| 4 外国での特許実施の利益に基づく対価請求 |
| 職務発明の登録と実施が日本国内の場合は日本の特許法の職務発明の規定が適用されるが、会社が職務発明を外国に出願し特許登録を受けその国で実施して会社が得た利益に基づいて相当の対価を請求できるかについては、否定する判決と肯定する判決があるL。これが肯定されると今後巨大市場が見込まれる中国での特許実施による日本企業の利益に基づいて発明者が日本国特許法35条に基づき巨額の対価請求をする可能性は高いといえよう。 |
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| L日立製作所事件の東京地裁02年11月29日判決は特許権の属地主義、外国特許制度・職務発明制度が区々に分かれていることを理由に否定説をとるが、その事件の控訴審の東京高裁04年1月29日判決は肯定説をとり、特許法35条3,4項は日本の従業員と使用者の雇用関係上の利害関係の調整を図る強行法規で、職務発明の譲渡の対価は外国の特許を受ける権利に関するものも含めて使用者と従業者が属する国の産業政策に基づき決定された法律により一元的に決定されるものであると解し、味の素事件の東京地裁04年2月24日判決も肯定説をとる。 |
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| 5 中国の職務発明規定 |
| 中国特許法(専利法)も職務発明に関する規定を設けており、職務発明は日本と違って特許権は単位に属し、単位は職務発明をした従業員に対して報奨と合理的な報酬を支払わなければならず、国有企業事業単位について実施細則で額の最低基準が規定されM、他の企業(民営企業等)もこの基準を適用できると規定する。国有企業事業単位が従業員と単位の貢献度を斟酌してもこれ以下にできないのか問題が残るが、この基準は従業員の保護の面では一応の納得できる線といえるかもしれない。しかし、現在この規定をめぐっての紛争は公表されている判例集には掲載されていないN。 |
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M職務発明となるのは@本来の職務で行った発明、A本来の職務以外の任務遂行中に行った発明、B退職後1年以内に行った発明で本来の職務又は任務と関係のある発明(実施細則11条)、C主として所属単位の物的技術的条件を利用して完成した発明であり(特許6条)、専利法16条は職務発明(職務考案・職務意匠も含む)には単位が発明者に奨励(報奨)を与えなければならず、また、国有企業事業単位では特許実施後に普及応用の範囲及び取得した経済的利益に基づいて合理的な報酬を与えなければならないと規定し、専利法実施細則75条は単位自身が実施した場合、発明・実用新案では毎年税引後利益の少なくとも2%を、意匠では同利益の少なくとも0.2%を、また、同76条は単位が第三者に実施許諾した場合は納税後実施料所得の少なくとも10%を支払うべきと規定し、同77条は上記規定を国有以外の単位も参照して執行できると規定する。
NIP訴訟の判決は、日本ではインターネットの最高裁ホームページで判決文が公開されているが、中国では2003年11月から北京市の中級以上の人民法院の特許・商標等の判決がホームページで公開されるようになった。職務発明に属するか否かを争点とする判決はあるが、報酬請求の判決は見当たらない。 |
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| 6 中国の知財立国政策 |
| 中国も知財立国をめざし中央政府だけでなく地方政府も知的財産権戦略行動計画を樹立させている。上海市では企業の創造力・競争力の育成を目的として知的財産権・標準化・ブランド商標への3大戦略を推進し、その行動計画には(1)重要な発明をした個人に一時金を支給する。(2)知的財産による収益は発明者と事業者が共有する。(3)発明者は事業の技術譲渡の利益の50%以上を受取ることができることが含まれ、また、「上海市知的財産権企業モデルプロジェクト」では毎年20社程度をモデル企業に指定し、5年をめどに出願・実施・保護等のモデル企業を約100社育成し、特許出願数を毎年15%増加させようとしているO。 |
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| O人民網日本語版2004年3月4日版 |
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| 7 日本企業の中国の発明実施に対する対応策 |
| 中国の世界貿易機関(WTO)加盟に伴う国内市場の規制緩和により巨大市場が外国企業にも開放されることが目前に迫っており、職務発明の中国国内での実施による利益に基づいて発明者である従業者が企業に対して巨額の対価請求をする可能性は高いといえよう。また、今や欧米企業は中国に生産基地のほかに研究開発の拠点を設け始めており、外資系企業の従業員が発明をした場合には中国特許法・実施細則の基準に適合させた職務発明規程を作成しておく必要があるし、規程を設けていない場合や規程の額が少ない場合には、対価請求訴訟が起きる可能性を秘めている。日本企業の中には日本国内よりも中国で開発した方が有利との見方もあるが、中国特許法・実施細則の職務発明規定からみて日本と中国の物価の差ほど低く抑えられるとは限らないといえる。企業としては日本と同じ轍を踏まないためにも、職務発明規程を制定したうえ、職務発明に属するか否かで争いが起きないように従業員の任務を明確にし、所属単位の物的技術的条件(資金・設備・部品・原材料・未公開資料)を利用したか否かで争いが起きないように従業員に利用させる条件を予め明記するなど、従業員との間で事前に協議をし、従業員の職務発明に伴う貢献度を昇進等にも反映させ、従業員に処遇面で不満を残さないようにしておく必要があろう。 |