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職務発明制度と競業禁止義務
 
黒田法律事務所 吉村 誠 弁護士
職務発明について、中国法上、職務発明についての出願人主義、職務発明者に対する報奨等の支払義務等が定められている。中国においても職務発明訴訟が提起されるようになっており、今後の対策が重要となる。  
また、中国法上、従業員の競業行為を制限し、もって企業の営業秘密及び技術秘密を保護している。ただし、競業行為の制限には一定の限度があり、国民の職業選択の自由を制限し、又は労働者の就業権を侵害してはならないとされている。

黒田法律事務所
吉村 誠 弁護士
■略歴■
京都大学工学部建築学科
最高裁判所司法研修所
日本弁護士連合会登録・東京弁護士会登録 (52期)
 
  1 職務発明  
  (1)職務発明とは、特許法上、「所属機関の職務を遂行し又は主に所属機関の物的技術的条件を利用して完成された発明創造」をいうと規定されている。職務発明にかかる特許出願権は当該機関に帰属する。他方で、非職務発明の特許出願権は発明者に帰属する。従って、中国においては、職務発明か否かという点で特許出願権の帰属が決することになるので、職務発明と非職務発明の区別が重要になる。職務発明の要件については、特許法実施細則(「細則」)等において、詳細に規定されている。また、ノウハウ等については、中国の契約法などにより、職務発明と類似の取扱いがなされている。
(2)特許法上、会社は、職務発明について特許権が付与された場合、発明者に対し報奨を与えなければならず、また、職務発明が実施された場合、発明者に合理的な報酬を与えなければならないとされている。国有企業等の場合、報奨及び合理的な報酬の基準について、@奨励金は、発明特許の場合には最低2000元、実用新案又は意匠の場合には最低500元、A国有企業等が職務発明にかかる特許を自ら実施した場合、発明特許又は実用新案特許においては実施により得た税引後利益の2%を、意匠特許においては実施により得た税引後利益の0.2%、B第三者に当該特許を実施許諾した場合には、実施許諾により得た税引後の実施料から10%を下回らない金額とされている。
これに対し、国有企業等以外の私企業等における発明者に対する報奨及び合理的な報酬については、国有企業等に関する規定を参照することができると規定されているにとどまる。日本においては職務発明訴訟が注目を浴びているが、中国においては、「合理的な報酬」が争われた裁判は皆無に等しかった。しかし、近時、上海市第一中級人民法院及び江蘇省南京市中級人民法院において、それぞれ報奨等支払請求訴訟が提起されたことが明らかになっており、今後、中国においても「合理的な報酬」の支払を求める訴訟が提起される可能性も十分にある。
(3)職務発明に関する紛争を防止するためには、以下の事前の対策をとるべきである。まず、研究ノート等の作成を義務づけておくことがある。これにより発明創造の特徴的部分に対して創造的な貢献をした者を確定できる。次に、会社が従業員との間の労働契約等で、職務発明等の帰属・移転について明確化させておくことがある。さらに、会社内部の職務発明規定を定めることも重要である。発明等の届出、会社による職務発明の認定、非職務発明の譲渡などについて定めておくことが望ましい。報奨等について、事前に、従業者と十分な協議を行い、基準を開示し、従業者の合意を得たうえで、日本での自社の職務発明規程を参考にして、一定程度合理性のある規定を設けておくべきである。
 
   
  2 競業禁止義務  
  (1)取締役や従業員に対し競業禁止義務を課す際のポイントとしては、以下のようなものがある。
@競業禁止義務の主体は、取締役、支配人、研究者などの会社の重要な役職・地位に就いており、会社の重要な営業秘密に接触する可能性がある者に限られる。一般の従業員に対し競業禁止義務を課すと、競業禁止の濫用及び従業員労働権の侵害とみなされる。
A競業禁止の対象となる業務は企業の枢要の業務でなければならず、さらに競業制限の具体的範囲を明確にする必要がある。
B競業禁止には時期的制限を付さなければならない。原則として、競業制限の期間が長くとも3年を超えてはならないとされている。
C企業は競業禁止対象に属する従業員に合理的補償を与えなければならない。 
D違約責任や紛争解決条項を規定するのが望ましい。
(2)競業禁止義務の方法一般的には、入社時の労働契約、雇用契約又は秘密保持契約に競業禁止義務を規定する。ただし、入社時に締結した契約にかかる条項がない場合には、退職時に別途秘密保持契約等において競業禁止義務を規定することができる。
 
   
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