中国の自動車市場への参入をめざし先進諸国の自動車メーカーの進出が続いており、外資自動車メーカーの知的財産権が中国で適正に保護されるかが注目されている中で裁判所(人民法院)の判断が分かれた2つの事案を紹介したい。
勝敗が分かれたホンダ意匠事件とトヨタ商標・不競法事件 |
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1 自動車企業の進出
中国のWTO加盟に伴う関税引き下げや国内市場の開放が進む中で、巨大な中国市場をターゲットに先進諸国の自動車メーカーの進出が相次いでおり@、積極的な事業展開に向けて各地で展示会やモーターショーが開催されているA。北京市や上海市では富裕層による外国車の購入がウナギ登りに増加し、米国GMや日本のトヨタ自動車も大衆車だけでなく高級車の販売をも強化しつつある。短期的には今年上半期に経済過熱を抑制するためオートローン規制等が実施されて購買力が若干低下し、販売在庫も増えたデータが報道されてはいるが、長期的には消費者の購買力は依然として旺盛で増加傾向に変わりはなく、本格的なモータリゼーションの到来を迎え、駐車場不足の深刻化、高速道路網の整備、自動車産業のインフラ整備が急がれるところである。
2 知的財産権の保護
中国へ進出した外国自動車メーカーとしては自社ブランドに関する知的財産権が十分保護されることが事業展開の前提になるが、中国政府は世界貿易機関( |
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WTO)条約のTrips協定に基づく国内の知的財産権法改正作業を2003年でほぼ完了し、それらの解釈について裁判所の判断が注目される中で、日系企業の自動車メーカーの訴訟の判決が2件出された。
1件は意匠(デザイン)権に関する事件で日本企業が逆転勝訴し、他の1件は商標権・不正競争に関する事件で日本企業が敗訴したものであり、明暗を分けた形になった。意匠権に関する事件は日本企業であるホンダが中国でモーターバイクに関する登録意匠権を取得し、この意匠権を侵害しているとして中国のモーターバイクメーカーを訴えたところ、中国メーカーがホンダの意匠権はその出願前に既に存在していた台湾メーカーが取得した中国意匠権に類似するので、ホンダの意匠登録は無効であるとして知識産権局に無効審判を請求したところ、知識産権局はこの請求を認めてホンダの意匠権は無効と決定したので、ホンダはこれを不服として裁判所に取消の行政訴訟を提起したが、裁判所はホンダの請求を棄却する判決を言い渡しB、ホンダは更にこの判決を不服として控訴し、その控訴審判決はホンダ勝訴の逆転判決を言い渡し、ホンダの意匠権の有効が確定したというものであったC。
他の1件の商標権・不正競争に関する事件は中国の自動車メーカーである「吉利」自動車有限公司が製造販売する「美日自動車」に使用している商標Eが日本企業のトヨタのエンブレム商標Fに類似しており、また、吉利が宣伝文句に使っている「美日自動車・トヨタ動力」等の記載が不正競争行為にあたるとして、商標や表示の使用差止めと日本円2億円余りの損害賠償を求めた事件であるが、裁判所は、美日商標はトヨタの商標と類似しないし、吉利の宣伝文句は実際にトヨタが中国で設立した天津トヨタ自動車が製造したエンジンを吉利が購入して搭載していることを表示しただけで、自動車の表示ではなく、また、自動車を購入しようとする消費者は各メーカーの自動車の種類、価格等に詳しく、上記表示によって誤認混同を生じないとしてトヨタの請求を全て棄却したがD、トヨタはこれを争わず、第1審判決は確定した。
意匠権の事件でホンダは意匠権無効審判及びその行政訴訟の第1審と2度にわたり敗訴したが、更に控訴をして漸く逆転勝訴に結び付けたといえよう。これまでは外国企業は一旦敗訴すると諦めて不服申立を続けるのを回避してきた傾向がみられたが、この事件を機に外国企業も可能な限り不服申立を尽くすべきではないかとの視点を芽生えさせたものといえよう。商標権の事件でトヨタは敢えて控訴せず判決を確定させたが、裁判所の判断については馳名商標の保護規定を適用しなかった点で筆者は疑問を抱いており、控訴して争ってもよかったのではないかと思っている。 |
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@英国新聞「Financial Times」によると02年の外国自動車メーカーが中国で生産した台数が200万台を超え、2003年〜04年に外国自動車メーカーは中国に累計63億米ドルを投資し、向こう3年に更に100億ドル以上を追加投資する見込みである。日本の大手メーカーのトヨタ自動車は中国進出が遅れ、市場占有率は現在2%であるが、2010年に10%達成を目標にしている。
A04年6月10〜16日に北京市で第8回北京国際モーターショーが開催され、世界から1400社の自動車メーカーが参加し49万人の見学者が訪れ大盛況を呈した。
B北京市第1中級人民法院2002年9月30日判決。なお、意匠権は中国では実体要件を審査せず登録する無審査主義であり、実体要件の有無は登録後の無効審判において判断されることになる。
C北京市高級人民法院03年5月30日判決。
D北京市第2中級人民法院03年11月24日判決。 |
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