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知的法講座
 中国知的財産権講座
研究開発(R&D)事業の現状及び留意点
 
黒田法律事務所 吉村 誠 弁護士
日本企業が、中国の研究機関に研究開発を委託し、又は中国の研究機関と共同で研究開発を行う場合について、R&D開始前の段階から、R&Dの段階さらにはR&Dの成果を実施する段階の留意点について解説する。さらには、近時活発になっている中国でのR&Dセンターの設立における留意点についても解説する。

黒田法律事務所
吉村 誠 弁護士
■略歴■
京都大学工学部建築学科
最高裁判所司法研修所
日本弁護士連合会登録・東京弁護士会登録 (52期)
 
  1 R&D事業の現状  
  中国におけるR&D事業の主たる方法としては、中国の研究機関と研究開発委託契約又は共同研究開発契約を締結してR&D事業を推進する場合と、日本企業が中国に子会社を設立してR&Dセンターを設立する場合とがある。
近時は世界の多数のメーカが中国においてR&Dセンターを設立していることが頻繁に報じられている。中国が知的財産権を創出する国であると多くの企業が認識して中国の優秀な人材を確保していることに他ならない。今後、日本企業が優れた知的財産権を創出するためには中国の頭脳を活用することを積極的に検討していく必要があろう。
 
   
  2 中国企業とのR&D事業での留意点  
  第1に、中国の研究機関とR&D事業を行うにあたって、秘密保持契約を締結することが必要である。特に、秘密保持義務を実効化するためには、秘密保持義務違反があった場合の違約金の規定を定めることが重要である。
第2に、R&Dの成果の帰属及び成果の実施等を明確化させる必要がある。特に、共同研究開発における特許権について日本企業の単独所有とする場合、若しくは委託研究開発における特許権等を共有とする場合、又は日本企業の単独所有とする場合には、権利の帰属について契約で定める必要がある。なお、日本企業が、R&Dの成果の権利を取得すると規定する場合、技術輸出入管理条例に従わなければならない可能性があるので注意が必要である。
成果の実施等については、各当事者の実施及び第三者への実施許諾の可否、有償・無償の別、特許権の譲渡の可否等について事前に明確にすることが必要である。
第3に、R&Dの成果の権利化の手続に注意する必要がある。外国企業が特許出願する場合等については、特定の特許代理機関に委任する必要があり、また、中国内でなされた発明について外国出願する場合には、まず国務院特許行政部門に特許を出願する必要がある。さらに、共同研究開発の一方当事者が単独で出願する場合には、特許権譲渡手続に所定の行政機関の許可が必要となる。
第4に、発明者への報奨金の支払について明確化するべきである。中国の研究機関とのR&D事業の場合、日本企業が中国の研究機関の研究員がした発明を譲り受けたとしても、法律上、発明者の所属機関が報奨金の支払義務を負うため、日本企業は当該研究員に対して報奨金を支払う義務はない。しかし、中国の研究機関が支払うべき報奨金について、日本企業の負担を要求される事例はあるので、報奨金の負担について事前に明確にすることが望ましい。
第5に、その他の事項として、@具体的な研究開発の内容、費用負担、日程等の研究開発の履行に関する事項の明確化、A秘密保持の対象、期間、関連会社への開示の可否及び違約罰等の明確化、B契約締結の当事者の契約締結能力の有無や違約責任を問う場合の担保能力の問題も検討する必要がある。
 
   
  3 中国においてR&Dセンターを設立する場合の留意点  
  R&Dセンターは、法令に基づいて、独立の企業形態でも独立の法人格を有しない形態をとることもできるが、その経営範囲については、法令で定められた範囲内に限定されているので、関係法令に注意する必要がある。
研究開発では、「外商投資産業指導目録」で禁止されているプロジェクトの研究は禁止されており、研究開発成果が輸出禁止技術とならないようにすることにも注意が必要である。また、R&Dセンターの設立手続についても各種法令で詳細に規定されているので事前に十分に検討する必要がある。
R&Dセンターでなした研究開発の成果をR&Dセンターと日本の親会社のいずれに帰属させるかについては、R&Dセンターの設立後の個別具体的な案件毎の契約において、成果の帰属を決定するという方針をとることが望ましい。
R&Dセンターには、多くの営業秘密が存在することから、営業秘密の保護を図る必要がある。営業秘密の管理体制を整えるとともに、従業員及び役員等に対して、秘密保持義務を負わせ、さらには法令に反しない限度で競業禁止義務をも負わせる必要がある。
 
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