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知的法講座
 中国知的財産権講座
「2006年の中国の知的財産権に関する総括」
 
黒田法律事務所 吉村 誠 弁護士
中国においては、模倣品被害は依然として深刻であるものの、中国政府及び外国企業は積極的に知的財産権の保護活動を行っており、2006年における中国での知的財産権保護に関する活動を概括する。

黒田法律事務所
吉村 誠 弁護士
■略歴■
京都大学工学部建築学科
最高裁判所司法研修所
日本弁護士連合会登録・東京弁護士会登録 (52期)
 
  1 中国政府による知的財産権に関する活動  
  2006年の中国政府による知的財産権の活動を総括すると、2005年に引き続き、中国政府は、内外からの知的財産権保護政策の要求を受け、積極的に知的財産権の保護政策を実施してきたということができる。  
まず、国家知識産権局が、専利法の第3次改正を行うことを表明し、国内外から多くの意見を受け容れてきたことが挙げられる。専利法の第3次改正においては、これまで公知・公用について、国内公知とされていたものが世界公知を含むものとされている。これまでは、日本の展示会で公開された製品のデザインについて、刊行物公知になる前に中国において意匠出願しても登録されてしまうということがしばしば行われてきたが、改正専利法によれば、かかる場合にも無効理由となり、第三者による意匠権の「横取り」が防止されうる。また、特許権侵害について、いわゆるオールエレメントルール及び均等論の導入、禁反言や公知技術の抗弁の導入等により、権利者と被疑侵害者との間の訴訟上の攻撃防御方法が明確になってきたといえる。もっとも、間接侵害導入が未定であったり、さらには、医薬品に関する特許権の保護期間の延長については、依然として中国で実施される見通しが立っていないなど、国際的調和の観点からは必ずしも十分とはいえない可能性があり、損害賠償額の上限についての規定や消滅時効の起算日という点で不明確な点についても改善の余地はある。  さらには、情報ネットワーク伝播権保護条例の公布により、インターネット上の著作権侵害に対するサービスプロバイダの責任を規定することで(日本のプロバイダ責任法と類似する)、インターネットによる著作権保護を図っている。  
また、人民法院による活動に目を向けると、専利法、商標法及び著作権法改正後に人民法院が受理した訴訟前の差止が約300件であり、差止命令の決定がなされた割合が88%に達するという統計が発表されている。また、バイアグラを巡って、中国の医薬品メーカが無効審判を請求し、国家知識産権局の特許再審委員会が無効審決をしたことについて、北京市第一中級人民法院が当該審決を取り消す判決を言い渡した。当該判決により、中国が知的財産権の保護を推進していることが強く印象づけられたといえよう。他方、本稿でも過去に取り上げたクレヨンしんちゃんを巡る事件では、必ずしも真の権利者にとって満足のいく結果が得られていない。この点は、中国政府に対する知的財産権保護強化の要求について、日米両政府の態度の違いが現れているとみるのはうがった見方かもしれないが、日本政府の積極的な姿勢が望まれる。
 
   
  2 外国企業による知的財産権に関する活動  
  まず、R&Dについては、やはり2005年に引き続き外国企業による中国でのR&D投資が活発であるということがいえよう。R&Dについては、医薬品、ハイテク、自動車、食品等のメーカによるR&Dが活発であり、また、近年の特徴は大学とのR&D活動が積極的になっているということである。  
また、中国における出願活動は依然として活発である。国家知識産権局の発表によれば、今年上半期、特許、実用新案及び意匠の出願は約25万件であり、前年同期の約25%増であり、このうち外国からの出願は約5万件で、前年同期の約8%増であった。ただし、国外からの出願案件の権利化については、約2万件が権利化されたにとどまり、前年同期の約3%減となり、外国企業にとって必ずしも順風なものとはいえない結果となっている。  
さらに、中国国内での模倣品被害は相変わらず深刻であるが、日本自動車部品工業会が上海での上海国際自動車部品展覧会において、真正品と模倣品を比較して展示するという試みを行うなど、業界団体を挙げて模倣品対策を行っていくという姿勢を見せるということは模倣品対策としては非常に有効な対応であり、今後もさらなる模倣品対策を行っていく必要があろう。
 
   
  3 まとめ  
  中国政府も外国企業も積極的に知的財産権保護に向けた活動を行ってきたといえるが、その一方で、依然として模倣品は中国市場で溢れかえっている。この点は、中国国民の知的財産権保護に対する意識の向上が必要となるが、抜本的な対策は打ち出されていないのが現状である。  
       
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