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私も起業家
  洋食レストランCuross    黒杉政博 さん
   
  安く、うまく、ゆったりと‥資産つぎ込み思い通りに運営
 
カレーライスにハンバーグ。エビフライにスパゲッティ。おいしく、そしてどこか懐かしい日本の洋食。上海・徐家匯にあるレストラン「Cuross(科楽司)」はそんな日本の洋食を安く、しかもゆったりとした雰囲気の中で楽しめるレストランとして人気を呼んでいる。
二〇〇二年一一月のオープンから約一年半。一三九平方メートル五〇席の店に毎日二五〇人の客が訪れる。その六割は中国人。洋食に郷愁をそそられる日本人だけでなく、広く受け入れられた理由は、一六年間中国で仕事をしてきた店主・黒杉政博さん独自の戦略による。

「ヤオハン出身」倒産で再出発
黒杉さんはかつて、ヤオハンに勤務しており、一九八九年から中国へ赴任、北京、無錫各店の総経理として多忙の日々を送っていた。しかし九七年九月、ヤオハンは倒産してしまう。
その後は過去の手腕を生かし、中国国内の百貨店経営の指導もした。しかし、つしか「自分の思い通りの仕事をやりたい」という気持ちが湧いてきた。
そこで考えたのが上海で飲食店を開くことだった。当時は日本料理というとかなり高級で、高給取りの駐在員が対象である上、飲酒行為を主としたコンセプトの店が多かった。しかし現地採用で地場並みの収入を得ている日本人も増えてきている。そんな若い人が気軽に食事ができる日本料理のレストランがあってもいいではないか−−。
やる以上は客が来る方法を考えなければならない。いちばん重要なのは懐具合。そう考えた黒杉さんは、日本人がランチに一〇〇〇円を払う感覚が、上海では現地通貨の人民元でいくらに相当するものなのか、徹底的に調査した。
提供する料理は日本人がよく食べている料理。カレーライス、ハンバーグといったポピュラーな洋食だ。
店舗環境にも気を使った。中国には安くて汚いお店はたくさんある。ここではシンプルで清潔な環境でゆったり過ごしてもらいたい。食後に雑誌を読んだり、勉強したり‥‥。かくして黒杉さんの「安く、うまく、ゆったり過ごせる」レストランCurossが生まれた。
 
徐家匯の弘基広場わきの恭城路に立つCuross。命名の根拠はもちろんKUROSUGIから
薄利徹底、開店当初は持ち出し
店舗開業資金はヤオハン総経理時代にためた個人資産をつぎ込んだ。思い通りの店をつくる‥‥。すべてつぎ込むことに迷いはなかった。かかった費用は一〇〇〇万円以上。
開業当初は経費の方がかさみ、持ち出し分もあった。しかしそれも約半年で軌道に乗った。ちなみに現在の売り上げは月約一五万元。約三万元の家賃と材料費、人件費など諸々で原価と費用は一三万元くらいかかる。したがって実質利益はかなり薄い。しかし黒杉さんは客が喜んでくれるならと、価格帯も一〇元後半〜二〇元台を変えるつもりはないという。
Curossの料理は、ドレッシングも、デミグラスソースも手作りであるし、コーヒーも注文を取ってから豆をひく。一〇〇種類を超える料理の数々は、黒杉さんが二八年単身赴任をしていた中から培われたレシピで、自身の舌でおいしいと思った料理ばかりだ。すべてきちっとしたものを使うという、ここにも黒杉流のこだわりがある。

ごまかしなく誠意ある仕事を
こだわりはほかにもある。スタッフのサービスだ。席に着くと何を言わなくてもグラスの水を持ってくる。心からの挨拶を言う。かつてのヤオハン時代「鬼の黒ちゃん」といわれ、スタッフのサービスマナーを徹底的に教え込んだ経験がこの店の経営にも生かされている。
「一六年間中国で仕事をして思うのは、誠意のある仕事をすべきだということなんです。このお店はインスタントを使うなどなどのごまかしは一切ない。お客さんの気持ちになってサービスをする。中身のない仕事でお金をもらうのもいやですから。このお店をつくって経営することは、自分にとって一つの生き方の証しだと思っています」
Curossをワンステップとして、黒杉さんは今後も違ったコンセプトの店を展開することも視野に入れている。
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