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 中国における知的財産権攻防の法的側面
並行輸入品の商標権侵害問題すなわち外国で商標ライセンシーにより適法に商標が付された商品が輸入されるとき、国内での同一商標の登録商標権を侵害するか否かについて、日本と中国では解釈が異なるので注意を要する。  
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日本国弁護士・弁理士 谷口由記
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  真正商品の並行輸入問題  
 
1 真正商品の並行輸入問題
商標権を含む知的財産権の多くは各国ごとに出願、審査、登録されてその国の範囲内で効力を生じる権利であり、同じ商標を日本で登録しても中国で登録しなければ中国では商標権として保護されないのが原則である(属地主義@)。一般に外国から輸入されるブランド品等は外国の商標権者とは別に国内の輸入総代理店が国内で商標を登録し品質管理とアフターサービスを行ってブランドイメージを高めている。そして、外国の商標権者又はライセンシーにより適法に商標が付されたブランド品が輸入されて安い価格で販売されると、国内商標権者である輸入総代理店の商品の売上げが下がり、輸入品が国内の商標権を侵害するとして輸入阻止を図ろうとし、これが並行輸入問題であり、その前提は内外価格差にあり、同一ブランド品で海外での価格が安ければ、並行輸入品を販売しても採算がとれ、消費者も安い商品を購入して、国内マーケットとして成立するからである。
属地主義を貫くと商標権は各国ごとに別個であるから、海外で適法に商標が付された真正商品であっても輸入すれば国内商標権を侵害することになる。しかし、商標の機能として「出所表示機能」及び「品質保証機能」等があり、それらの機能を害しなければ商標権侵害の実質的違法性はないとして国内商標権の侵害を否定する見解が唱えられてきた。また、商標権を含む知的財産権は製造又は販売の段階で実施料が支払われると権利は消尽され、それ以後の流通段階では権利侵害は生じないとする消尽論の立場から真正商品の並行輸入は国内の知的財産権を侵害しないとの解釈が導かれるA。
2 日本の判例実務
日本では1970年に真正商品の並行輸入は商標の出所表示機能と品質保証機能を害さず実質的違法性がないとして商標権侵害を否定した判決【パーカー万年筆事件B】以後、大蔵省通達により税関の取扱いも商標権非侵害とされ、その後の判例の蓄積により(1)外国で適法に商標が付され、(2)外国と日本国内の商標権者が同一又は実質的に同一視でき、(3)日本国内の商標権者が直接的に又は間接的に商品の品質管理を行なえるのであれば、日本国内の商標権を侵害しないとされてきた。但し、外国での製造販売段階でライセンス契約違反があった場合に商標権侵害となるか否かが問題になり、外国でライセンス契約に規定された製造地制限及び下請制限条項に違反して製造された商品の並行輸入について大阪と東京の裁判所の判断が分かれ、最高裁は商品は品質保証機能が害されていて実質的違法性を欠く場合にはあたらないとして、並行輸入品の商標権侵害を肯定した【フレッドペリー事件C】。
3 中国での見解
中国では属地主義を貫いて真正商品であっても中国の商標権を侵害するとの解釈が現在の人民法院の立場である。これまでは中国は安い製品を製造し輸出する立場にあって内外価格差すなわち同一ブランド品が中国国内価格よりも海外での価格が安いといった状況にはなかったために並行輸入問題は生じる余地がなかったが、近時の都市部を中心とする物価水準の上昇から安い外国輸入品が登場し、並行輸入問題が起き始めた。並行輸入に関して【OMO事件D】があり、ベトナムからの輸入洗剤が中国国内の著名商標「OMO」の商標権を侵害するかが問われた事件で、並行輸入品が商標権を侵害するかの前提となる真正商品の立証ができなかった事案ではあるが、商標権侵害を肯定する判決が言い渡された。また、一部には消尽論から並行輸入は商標権を侵害しないとの考え方も出てきているが、現時点では属地主義の立場から真正商品であっても中国国内の商標権を侵害することになるから、中国で輸入品の販売を進めようとする場合、外国で適法に商標が付されたブランド品であっても中国国内の商標権者の許諾を得なければ輸入できないことを注意すべきである。しかし、今後は商標権の侵害を否定する消尽論との間で議論を呼ぶことになろう。
@例外として馳名商標すなわち広く中国で知られている商標の場合、これと同一又は類似する商品又はサービスについて複製、模倣し又は翻訳した商標の登録は許されず、その商標の使用も禁止されるからその点で未登録馳名商標は保護される(中国商標法13条1項。馳名商標の認定及び保護規定参照)。
A消尽論には世界消尽、域内消尽(欧州共同体の域内での消尽を認める考え方)、国内消尽の3種類があり、世界消尽の立場では真正商品の並行輸入は自由に許容されることになる。WTO条約のTrips協定は消尽論に関して肯定的にも否定的にも解釈されてはならない旨規定されている(6条)。
B大阪地判昭45・2・27判例時報625号75頁。
C最高判平15・2・27判例時報1817号33頁。その後、東京地裁はライセンス契約条項のうち販売地制限違反と一定の付加的文言を下げ札等に表記することを禁止する条項違反の場合は 並行輸入の商標権侵害を否定した(東京地判平15・6・30判例時報1831号149頁)
D広西防城港中級人民法院(2002)防中法民初字第14号事件。
 
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