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クレヨンしんちゃんにみる中国での知財管理
 
黒田法律事務所 吉村 誠 弁護士
中国においてビジネスを進めるうえでは商標取得及び管理が重要である。人気 アニメのクレヨンしんちゃんを、著作権者とは異なる第三者が商標登録をしたため に、著作権者が商標権侵害で訴えられてしまうという問題が生じた。中国における 知財管理を考察するうえで参考になるので紹介する。

黒田法律事務所
吉村 誠 弁護士
■略歴■
京都大学工学部建築学科
最高裁判所司法研修所
日本弁護士連合会登録・東京弁護士会登録 (52期)
 
  1 クレヨンしんちゃん事件の概要  
  日本の双葉社から1990年に出版されアニメ化もされているクレヨンしんちゃんという著名な漫画・アニメがある。双葉社は、台湾地区においては、1995年、クレヨンしんちゃんの中文表記である「蝋筆小新」という商標の登録をしていた。クレヨンしんちゃんは、かねてから中国大陸においても「蝋筆小新」として人気を誇っていたものの、それは台湾版のクレヨンしんちゃんが海賊版として大量に中国大陸で販売されていたからであったが、双葉社は中国大陸においてクレヨンしんちゃんの漫画等を発売しておらず、かつ、商標出願もしていなかった。  
ところが、1997年ころ、数社の中国企業が、相次いで「蝋筆小新」の商標で商標登録をし、そのうちの一社は、第三者にライセンスし、ライセンス先の企業は、靴やメガネなどに当該商標を付して販売していた。双葉社は、2002年からクレヨンしんちゃんの漫画等を中国大陸で発売し、2004年には、上海企業にライセンスをし、当該企業が中国大陸でクレヨンしんちゃんのグッズ販売を開始した。しかし、数カ月後、上述の「蝋筆小新」の商標権者から商標権侵害と主張されて、上海のデパートからグッズを撤去させられ、さらには在庫品を没収されることとなったのである。
 
   
  2 クレヨンしんちゃん事件の問題点  
   クレヨンしんちゃん事件に触れた日本人の多くは、商標登録をして権利行使まで した中国企業に対して、悪感情をもったのではないか。しかし、重要な点は、商標登録をして権利行使をした中国企業は、中国の商標法に基づき適法な手続に沿って権利取得・行使をしたということであり、さらにこの中国の商標法は、国際的なルールとも整合しているということである。よって、かかる中国企業に対して、非難をすることは必ずしも当を得たものではない。  
問題点は、双葉社が中国大陸においていち早く商標権を取得しなかったこと、長期にわたり海賊版や第三者による商標登録を放置していたことにある。
中国では、世界的なルールと同様、商標登録は、原則として先願主義が採用されている。同一の商標及び商品について先に商標出願した者が基本的には商標権者となりうるのである。  
そして、商標登録がなされると、登録を取り消すためには、商標不使用取消請求をしたり、著名商標に当たるとして当該登録商標取消の裁定を求める必要がある。これらの方法には期間制限があったり、多くの証拠資料を提出する必要があるうえに、そもそもかかる主張が認められるか否かも確実ではない。特に、実際には著名商標にあたるような商標であったとしても、本件のように、長期にわたり第三者が商標登録している状況を放置しているような場合には、著名商標として保護に値しないのではないかという議論もでてくる。  
キャラクターなどが日本において一定の人気になると、中国大陸において第三者から商標出願がなされるリスクが生じてくるのであり、ましてや中国大陸で海賊版が多数あり一定の市場が確保されているような場合には、第三者に商標出願をされてしまうリスクはさらに高まる。よって、日本企業としては迅速に商標登録をしておくべきである。
 
     
  3 著作物としてのクレヨンしんちゃんに関する中国ビジネス  
  クレヨンしんちゃんについては、商標をめぐっては問題点があったといえる一方 で、著作権に関する対応ではビジネス上の成功を収めてきた。双葉社は2002年からクレヨンしんちゃんの漫画の出版、デジタルコンテンツの配信等を積極的に行ってきてビジネス的には成功していた。これは、海賊版が大量に存在するということは、マーケティングチャンスがあると認識したうえで、著作権侵害品である海賊版を中国のライセンシーと協同して排除することを行い、さらに正規版に独自の付加価値をつけていくということを行ったからであるといわれている。第三者が商標権を取得したからといって、著作権まで第三者が取得するわけではない。双葉社は、著作権者として適切に権利行使をし、かつ、市場を見据えてビジネスを行ったからこそ成功したのである。  
このようにクレヨンしんちゃんを巡っては、失敗と成功の両面があったのであり、今後の中国ビジネスでの参考となろう。
 
   
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