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知的法講座
 中国知的財産権講座
「中国の知財の今後の展望」
 
黒田法律事務所 吉村 誠 弁護士
中国における今後の知的財産権を巡る展望は、模倣品対策の強化による知的財産権の保護強化という点とともに、中国企業による知的財産権の創出を巡る適切な対応も求められると予想される。

黒田法律事務所
吉村 誠 弁護士
■略歴■
京都大学工学部建築学科
最高裁判所司法研修所
日本弁護士連合会登録・東京弁護士会登録 (52期)
 
  1 模倣品対策  
  2001年のWTO加盟以来、中国においては知的財産権関連の法令が急ピッチで整備されてきた。また、中国政府は08年の北京オリンピックの開催に向けても知的財産権侵害に対する取締りを強化する旨を発表し、現に取締りの強化の結果、05年に中国公安部が立件した件数は前年比で約52%増の1799件であり、06年1〜10月に立件された知財侵害事件は、前年同期比で31.5%増の1904件となっている。
しかしながら、依然として、中国における模倣品被害は深刻である。DVDやCDやブランド品の海賊版にとどまらず、家電製品や工業製品においても知的財産権侵害が多数行われている。このような中国政府の積極的な対策にもかかわらず、知的財産権侵害は相変わらず中国国内で氾濫している背景には、中国国民の知的財産権保護に対する関心の薄さが挙げられよう。日本企業としては、海賊版が存在する市場にこそ商機があると捉えて、海賊版との差別化を図るように積極的に付加価値をつけることで正規版としての価値を高める工夫や、業界団体全体での模倣品追放キャンペーンなど、中国国民に対して、積極的に正規版の良さや模倣品の問題を啓発していくことも重要である。
また、知的財産権侵害をした場合、中国においては裁判において認定される権利者に対する損害賠償金額が低額であるという点も問題である。つまり、知的財産権侵害をしても権利者に支払うべき賠償金が低額であるため、侵害者としては、訴えられなければ儲けもの、訴えられても低額の賠償金を支払えば良いという、いわゆる「やり得」の状況がある。これは、知的財産権侵害が行われた場合の損害額の立証が全て原告(権利者)側に負担させられており、しかも、証拠能力に大幅な制限が存在することに問題がある。日本においても、この十数年で知的財産権侵害における損害賠償請求の立証の容易化という点が大幅に改善されたのであり、中国においても、同様に立証の容易化が制度化されることが強く望まれよう。
 
   
  2 中国企業による知的財産権の創出  
  中国における知的財産権の問題といえば、上述の模倣品の問題がクローズアップされがちではあるが、既に、中国における知的財産権に関する問題は新たなステージに突入しているといえる。これは、中国企業(独資企業も含む)による、知的財産権の創出というものである。今後の中国を考えていくうえで、中国企業による知的財産権の創出という点は非常に重要である。
事実、外資系企業による中国でのR&D(研究開発)投資は非常に積極的である。中国においては、優秀な頭脳を持った学生・研究者が多くいる。この優秀な研究者達を積極的に登用していくことが重要である。のみならず、今後は、中国の国内企業による知的財産権の創出により、日本企業が知的財産権侵害の被疑侵害者として訴えられる可能性が高まると予想されることに注意しなければならない。このことは、従前は中国と同様に模倣品が多かった韓国や台湾地区において、先端技術分野で独自の技術を開発する企業が増えてきて、日本企業に権利行使する事例が散見されるようになっていることからも容易に予想できよう。
10年、20年先を見据えた場合には、先端技術分野で日本企業が中国企業から訴えられる可能性は大いにある。日本企業としては、自社の技術分野における中国企業の動向にも注視して、自社と競争関係に立ちうる企業と早期にアライアンスを結ぶなどの方策も検討しなければならない。
さらに、独資企業による知的財産権の創出という面では、今後、職務発明による報奨金の支払請求の問題がより顕在化してくるのではないだろうか。日本における職務発明訴訟は、いわゆる中村・日亜事件の和解による終結を機に沈静化してきてはいるが、中国においては、従前は職務発明訴訟といえば権利の帰属を巡るものがほとんどであったが、近時は報奨金の支払請求訴訟も少なからず提起されるようになっており、今後、減少する要因は存在しないように思われるので、将来的なリスクとしてはかなり大きいものになりうる。現状の中国特許法では、私企業における職務発明の報奨金の算定についての規定が不明確であることは否定できないので、この点を明確にするよう中国に対して要求していくことも必要であろうし、何より、独資企業内での職務発明についての報奨金の算定方法を確立させておくことが重要であろう。
 
   
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