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ライセンス契約締結後の管理 ―― 営業秘密の保護
 
黒田法律事務所 吉村 誠 弁護士
ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンス契約に基づきノウハウ等の技術情報(以下、「営業秘密」という)を開示する場合、営業秘密を保護するため、種々のケースを想定した上で、効果的かつ実践的な予防策を講じておく必要がある。さらに、営業秘密が漏洩した場合に備えて、その対応策も十分に把握しておくことが望ましい。

黒田法律事務所
吉村 誠 弁護士
■略歴■
京都大学工学部建築学科
最高裁判所司法研修所
日本弁護士連合会登録・東京弁護士会登録 (52期)
 
  1 営業秘密保護の必要性  
  ライセンサーがライセンシーに開示した営業秘密が流出するということはしばしば起こる。例えば、ライセンシーの会社の退職者が営業秘密を第三者に漏示することもあれば、下請企業が営業秘密を冒用することもある。さらに、ライセンシーが開示された営業秘密を冒用して特許出願(冒認出願)したという事例も存在する。営業秘密が流出することによる損害は尽大なものであり、かつその損害というものを算定し裁判において立証することは困難なことであるので、営業秘密を保護するための管理体制及び予防策が重要となる。  
   
  2 契約での予防策  
  営業秘密を保護するためには、ライセンス契約においてライセンシーに守秘義務を課しておくということが大前提となる。この場合、守秘義務の対象となる営業秘密の範囲を明確化する必要があり、また、ライセンサーが開示した営業秘密を具体的に特定しておく必要がある。守秘義務の対象となる情報の範囲を包括的に規定した場合、契約の拘束力に争いが生じる危険があるため、契約締結時において、義務を課すべき情報の範囲を明確に規定すべきである。さらに、契約期間後に守秘義務を課すことも重要である。
次に、営業秘密は流出する可能性が極めて高いという前提の下、単に秘密情報の漏洩を禁止するだけではなく、実効性の確保の観点から、違反した場合の高額な違約金を明記しておくことは、中国でのプラクティスにおいては必須である。
また、ライセンシーの従業員に対しても守秘義務を負わせるだけではなく、かつ退職後についても守秘義務を負わせるようにすることも、より好条件を求めて転職が頻繁に行われる中国においては重要である。
さらに、ライセンサーから従業者に対する秘密保持契約の写しの提出、営業秘密の管理体制についてライセンシーからの定期的な報告、ライセンサーによる予告なしの立入検査などといった、ライセンシーの営業秘密の管理状況についてのライセンサーの検査権を定めておくことも必要である。また、ライセンスした営業秘密の冒認出願をした場合に、ライセンサーに対し特許権等を譲渡する義務を定めておくことも有効となる。
 
   
  3 営業秘密が漏洩した場合の対応策  
  考えられるものとしては、契約違反に基づく責任追及、反不正当競争法に基づく責任追及、特許法に基づく責任追及などが考えられる。
契約違反に基づく責任追及の場合、損害の立証が困難であっても、違約金を定めておけば、損害賠償請求が容易となる。
反不正当競争法に基づく責任追及では、漏洩した営業秘密が、@公知でなく(非公知性)、A権利者に経済的利益をもたらすことができる実用性を有し(有用性)、かつB秘密保持措置が講じられている(秘密管理性)場合に、情報の不正取得行為等の情報取得手段自体に違法性のある行為や、契約等に基づき正当に開示された情報を、契約上の義務に反して、使用、開示等した者に対し以下のような責任追及できる。具体的には、第1に、人民法院に対し、差止請求、損害賠償請求をすることができ、第2に、工商行政管理局に対し、関係資料の返還命令、侵害品の廃棄命令、不法行為の停止命令の申立てをすることができ、侵害者には罰金が科されることがある。第3に、労働行政管理部門に対し、営業秘密の侵害行為について仲裁による解決を求めることもできる。さらに商業秘密侵害罪として刑事処罰を求めることができる。
特許法に基づく責任追及では、ライセンシーに開示した技術情報をライセンシーが勝手に特許出願する冒認出願の場合、正当な出願権を有する者は、行政機関又は司法機関に対し、特許権等の帰属に関する紛争の解決を求めることができる。これらの機関による審理等が終了し確定するまでの間、当事者は、行政機関に対し、当該特許権等に関する手続の停止を書面で請求することができる。このようにライセンサーは、特許権者又は特許出願権者であることを確定することができ、審理期間中にライセンシーによる特許権等の譲渡や放棄等の手続を防止することができる。
なお、中国特許法上、日本法と異なり、冒認出願は無効理由には該当しない。
 
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