる。しかし優秀人材を確保する方法は、「外から採る」か「中から育てる」かの二つに一つであり、他の秘策はないのである。「率先垂範で部下育成をする」か、それが不可能であれば、外部専門家に委託してでも社内人材育成を実行しないかぎり、社員の能力は永遠に向上しないだろう。
まず、左記のように、マネジメント層各人の人材育成に対する概念の転換が必要である。
●人事部の責任→管理職全員の責任
●福利厚生の一環→業務上必ず必要
●ミスをしたから訓練→業績向上のために訓練
●業務能力強化に主体をおく→個人の資質向上に主体をおく
●個人の訓練に重点をおく→組織学習を強化
また、社内の人材育成は一部の人だけの役割ではなく、社員全体が担う職責である。各層ごとに自己の担う責任を自覚しなければならない。
【経営層】
● 企業ビジョン、経営目標、戦略、人材への期待と要求を明示する
● 行動と予算面でサポートする
【各部門マネージャー】
● 主体的に教育ニーズや意見を提出する
● 部下の研修参加を動機付ける
● 部下の研修参加後のフォローをする
● 日々の業務においてOJTをする
【人事部門】
● 人事管理と教育訓練を効果的にリンクさせる
● 人材データを管理する
【教育担当者】
● 企業の教育ニーズをまとめ教育計画をたてる
● 教育のPDCAを貫徹する
● 各部門とコミュニケーションをとり部門長の支持を得る
● 研修カリキュラム、教材、講師を開発する
● 社員の研修参与意識を高める
【社員】
● 積極的に研修に参加し、学んだ内容を実務で応用する
トップマネジメントから社員にいたるまで、企業における各社員が人材育成に対する役割認識を強くもつためにも、人材育成と人事評価項目をリンクさせることが重要である。例えばマネジメントクラスであれば、「○年以内に自分の後継者を育てる」「後継者を育成すれば昇格できる」「年間四〇時間の研修を下位層の社員に実施する」ことをミッションとし、人材育成に本気でとりくむ姿勢を本人にもたせることが必要である。 |
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3. 人材育成を体系化する |
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企業の人材育成の目標を達成させるためには、階層別、職能別、目的別に教育内容や能力開発の方法を体系化し、企業戦略に基づく人材育成をする必要がある。人材育成はけっして予算が余ったり、時間があいたときに実施するものではない。また社内に教育体系があることにより、ローカル社員に企業内でのキャリアデベロップメントの未来図を見せることができ、「この企業で自分は成長できる」と社員への動機付けにもなる。
下記は教育体系構築のフローである。
教育体系構築においては、けして人事担当者任せにせず、トップマネジメントが自らリーダーとなり推進することが大切である。いくらよい教育内容でも企業ニーズに合致していなければ意味が無い。教育体系構築の成功のポイントは、三番目の「企業の教育ニーズ収集」である。教育ニーズの把握は、組織面、仕事面、個人面から多角的に見る必要があり、ヒアリングやアンケート、ふだんの業務情況観察などの方法をとる。ニーズ把握のポイントは左記のとおりとなる。
【組織面】
● 企業の経営理念と価値観は何か?
● 企業は社員にどのような行動基準を望んでいるか?
● 我々が業界で成功するキーポイントは何か?
【仕事面】
● 経営目標を達成するための重点的なスキルと課題は何か?
● 我々はどの部門の能力を強化すべきか?
● 解決しなければならない問題は何か?
【個人面】
● 現状職務に必要な知識、スキルで不足している点は何か?
● 将来的に必要な知識、スキルは何か?
● 社員の研修に対するニーズは何か?
日本本社で実施している教育内容をそのまま現地法人に導入するのではなく、現地実情に合致した内容にすることに留意しなければならない。例えば企業文化、企業価値観なども本質的な部分は普遍であるが、現地社員が理解しやすい、受けとめやすい事例を用いる工夫が必要である。
一方社内に立派な教育制度があってもトップマネジメントが「尊敬されるリーダー」でなければ、中国での人材マネジメントの成功はありえないだろう。中国では経営者自身が戦略であるということを、トップマネジメント自らが自覚しなければならない。次回は日中社員双方の視点から、さらに具体的な教育課題についてご紹介したい。
(教育体系イメージ図 参照) |
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