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私も起業家
  アパレル育ち、通じる経営観 食へのこだわり究め自ら開業  
  日式炭火焼肉「道」    中山満生  総経理  
  ● 元シングル・プレーヤー  
 
姚虹東路の「道」店舗前で「戦力」である従業員らと
真っ黒に日焼けし、中背ながらも骨太の体躯。失礼ながら、いまヘルメットをかぶって作業服をまとば工事現場の監督といった印象さえある。そんな、アウトドアの雰囲気がやたら漂う中山満生さん(五四歳)。異郷の地、「肉が大好き」で、自ら立ち上げた焼肉屋の親父とはかくあるものかということだろう。
「腕ずもう、やりましょう」。取材の過程で興に乗り、牛タン塩焼きを試食していた記者と突然の力比べが始まった。焼肉専用大理石テーブルの片隅を土俵に見立ててであるが、事実、怪力だ。中山さんは大分県別府市の出身で、大学(日本大学)二年まで、ゴルフ部に所属していた元シングル・プレーヤーであり、もちろん今も現役。フェアウェーで培った腕っぷしの強さもあろう。だが、高校以前も空手などの武道をたしなんだ年季は半端なものではない。
レストランはまだ昨年開業したばかり。延べ一万人余りが来店し、毎日通うリピーターもいて、大成功だ。しかし、ここに至るまでの道程は、もちろん決して腕ずく力ずくだけで切り開いてきたものではない。
 
  ● スーツ作りのプロ転じて…  
  実はこの中山さん、「アパレル」の出身である。
帰郷して税理士などの開業も考慮しながらの大卒後、東京にとどまり、はからずもメンズスーツを扱う大手のアパレル企業に就職した。主に営業の外回りでデパートや量販店を担当していたが、その経験を買われ、取締役として北京に赴任。同市で初めてのスーツ縫製の合弁工場立ち上げと現地法人の経営が至上命題として与えられた。
これが一九八八年のことだったから、中国滞在歴はすでに一六年。いや、それ以前にも出張ベースでの訪中は数知れなかったという。
上海に初めて来たのは北京在任中の九二年。生地とパーツの買い付けが目的だった。以後、たびたび通い、そして九六年から定住した上海が、中山さんにとっての「第三の故郷」となる。
中山さんと話していると、当初の土っぽい印象は消え、かなりおしゃれなファッション・マインドを持ったスポーツマンであることが分かる。また、生来の社交好きといった面もあって、
今冬「道」を使って開かれた上海大分県人会。出張で広瀬勝貞県知事や県庁幹部もよく訪れる
やはりたたき上げの営業マン出身であるゆえんが濃厚ににじみ出る。
スーツを一着作るのには最低で一八〇工程あって…。話し出すと、よどみなくアパレルの専門用語が飛び出す。販売から生産にも携わった、この道の「プロ」であることを思い出させる。実は、いまでも中山さんはアパレル業を経営している。しかし、メインになってきているのは焼肉店の方。「この仕事、とても片手間では出来ないよ」としみじみ言う。
フランチャイズの問い合わせもあり、考慮中だ。この「道」以外に付近でカラオケ・クラブも経営しており、起業家レベルからかなり進んだ、いわば複合経営者である。
 
  ● 客の立場から食材も吟味  
 
日本での店舗以上に日本的。凝りに凝った自慢の内装を前に立つ中山満生さん
「おいしいものへのこだわりから、日本人にも来てもらえる自分なりの店を開いた」と言う中山さん、商売のベースとしては「扱うものが洋服か肉かの違いです」と語り、生地の裁断は肉の切り方に共通するものがあるとまで力説する。
たとえば、表地や裏地はさまざまな食材であり、ソーイングは焼き方、プレスはタレ、そして着用はまさに食べることに他ならない。
最も大事な食材である牛肉は、いま国内外の専門業者である一七社に委託して取り寄せている。産地は日本からの輸入ものもあるが、中国国産では、山東省、湖南省のものがいちばん良質とか。これらに対し再三の吟味を施し、顧客に対し本当の意味でおいしく提供する肉にようやくめぐり合える自信をもっている。「肉が大好き」、またとりわけ「焼肉が大好き」であるがゆえに、中山さんはユーザーの立場からの観点を最重要視する。
ことしから始めた、いわゆる牛刺しに似た「上海初! 大トロにぎり」は、衛生に最大限留意しながら、最上の霜降り肉を客に味わってもらいたいとの信念から生まれた。
石焼ビビンバを供するのに使う石製の食器は韓国から輸入した。「これを見つけるのに八年かかった」と振り返る。今回「起業家」の取材のはずであるが、趣味人、しかもそのアッパークラスの達人の域に達した、ぜいを凝らした経営観が見て取れた。
 
  ● ぜい凝らした内装と食器群  
  「道」はメインホールのほか、大小の和室と個室が八部屋あり、一度に一〇〇人以上は収容できる。店内は木質を強調したつくりで、なじみやすい肌触りが感じられる。この大きな規模もさることながら、まだまだある自慢は、備長炭を使った「焼き手法」と韓国製完全無煙ロースター、加えてテーブルは天然大理石使用など、例を挙げればきりがない。
トイレも豪華で、備長炭をデコレイトし脱臭を図り、自然と使ってみたい気にさせられる。ご本人は「内装には一〇〇〇万円使った程度」と抑制を利かせて答えるものの、設備だけでもそれぐらいはするものと、素人目にも容易に察しがつく。
しかし、もっと大事なのは、厨房も含め、二〇人いる従業員教育だ。「整理、整頓、清潔、清掃、協力、協調、サービス、会話」をスローガンに、ジャパンテーストのサービス業としてあたりまえの接客法を身に付けさせている。開業に当たっては、若いながらもしっかり者の料理長、他店にいた優秀な「小姐」らに来てもらった。それもこれも、経営者としてのこだわりに基づく。
「道を決め・道を開き・道を広め・道を究める」。名刺の左肩にある店名の由来の説明書きは、勤め人のころから何度か職を替えることを考え、ついに本格的な炭火焼肉を完成させ、経営者へと転じた中山さんの決心を示しているようだ。
 
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