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高レベルの地場企業とパートナーシップ
 
高レベルの地場企業とパートナーシップ 冷凍野菜・原料供給に道
 
発展を象徴するアモイ市街 味の素が中国でのビジネスを加速している折、福建省廈門(アモイ)市で今春設立したばかりの合弁会社が管理する農園から生鮮野菜の出荷が始まった。味の素はアモイで輸出用冷凍食品を生産するが、これと前後し、食品研究開発(R&D)拠点(三八ページ「松江専欄」に詳述)のほか調味料、レトルト食品、医薬用アミノ酸の生産拠点がそろった上海市松江区、またやはり冷凍食品などの二生産拠点がある江蘇省連雲港市と、食品加工においては開発から一貫する工程をほぼ確立したことになる。
発展を象徴するアモイ市街
安定生産の橋頭堡
アモイの合弁「廈門味之素来福如意食品有限公司」は、味の素の子会社である味の素冷凍食品とアモイ如意集団有限公司、さらにライフフーズの三社が今年四月に設立した。冷凍野菜製品および中国(二工場)と日本(九工場)の味の素グループ工場向け野菜原料生産を行う。
新会社は資本金七〇〇万米ドル。出資比率は味の素冷凍食品が五一%、如意集団が三〇%、ライフフーズ一九%である。如意集団から現有する冷凍野菜製造部門を譲り受けて発足した。  種苗・栽培などの農場運営(自営農場:約四六〇万平方メートル)と冷凍野菜生産を行う同集団の年産能力は一万トン。これまでも専門商社であるライフフーズを通じ、味の素などに冷凍野菜原料を供給していた。
若い女性らにより、冷凍野菜原料のより分け作業が続く
若い女性らにより、冷凍野菜原料のより分け作業が続く
種子の発芽室で 台湾地区の対岸にあるアモイは温暖な気候。年間を通じてさまざまな野菜栽培が可能だが、エダマメやエンドウ、キクラゲ、カリフラワー、タケノコなど、まめ類、きのこ類、花・くき菜、根菜、葉ものと、まずあらゆる野菜を取り扱っているのが特徴だ。しかも低農薬による有機栽培が主。質が高く新鮮であるだけでなく、生産過程また出荷時などの残留農薬検査も徹底している。

発展確実な冷凍食品
日本において、冷凍食品は長期的、構造的に数少ない成長分野とみなされている。これには、女性が働きに出て当たり前といった社会構造の変化、経済のグローバル化、またさまざまな技術の進歩が反映している。
しかし、消費構造の裾野が拡大しているといっても、その需要にこたえるだけの商品供給が安定して継続していなければならない。そのためには、まず健康的に
種子の発芽室で

も安心して摂取することのできる原料の確保も必須であり、これらを総合的に保証できる一貫した確固たる戦略の策定が先決となる。
味の素冷凍食品は、安心できる畜肉や野菜などの安定確保のため、これまでにも「戦略原料」供給に当たる子会社や関連会社を設立していたが、廈門味之素来福如意食品もその一貫と位置づけられる。
久保田正男董事長兼総経理が説明するように、特に同公司の設立は「農地から製品までの全プロセスでの安心品質を確保する」ものとして大きな意義を持つものである。
自営農場であるエダマメの畑。除草作業を続ける農民ら
自営農場であるエダマメの畑。除草作業を続ける農民ら
「インテリ農民」副董事長
久保田正男董事長兼総経理 今回の選択のなか、如意集団の存在は、味の素ならびにライフフーズにとって、実に福音とも呼べるほどの価値があったはずだ。
経営に当たる陳珠涼董事長(廈門味之素来福如意食品副董事長)は四三歳。合弁会社があるアモイ市同安区馬巷亭のまさに地元出身である。福建農業大学で野菜栽培を専攻し、とりわけ種苗に関する研究を続けてきた「インテリ農民」として、郷鎮企業からいまに至る近代的企業を育て上げた手腕は並大抵のものではない。
農業の猛勉強を続けるかたわら、中国の土地制度も研究し、九四年以降、周辺の土壌が優れた農地を一ムー当たり(一ムーは約六・六六七アール)年七〇〇〜八〇〇元で借り上げ、当時中国で唯一の自営農場を立ち上げた。
自営農場とは、所有権は農民(編注:農地は、都市部の国有地と異なり集団所有)に残したまま、その使用権を借用するもので、農民とその子女の雇用は継続している。陳董事長はさらに区分した土地に大卒の専門家である管理人を派遣、統一した指導のもとで有機栽培を一元管理していった。
久保田正男董事長兼総経理

種子や苗(なえ)が自家製なら肥料も自家製である。化学肥料は「土が固くなる」といって用いていない。
陳董事長は「農民に農薬を持たせない」主義により、農薬の使用も厳しく制限管理している。
また「わたしの理想は、種苗の工程も含め、農業を工場化すること。農業の近代化は自分が生まれ育った地元に対してだけでなく、人類に対する貢献でもある」と強い自負を誇示する。
大型の散水機が動き回る種苗プラント
  大型の散水機が動き回る種苗プラント
パートナー選び成否の鍵
陳珠涼副董事長 味の素とライフフーズは如意集団に向け、高い安全意識とより高品質の加工生産技術、また進んだ経営管理ノウハウを伝え、さらに安心できる食品を待つ日本市場という大きな販路をもたらした。
中国産野菜に対する関心が高まっているなか、このようにシステムだった安全への取り組みを中国企業自らが進めていた事実は重い。
古い体質に染まったままの企業経営が残るなか、いま高い技術とモチベーションを有する地場企業はけっして少なくない。味の素のこの合作例のように、いかにそういったパートナーを探し出せるかどうかが、中国ビジネス成否の決め手となる時代である。
陳珠涼副董事長
上海味の素食品研究開発センター 商品開発の要衝 中国国内市場狙い&日米拠点と連動
 
上海味之素食品研究開発中心有限公司(上海味の素食品研究開発センター)は、主に食品原料の探索や原料分析、原料供給業者・製造委託業者の監督と指導と安全食品の開発、また中国食文化研究などを行っている。いわば、福建省廈門(アモイ)市のアモイ味の素ライフ如意食品や江蘇省連雲港市の二生産拠点などと連動した、中国市場における味の素ブランド商品の開発・研究(R&D)の要(かなめ)であるといえる。
この日、ホテル勤務が長い広東料理のベテランシェフによる調理披露が続けられていた 辻川智明総経理によると、上海松江工業区の開明路にある同センターは、在米国の食品開発センターと日本の味の素食品研究所と組み、三極による食品R&Dを推進する体制を構築し、運用する目的で設立された。
二〇〇三年二月の開業。資本金二〇〇万米ドルのうち八〇%を味の素が、また残り二〇%を味之素(中国)有限公司が分担した。建物面積は約三四〇〇平方メートル(二階建て)。従業員およそ三〇人が勤務する。このうち日本人が四人駐在する。
この日、ホテル勤務が長い広東料理のベテ
ランシェフによる調理披露が続けられていた
「カップスープが決め手」と辻川雅博総経理
「カップスープが決め手となる」と辻川雅博総経理
分析室や開発室を設けているほか、プレゼンテーションキッチンルームが自慢。前者は当然ながら安全食品の模索のため。だが後者は、単なる厨房とは異なり、招いた中華料理のベテランシェフに、担当研究員の前で調理の極意を披露してもらうことが目的。シェフの技術を取り込むのと同時に、シェフのネットワーク化を図る努力を進めている。
商品開発の焦点は、むろん中国市場向けである。昨年一一月から販売されているコーンやトマトを使ったカップスープなどは、センターで開発された。また日本向けにも「ごはんがススムくん」「クックドゥ」などの両シリーズのうち中華アイテムのものについては、レシピなどのノウハウがこの上海・松江の地から発信されている。
「日本と中国では味覚や風味の違い、さらには商品となった場合の生産コストも大きく異なる」と辻川総経理。そのため、同総経理はセンターの狙いとして「これら差異のある条件をアジャストメント(調整、調節)すること」と言い切る。
当初、松江への進出決定前、生産経験が蓄積された冷凍食品工場などがある連雲港での立地も考えられたが、同地ではR&Dに必須の機器や資材が調達しにく
上海味の素食品研究開発センター
上海味の素食品研究開発センター
上海味の素食品研究開発センター
いといった難点があった。さらに情報量の多寡、また競争相手の有無などの条件が考慮されたうえで、上海に決めたという。辻川総経理は「いまになって言えることだが、優秀な人材を得られやすいことも上海最大の特長だった」と振り返る。
上海は大学や研究機関が多い。松江や隣接する金山の両区には、農芸化学などを含む食品関連の専科学校(専門学校)が開設されており、研究人材も比較的容易に調達できたメリットは大きい。
「上海は世界に目が向いている都市。海外経験を持った者が多いことも特徴で、あなどれない市場でもある」として、まずこの上海を制することが中国ビジネス成功の鍵ともなるようだ。そのため辻川総経理は「地場メーカーの買収や提携などもありえる」と積極的な姿勢を強調してやまない。
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