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知的法講座
 中国知的財産権講座
今後の動向を念頭においた中国での知財戦略
 
黒田法律事務所 吉村 誠 弁護士
中国における知的財産権戦略としては、模倣品対策としてグローバルな解決方法を視野に入れて検討すること、中国企業の権利行使への対応策を準備すること、中国での知財創出及び販売地としての中国での知的財産権の取得、さらには権利行使のために積極的に人員・予算を投入していくことなどが重要である。

黒田法律事務所
吉村 誠 弁護士
■略歴■
京都大学工学部建築学科
最高裁判所司法研修所
日本弁護士連合会登録・東京弁護士会登録 (52期)
 
  1 グローバルな解決方法を含む積極的な模倣品対策  
  中国での模倣品対策については、権利行使をする国を中国に限定せずに、グローバルな解決方法をとることも視野に入れた積極的な権利行使を行うことが重要である。中国で製造され中国国内で流通する模倣品を市場から根絶するためには、行政、司法、税関等での徹底した権利行使が肝要であるが、これらの紛争処理では各々メリット、デメリットがあるため、解決手段を適切に選択する必要がある。  
もっとも、賠償額の低さ、地域保護主義の観点から、必ずしも中国において模倣品対策が奏功するとは限らない。そこで、外国で模倣品が流通している場合には、模倣品の輸出仕向け国での輸入差止措置の申立や、当該国における訴訟を提起することも検討すべきである。外国での提訴のメリットとしては、@模倣品製造業者の販路を断つこと、A日本、米国、欧州等においては裁判に必要な期間、費用、勝訴の確率の予測が立てられること、B米国においては、中国国内の製造業者も間接侵害者として被告とすることができる場合がある他、ディスカバリー(証拠収集手続)により、中国での製造・販売ルートに関する重要な証拠を得ることができる場合もある。他方、外国での訴訟提起の限界としては、@中国国内の製造業者を被告としない場合には、模倣品に対する根本的な解決にはならないこと、A中国の製造業者を被告とできる場合であっても、中国所在の製造業者の財産に対しては、当該判決に基づく執行をすることはできない場合があること等が挙げられる。
従って、以上の各手段を組み合わせ、当該模倣品追放の効果が最もあげられる方策を、事前に収集した資料を基に綿密に検討することが肝要である。
 
   
  2 中国企業による権利行使への対応策  
  近時は、模倣品業者が日本企業のデザインや商標等を盗用し、意匠特許出願、実用新案特許出願又は商標出願をして権利化した後、当該権利に基づき逆に真正品の製造業者(日本企業の子会社やライセンシー)等を提訴する事例も少なくない。これらの提訴に対しては、意匠特許や実用新案特許の場合には無効審判請求で対抗し、商標の場合には、異議申立の他、不使用、或いは不当な手段による登録を理由とする商標登録の取消請求で対抗する必要がある。  
これらの逆提訴を未然に防ぐためには、自社製品に関連しうる権利について早期に出願することが重要であり、また、権利取得状況に関する調査を常時行い、訴えを提起される前に一刻も早く発見し、かつ請求を申し立てることが望ましい。
 
     
  3 中国での知財戦略の重要性  
  従前は安価な人件費のもと製造地としての意義が強かった中国であるが、巨大なマーケットを有する販売地としての重要性が認識されるようになり、さらには優秀な研究者による活発な研究開発活動が行われるようになっている。かかる観点からは、中国において、積極的な研究開発活動により重要な知的財産権を創出することが、今後の世界的な知財戦略において重要となることは確実であり、また、販売地中国での知的財産権取得も一層重要となってくる。
そのためには、既に中国での知財戦略において先行している欧米企業と同様に、中国における権利の取得及び行使等のために、各企業において、十分な人員及び予算を確保することが必要である。また、中国で知的財産権に関する代理人について、研究開発センターの近くや、模倣品の製造・販売が予想される地域においても、代理人を選定していくことも重要となる。さらには、日本企業の知財部から中国に人材を留学させて、中国語のわかる担当者を養成していくことにより、中国での的確かつ迅速な知的財産権行使も可能となる。現状、日本企業の多くは、中国での知的財産戦略の重要性を認識していても、人材・予算の投入を行うことについては消極的であるが、WTO加盟を果たした中国においては、遠くない将来において、より知的財産権の保護のための制度が一層整備されていくことは確実であり、そのための具体的戦略を立てた企業が中国での知的財産戦略において優位に立てるのである。
 
   
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