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知的法講座
 中国知的財産権講座第1回
  -----「知的財産権保護制度の概要」
対中投資において、中国の知的財産権対策は、中国国内企業による模倣品対策のみならず、欧米先進国企業との競争に勝ち抜くためにも、今後の企業業績を左右する最重要事項となっている。そのためには、中国の知的財産権の保護制度の理解とその戦略的取得が必須である。  
 
1 知的財産権に関する法制度
吉村誠 ■略歴■
京都大学工学部建築学科
最高裁判所司法研修所
日本弁護士連合会登録・東京弁護士会登録 (52期)
黒田法律事務所
吉村 誠 弁護士
 
@  中国において知的財産権保護に関する法律としては、特別法として特許法、商標法、及び著作権法が定めら れ、反不正当競争法、製品品質法、税関法、対外貿易法も知的財産権に関連する法規であり、さらに一般法として民法、刑法、民事訴訟法等が存在する。これらの法律を補充解釈する下位規範 として、行政機関である国務院が制定する実施細則や条例の他、各法の実施管理部門による行政法規、並びに、司法機関である最高人民法院による司 法解釈等が公布されている。
A  特許法は、その保護客体を「発明創造」と総称し、「発明特許権」、「実用新型特許権」、「外観設計特許権」の3種類の権利を定め、それぞれ日本の特許権、実用新案権、意匠権に対応する(以下、本稿においては、それぞれ「発明特許権」、「実用新案特許権」、「意匠特許権」といい、これらを総称して「特許権」という)。
反不正当競争法は、不正競争行為として11種類の具体的行為類型を例示的に規定し、この中には、営業秘密 を不正取得する行為等の禁止も定められている。非公開として保持したい技術ノウハウ等の他、顧客リスト、サプライヤー情報、生産販売政策といった営業秘密は、反不正当競争法により保護される。
B  この他、品質が劣悪な模倣品に対し製品品質法が、また、知的財産権の侵害商品の輸入、輸出の税関での差止を税関法が、下位規範と共に規定されている。なお、2004年7月1日施行の改正対外貿易法においては、知的財産権保護強化ともに、独占禁止行為規制の立場から知的財産権濫用行為を規制する姿勢が明確にされている。
2 権利取得に必要な手続
@  特許権は、国家知識産権局特許局の審査、登録・公告により成立し、商標権は、国家工商行政管理局の商標局の審査、登録・公告により成立するが、著作権( コンピュータ・ソフトウェア著作権を含む) は、審査登録を権利成立要件とせず著作物の創作完成により著作権が成立する。
A  発明特許出願については、予備審査、及び実体審査があり、それぞれ日本の方式審査、及び実体審査にほぼ対応する。発明特許出願は、出願日から18ヵ月で公開されるが、出願人の請求による早期公開制度がある。審査請求期間は出願日より3年以内であり、優先権主張出願の場合は、優先日より3年以内に審査請求をしなければならない。日本と異なり、早期審査制度、及び優先審査制度は、現状では設けられていない。
発明特許権付与の通知を受領後、出願人が登録手続を行った場合には、特許局は特許証交付、登録、及び公告をし、発明特許権は公告日から効力を生じ、その存続期間は出願日より起算して20年間である。
B  実用新案特許出願及び意匠特許出願については、実体審査はなく、予備審査のみがなされる。特許局は、予備 審査を経て拒絶の理由が発見されなければ証書交付、登録、及び公告をし、実用新案特許権及び意匠特許権は、公告日から効力を生じ、その存続期間は、出願より起算して、各々10年間である。
3 早期権利化のための方策
実用新案特許出願は、出願からおよそ6ヵ月で権利付与されるのに対し、発明特許出願は、出願から権利付与まで早くてもおよそ3〜4年を要するのが現状である。
技術に関する発明創造は発明特許権、及び実用新案特許権双方の保護客体となりうるため、発明特許出願をし、発明特許出願公開前に、同一の技術につき実用新案出願をするという、いわゆる特実併願の手法が、現行の審査基準に基づき、実務上広く行われている。この手法によれば、発明特許出願に対する権利付与の通知が、実用新案特許権の権利満了日以前になされた場合、この通知に対して、出願人は先の実用新案特許権を放棄する旨の書面を提出して対応することにより、当該技術につき、実用新案特許権と発明特許権により、空白期間を生じさせず間断なく保護を受けられることになる。
ただし、実用新案特許権満了後に付与された特許権につき、2002年4月22日、北京市高級人民法院は、当該特許権で無効と判断した。上記事案は、最高人民法院によるものではないため、特実併願についての最終的な結論を示すものとはいえないが、特実併願に関し、今後の事案や司法解釈に注視しておく必要がある。
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