「続・クレヨンしんちゃんにみる中国での知財管理」 |
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黒田法律事務所 吉村 誠 弁護士 ■略歴■ 京都大学工学部建築学科 最高裁判所司法研修所 日本弁護士連合会登録・東京弁護士会登録 (52期) |
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| 1 経緯 | |||||
| 日本の人気マンガのクレヨンしんちゃんを巡る事件の経緯は3月号で触れたので、詳細は省略するが、クレヨンしんちゃんの中文表記である「蝋筆小新」の商標等について、中国企業が日本の出版元の双葉社に無断で商標登録をしたため、2004年に、双葉社からライセンスを受けた上海企業によるクレヨンしんちゃんのキャラクターグッズの販売が商標権侵害であるとされた。そこで、双葉社は、国家工商行政管理総局に商標登録の取消を請求したが、請求が認められず、さらに、北京市第一中級人民法院に提訴したが、かかる請求も棄却されている。なお、双葉社は北京市高級人民法院に控訴しているとのことである。 |
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| 2 日本での類似事件 | |||||
| 日本においても、約20年前に本件と類似する事件が起きている。その代表例が、ポパイ事件である。マンガのポパイは、戦前から世界的に有名であったが、ある日本企業が、著作権者に無断で、「POPEYE」の文字の商標及びポパイのイラストについて商標登録を出願・取得した。当該企業は、マンガのポパイの著作権者からライセンスを受けてマフラーを販売していた業者に対して、商標権侵害に基づく差止及び損害賠償請求をしたのである。
大阪地裁及び大阪高裁は、ポパイのイラストの使用については侵害ではないとして請求を棄却したが、「POPEYE」の文字の使用については、侵害であるとして差止請求等を認めた。文字の使用とイラストの使用で結論が異なることを奇異に感じる読者も多いであろうが、これは日本の商標法で、登録商標の使用が他人の著作権と抵触する場合には、当該登録商標を使用できないと規定されていることに起因する。ポパイのイラストは著作物であるといえるので、商標権者は権利行使できないが、「POPEYE」の文字からなる標章については文字のみでは著作物性がないため、権利行使できると判断された。 しかし、最高裁は、商標登録出願当時にポパイが日本国内を含む全世界に知られており、「POPEYE」の文字からはポパイの漫画の主人公の人物像の概念、称呼を生じさせるから、商標権侵害を主張するのは権利の濫用と判断し、文字の使用についても請求を棄却した。 他方で、登録商標自体の効力については、他人の著作物であり著名なキューピーの図柄を冒用して商標登録を受けたとしても当該商標が無効となるものではないと示した東京高裁の裁判例もある。なお、現行の日本の商標法では、日本国内で周知・著名なキャラクターに関する商標は登録できないとされている。外国でのみ著名なキャラクターに関する商標についても不正目的がある場合には登録できないとされ、日本の特許庁の商標審査便覧においては、「周知、著名商標が使用されている国の政府等から、その商標登録出願について国際信義に反するものである旨等、何らかの関心が表明されている場合には、その内容等について十分勘案すべきものとする。」とされている。 |
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| 3 中国における著名商標の扱い | |||||
| 中国の商標法では、中国国内で著名な商標については、登録日から5年以内(悪意の登録の場合には5年に限定されない)に登録取消を求めることができる。
クレヨンしんちゃん事件では、登録日から既に5年を経過していたので、悪意の立証が必要であるうえ、出願時に、中国国内で当該キャラクターグッズにかかる商品に関して著名な商標であることが立証されなければならないため、その立証は容易ではない。 加えて、中国商標法上、日本とは異なり、外国でのみ著名な商標の保護に関する規定が設けられておらず、しかも、著作権者の著作物の使用を保護する規定がないため、中国の商標法が十分なものではないと言わざるを得ないであろう。 今後、双葉社が新たな活路を見いだすためには、保護されるべき著名商標は外国において著名な商標も含むべきと主張すること、日本政府から商標登録出願について国際信義に反するものである旨が表明をするよう働きかけること、さらには、商標権者による、双葉社の中国のライセンシーへの権利行使が権利濫用にあたることなどを強く主張することなどが考えられよう。 |
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