「特許権と実用新案権の相違を踏まえた知財戦略」 |
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黒田法律事務所 吉村 誠 弁護士 ■略歴■ 京都大学工学部建築学科 最高裁判所司法研修所 日本弁護士連合会登録・東京弁護士会登録 (52期) |
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| 1 特許権と実用新案権の相違点 | |||||
| 中国特許法で定められている特許権(発明特許権)と実用新案権(実用新案特許権)の違いとして以下のものが挙げられる。 @保護対象の相違 特許権の保護対象は発明であり、実用新案の保護対象は考案である。発明とは、製品、方法又はその改良について出された新しい技術案をいうと定められ、考案とは、製品の形状、構造又はそれらの組み合わせについて出された実用に適した新しい技術案と定めている。このように、実用新案権で保護されうるものが製品の形状や構造に限定されるのに対し、特許権で保護されるものは、製造方法や使用方法といった方法等も含まれるため、広くなっている。その結果、ソフトウェアについては、特許権で保護される場合がある。 A出願手続(実体審査の有無)の相違 特許権は、実体審査を経てから権利付与されるのに対し、実用新案権は実体審査なしに権利付与されるという点が大きな違いである。特許出願人は、原則として出願日から3年以内に、国家知識産権局(日本でいう特許庁に相当)に実体審査を請求しなければならない。この実体審査では、主に発明の新規性、進歩性及び実用性について審査が行われる。 これに対し、実用新案出願に対する審査は、書類等の不備の有無をチェックする予備審査を経て拒絶の理由が発見されなければ、実用新案権が付与される。 実体審査の有無という違いにより、実用新案権は出願から権利付与までに要する期間は約6ヵ月と短く、他方、特許権は出願から権利付与まで数年、先端技術分野はさらなる期間を要すこともあり権利化まで長期を要している。 B存続期間の相違 特許権の存続期間は出願日から20年であり、実用新案権の存続期間は出願日から10年である。したがって、特許権は、権利付与されるまでに時間がかかるが、保護される期間は長いといえるが、他方で、実用新案権については、早期に権利化されるが、保護される期間も短いということができる。 C権利行使の際の手続 実用新案権の侵害訴訟では、権利者は提訴にあたって、人民法院に国家知識産権局が作成した検索報告書を提出する必要がある。また、実用新案権の侵害訴訟では、被告が訴状を受け取った後、答弁期間内(原則15日、外国人の場合30日)に無効審判を請求した場合、人民法院は侵害訴訟の手続を中止しなければならず、無効審判の結論がでた後に、訴訟の手続が行われる。これらは、実用新案権が実体審理がなされていないことから、安易な権利行使を抑制するために設けられている制度である。 |
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| 2 特実併願の有用性 | |||||
| 従前は、中国において実用新案権が早期に登録できるものである一方で、特許権の権利化までに時間を要するということから、特許出願をした直後に同一の技術(形状・構造に関する技術)につき実用新案出願をし、特許権付与されるまでの間、当該技術を実用新案権で保護し、特許権が登録される直前に実用新案権を放棄するという、いわゆる特実併願が広く行われていた。
しかし、2002年北京市高級人民法院で特実併願について、実用新案より遅れて出願された特許権を無効とするという判決を言い渡された。また、2006年7月に施行された改正特許審査基準において、特実併願で実用新案権を放棄する場合、当該実用新案権が出願時に遡及して消滅することとなったため、放棄前に実用新案権に基づいて権利行使をしていた場合、放棄により実用新案権が始めから存在しないことになり、権利行使が不当であったことにより損害賠償義務を負うリスクがある。 現在は、中国の特許審査期間が徐々に短縮されつつあるため、上記のリスクを考慮すると、特実併願は行わないということも検討すべきである。ただし、審査期間が長い技術分野の場合、特許権が付与されるまで実用新案権により保護ができる以上、ライセンスにより活用することも考えられる。特に、特実併願を活用する場合には、特許権と実用新案権とでクレームの範囲を若干変えることなどについても検討するべきである。 いずれにしても、特実併願については有用性について疑問が生じていることから、中国の専門家の意見も踏まえて、活用方法を検討することが重要である。 |
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