Walker
中国最新情報満載!!
繊維・アパレルレポート  
  華東エリアの業界ファンダメンタル
日中 経済協会「華東地域のアパレル産業」(注)より
   
   
繊維・アパレルレポート
全国繊維アパレル輸出入総額
(中国紡績品輸出入商会より)
クォーター撤廃という「05年インパクト」で揺れに揺れた業界は、今年もまた大きなうねりの中にある。昨年の対外輸出額は最高額を更新。しかし、1月、アメリカの影響重大品目(SL)における中国からの輸入割当額は大幅に減少(アメリカ商務部発表)、バングラデシュやインド、カンボジアへのシフトが見られたという。繊維アパレル生産の最大集積地域である華東地域のファンダメンタルを再確認してみたい。
(注)本報告書は財団法人日中自転車振興会の補助を受け、上海松川投資諮詢有限公司の協力を得て作成されたものである。
 
 
    産業政策の揺れ  
    九〇年代に上海市は産業構造の調整を開始し、国際的な金融、港運、貿易のセンターを目指した。その過程で繊維アパレル産業は重視されなくなっていた。  
上海では繊維メーカーの生産能力を減らしたり(圧錠限産)、繊維企業・生産能力は大量に内陸地区に移転したり(東錠西移)して、繊維関係の労働者人数も従来の四〇万人から約四万人まで激減した。上海のアパレル産業の国内市場、輸出額に占めるシェアも縮小している(〇五年の数値で11%)。  
しかし、繊維産業の重要性を再認識し、これを支柱産業の地位に昇格しようとする動きもまたある。新華社が発行した「経済参考報」は次のように報じている。  
「かつて紡織工業の生産能力が削られ た上海では再び、繊維産業を支柱産業として位置づけ、さらに紡織工業区の設立を通じ、外国の投資を誘致しようとしている。  
二〇〇五年三月一二日に北京で開かれた『上海紡織工業園区プロジェクト説明会』で、上海市経済委員会の責任者は正式に、繊維産業を五大支柱産業の一つ先進製造業と位置づけることを表明した。具体的な措置として、金山区にある上海紡織工業園に国内外の投資誘致の促進がある」
(※上海紡績集団は綿花の供給地でも有名な江蘇省・大豊に大規模投資を決めた。)
 
    健在な「上海ブランド」は二つだけ?  
    上海の繊維・アパレル業界はかつて中国で八〇〇に上る有名ブランドを作り上げた。しかし、〇五〜〇六年度の輸出重点ブランド品リスト一九〇のうち、繊維・アパレル関係が五五件。その中、上海のブラ ンドは「三槍」と「飛馬」の二つのみ。浙江省と江蘇省で大半を占めている。  
中国衣料品の輸出量は世界市場の八分の一を占め、トップであるが、輸出製品の生地の五割を輸入に依存している。さらに中国製品の輸出価格はフランスとイタリア製品の四分の一に過ぎず、生地生産の立ち遅れは上海アパレル産業の発展にとってボトルネックとなっている。  
これを受けて、上海では生地の生産・開発に大きな力を入れ始めた。中国の国家紡織製品開発センター、東華大学と海天軽紡集団の三者は昨年、共同で「中国ファッション生地開発・生産基地」の建設を決定し、〇七年の完成を目指している。投資総額は二六億元、敷地面積は四〇ヘクタール。この基地は生地の流行情報の研究と発表、品質標準の策定と測定、新製品の開発・販売促進などを一体化する繊維製品の開発センター、技術革新センター、情報交流センター、貿易調達センターとなる。
 
    生産コストは高いがメリットもあり  
    上海の素材価格、土地、交通、技術など のコストは蘇州、昆山、広東などより高 い。  
上海市民の学歴は比較的高く、人件費も自然に高くなる。労働集約型産業であるアパレル業界においては人件費が競争 力を弱めてしまう結果となる。  
現在、上海地域のアパレル企業は外資系と中国系を問わず、ほとんど農村部と周辺の浙江省、江蘇省から労働者を集めている。労働者の給料はたいてい月一〇〇〇元前後、しかも歩合給。会社は通常、食事(二、三食)と寮を提供するが、残業は日常茶飯。連続残業ということで「労働法」に違反したため、労働監察当局から警告を受ける外資系企業(東南アジア系)もある。  
もっとも、長寧区にデザイン、生産、販売を連ねる産業チェーンがあるなど優位性は依然としてある。上海紡織集団、上海服装集団、上海海螺集団などの大企業のほかに、ESPRIT、CAPTIANO、東方鰐魚、百霊鳥、谷などのブランド品のデザイン、生産、販売業者が五〇〇社もある。一方、東華大学、上海工程技術大学、上海紡織装飾用品研究所、上海シルク化学技術研究所、上海紡織機械研究所など一三社の研究・開発機関も集中する。これらの産業技術の研究機構が上海の繊維・アパレル産業基地の振興を支える。
 
    ブランド構築への挑戦  
    上海のアパレル業者はブランドの重要性を再認識し、一九九五〜二〇〇二年の間に、一一二の業界ブランド、七一の上海市ブランド、五の中国ブランドを創設した。うちインナーウェアのブランド「三槍」「菊花」、ウールセーターのブランド「恒源祥」、子ども服のブランド「小太陽」、「麗嬰房」などがある。二〇〇四年、上海斯爾麗服飾有限公司は女性服のブランド「斯爾麗」で高い評価を受けた。ここ数年、女性コートの販売で中国トップとなっている「中華ブランド」である。
上海服装業界協会がまとめたデータによると、ここ数年、繊維製品割当制度の撤廃を見込んで、中国で外国企業による繊維生産分野への投資は急拡大している。〇三年に、中国で繊維企業五〇〇〇社が増えた。〇四年上半期、繊維関係の固定投資額は一四四%も増加した。いずれもポスト割当制度時代のビジネスチャンスをねらっている(イタリアの有名なアパレル会社、ベネトンは〇四年一〇月に上海で大型専門店を開業)。
 
    「渡り鳥経営」は今後も増加?  
    中小の日系アパレル企業は独資が主流。日系アパレル企業はイトキン、ワールド、オンワードなどを除けば、中小企業がほとんど。しかも多くは市中心部から離れた農村地域(青浦区、金山区など)にあり、従業員は周辺地区のほか、さらに遠い崇明県や南匯区、浙江省、江蘇省などから集められている。それでも土地(家賃)コスト、人件費の上昇、労働者の不足に悩んでいるという。  
そのため、「渡り鳥経営」説を唱える経営者もいる。中国の東部沿岸地域で設立した外資系企業はせいぜい一〇〜一五年しか維持できない。人件費や土地・不動産価格、取引コストなどの要因を考えると、一〇年後は設立当時のメリットはなくなるため、内陸地域で以前の条件と同じ投資先を探さなければならない。その時には、上海や沿岸地域に設立した既定の企業を閉鎖せず、生産規模を縮小して、それを窓口にする。つまり、看板は引き続き上海、沿岸地域で置かれるが、生産基地は内陸へ移動させる。上海〜周辺地域の交通アクセスの改善、周辺地域のインフラ整備などにより、「渡り鳥式経営」の実施が可能になっている。
(日中経済協会「華東地域のアパレル産業」より抜粋、一部編纂)
 
    =解 説=
奚衆望氏(上海松川投資諮詢有限公司)
 
    中国における華東地域のアパレル産業の地位と役割は基本的に「華東地域のアパレル産業」に記す通りであるが、業界の運営としては欧米諸国による輸出割当額の制限、輸出成長の鈍化、輸出利益の下落、沿海地区の労働力不足などの新しい課題に直面している。
これまでアパレル業界の切り札は集積産業地域の整備、品質管理の強化、コストダウンの努力などがあげられる。しかし、今後、更なる発展を取るため、ブランドの育成、ハイテク新製品の開発・生産などがカギであると見られる。