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  グレーター上海の経済発展と日系企業競争力強化の視点(下)
                                          ------UFJ綜研(上海)有限公司  総経理  太田謙二
 
  競争力の再点検が急務  
  近年、企業グループとしての中国事業の競争力強化が喫緊の課題とするご相談が増えている。
これは同業他社の進出が出揃うなど、経営環境がめまぐるしく変化する状況においては当然の成り行きである。
同時に中国関連の売り上げ比率が高まるなか、「中国関連事業の変動リスク」をどう考えるべきかという経営トップの問題意識も高まりつつある。これらが相まって、事業部主導型の進出戦略の見直しを図ろうという動機づけにつながっている。
ここで問題となるのが如何に有効な統括機能を築くかということである。
単なる傘型会社の設立だけでは、得られるメリットに制約が多いこともあり、選択をためらう企業が多いようである。特に傘下に合弁会社が複数あるケースでは、パートナー側が出資を受け入れない場合も想定されるなど、調整が困難な局面も予想される。
傘型会社設立を考える企業側の意識としては、
(一)グループ経営戦略の構築やビジョンの共有
(二)人事・知財・広報活動などスタッフ管理機能を一本化
(三)統括会社による買い取り販売の実施
などが挙げられる。先行進出した事業部現法に対して後付けで統括会社を設立しても、ノウハウも経験も未熟な形式的な組織では、既存の現地法人と利害を一致させることは意外に難しい。例えば、製品の買い取り販売にしても二重の営業体制となり、コスト増になるだけの販社機能では不利になるだけである。
現在の中国の外資系企業にとっての投資環境は、規制緩和が進みつつあるものの、貿易権や流通に対する完全な規制緩和にはまだ時間を要する。制約が多いからこそ、現場実行力を高めることが必要となる。そして経営管理力を高めることが将来の自由度拡大時における準備にもつながるといえる。それを支援する機能が今こそ統括会社に求められる役割である。また現地法人自身にとっても経営の自己チェックにより、経営ロスの排除も実現可能となる。
このような管理力の強化を通じた戦略構築のための体質づくりとリスクヘッジが、とりもなおさず「経営自主点検」の意義でもある。
 
  経営自主点検の意義  
  「経営自主点検」の目的は、自社の管理レベルを購買や販売など業務カテゴリーごとに細かくチェックすることにより、現法で何が管理不十分かを明確にし、戦略的な目標設定を行うという一種の社内システムづくりである。
まず、年度会計監査など通常法規で定められている外部監査と「経営自主点検」の違いを明確にしたい。現在各企業が実施している監査は一般的に税法や会社法をベースにした「税務監査」的な要素が強く、財務諸表の根拠となっているデータの照合などは実施されていない。例えば、在庫レベルが高いという問題にしても、果たしてその数量が正しいか、現場でチェックするようなことはしない。つまり、管理レベルが低くても高くても、その結果のみを検証しているに過ぎない。そのため、仮に毎月の収益の変動幅が大きかったとしても何故そうなるのかが分からないケースが多い。
まず、はじめに重要になるのは、チェックに必要なマニュアルを作成し、五〜六人のメンバーの抜擢と基礎教育を行うことである。リーダーには、本社経理部長など社内の第三者が管理責任者となることが望ましい。マニュアルに関しては、その企業の過去の蓄積にもよるが、販売、購買、製造・原価管理、品管など管理項目ごとにチェックすべき内容を抽出する。
例えば、不正などによる経営ロスが多い購買管理については、次のようなチェック項目を設ける。
購買管理では、特に適正量の現物が確実に存在するかということがチェックポイントとなるが、廃棄材料の横流しや取引開始時の価格や品質チェックが不十分なままであるケースなどが多く指摘される問題である。実際にこのような問題に総経理のみが気づいていなかったという笑えない事例がある。
次に現場でのチェックに入る前に肝要なのが、既存経理管理書類の内容チェックである。ここにその主なものをご紹介する。
よく多くの企業でこれらの資料をほとんど作成していないという問題に遭遇する。この時点で企業の管理レベルを露呈することとなる。これ以外にも経営ロスがどういう原因で発生しているかなどの詳細資料があることが望ましい。
 
  経営自主点検で分かること  
  一般的に経営点検の意義は「経営管理上やるべきことがどの程度確実に実施されているか」を知ることにある。
まずこの己を知り尽くすところからマネジメント上の課題が明確になり、次に改善すべき点が見えてくることとなる。
改善の積み重ねは戦略ではない、という一部の考えがあるが、実際の日本企業の現場では、何年も繰り返されることにより、それが企業の強みの形成と差別化につながった点で戦略的である。筆者が考える日本企業の隠れた戦略性は「事業を容易には諦めず継続するところ」にあると見ている。必ず成功するとは言えない戦略オプションではあるが・・・。
ただ中国現法においては、異文化経営を実践することが前提となるため、この「継続する組織づくり」が大変に根気の要る仕事となる。だからこそ、現場実行力を達成できた企業こそが成功を収められるということになる。
今後、人材やノウハウ不足のため、現法単独では困難な現場実行力の強化をサポートするのが、企業グループ統括部門のめざす姿である。これは一種の内部コンサルティング企業を設けることにつながる。このような管理力強化を通じ、年間で何%の経費削減を図るなどの改善目標が設定される。そしてその成果を金額的に評価することを可能にする。結果として、改善に必要な経費確保も可能となる。これが傘型会社自身の運営経費を捻出する根源にもなるのだ。
このように経営自主点検の実施を通じ、企業グループ全体の良循環構造づくりが進み、日系企業の競争力強化が実現することに期待したい。
 
  太田謙二(おおた・けんじ)   
 
1958年東京生まれ。85年より松下電器産業鰍ノて中国向けプラント輸出、完成品輸出などを担当。88年からの3年間、広州事務所所長として赴任。94年且O和総合研究所(当時)入社。多くの中小企業の海外進出プロジェクトなどを手がける。96年上海事務所所長、98年に大手シンクタンクとして初の独資現地法人を設立し、総経理に就任。北京語・広東語を自由に扱う、現場実践型コンサルタントとして日中間で活躍中。利益実感あるコンサルティングを信条とする。
 
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