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ビジネス特集
新春特集:私はこう見る2008年"中国商流"
【都市開発】08年中国地域・都市開発のキーワードは「ネットワーク」
野村綜研(上海)諮詢有限公司 副総経理 葉華 氏

野村綜研(上海)諮詢有限公司 副総経理 葉華 氏
ここに注目!
「ネットワーク」型成長戦略に向けた取り組みが活発化
軌道交通がもたらす立体複合開発が焦点に

中国の第11次5カ年計画には、(1)環境・省エネの重視、(2)格差を是正する調和の重視、(3)都市及び地域連携の重視、の3つのポイントがある。地域や都市が互いに共存共栄的発展を目指そうという「ネットワーク」型の成長戦略が実際の地域・都市開発に影響を与える時期に入る。

国際レベル
FTA締結交渉と国際ネットワークの構築
世界貿易機関(WTO)への加盟と並行して、中国はアセアン(ASEAN) ほか周辺諸国とのFTA締結に向けた取り組みを本格化しつつある。オーストラリア、ニュージーランド、湾岸協力会議(GCC)、チリとの交渉開始、インドとの共同研究開始、韓国との共同研究開始の合意など進展が見られる。
FTAは中国地域全体の産業発展構図に大きな影響を及ぼす。これまで欧米や日本諸国の企業はアセアン地域と中国地域を別々の地域として位置づけ、それぞれ最適な調達、生産、販売及び開発のネットワークを構築してきた。しかし、アセアン地域と中国の間における貿易障壁が少なくなっていく中で、日本のアジア事業や中国事業の再編も必至である。
国土レベル
「中国主体機能区計画」が国土開発構造を転換
これまでの国土開発の仕組みと計画方式を見直すため、05年に「主体機能区」の概念が提起された。主体機能区計画は国家レベルの計画と省レベルの計画の二段階に分けて策定され、国土全域を4つの主体機能区域に分類し、その主体機能区域に対して、区域別の全体的な将来発展方向、ポジション (位置づけ)、及び空間開発管制(ガイドライン)が定められる。
現在、国家発展改革委員会が主導して策定中の「中国主体機能区計画綱要」は08年初頭に公表・実施される予定であり、省レベルの計画も08年末頃に決定される見込みである(「全国主体機能区計画の策定に関する意見」国務院07年7月)。
計画の実行性を担保するために、財政、投資、土地、人口、産業に関わる制度・政策は最も重要視される分野となっている。財政政策では、中央財政を通じて、主体機能区域の性質を踏まえた先行地域から後発地域(主に開発制約区域と開発禁止区域)への「ヨコの財政移転」を進める(中国国内版ODA)。
投資政策では、都市インフラ投資を主に重点開発区域に傾斜、ハイテク産業資金を主に最適開発区域に傾斜するように戦略的に誘導する。
人口政策では、主体機能区域のポジションに合わせて人口の流動と定住を戦略的に誘導する。最適開発区域は定職と定住条件を整えた人口のローカル化を図り(中国国内版都市ビザ)、重点開発区域は移民に対する積極的な受け入れを推進する。
土地政策では、最適開発区域はいまよりも厳しい土地政策を実施し開発用地の増分を総量規制する。重点開発区域は耕地総量確保を前提に開発用地を適宜拡大できるが、最適開発区域と重点開発区域の開発用地拡大は共に農地の確保、農業人口の都市化、および他区域(開発制約区域と開発禁止区域)人口に対する吸収の全体の度合いに連動させる。
また、中国の直轄市(北京、上海、天津、重慶)は省レベル以上の行政区域と見なされるため、独自の主体機能区計画を新たに策定する必要がある。今後、上位の中国主体機能区計画及び都市マスタープランなど従来計画との関係整理から、都市資源、機能、空間などの配置調整が必至であり、土地利用を中心とした都市全体の開発方針に大きな影響を与える見込みである。
広域レベル
行政境界を超える経済圏ネットワーク型開発
第11次5カ年計画期間中では、長江デルタ地域と京津冀地域・環渤海地域は、行政的な境界を超えた広域計画策定のモデル地域として指定され、広域ネットワークにおける地域間の連携発展が重要な課題となってきた。
特に長江デルタ地域は、中国で経済が最も発達、人口が最も密集、土地利用密度が最も高い地域の1つである。08年に中国最初の経済圏計画「長江デルタ地域計画」が制定・実施される。
計画案では、将来の長江デルタ地域全体のポジション(計画目標)を(1)中国における総合的競争力が最も強い経済中心地域、(2)アジア・太平洋地域における最も重要な国際ゲートウェイ、(3) グローバルに置ける最も重要な製造業基地(拠点)、(4)中国初の世界級都市クラスター地域、の4つに区分している。
また、地域計画の重点内容には、(1) 人口の適切な配置及び全体的な都市化戦略、(2)産業発展の重点分野と一体的な適宜配置(国際競争力を持つ戦略産業の強化、比較優位性を持つ基幹産業の強化、先行戦略産業の育成)、(3)大規模・広域インフラ整備(沿海港のネットワークと機能分担、域内空港の適切な配置、高速鉄道や都市鉄道などの軌道系交通ネットワークの整備、総合物流ハブの整備、エネルギー供給ネットワークの整備)、(4)資源・環境の利用と保護(土地資源の集約利用と配置の合理化、地域環境における安全保障システムの整備、調和のとれた生態系の構築)、が含まれる。
広域計画の新規施行に合わせ、長江デルタ地域主要16都市の都市発展戦略や産業発展戦略も多少なりに影響を受け、日本企業馴染みのこの地域は発展構造の転換を背景に、新たな成長機会とリスクが潜んでいる。

ハブ駅の一部は今後の都市活動のネットワーク拠点になり、駅周辺開発や鉄道沿線開発、更に都市鉄道を軸とした都市機能の再編開発もいずれ事業主体や行政範囲、現状規制などの束縛を破り、より機能的に発達していく。
(資料:NRI 上海提供)
都市レベル
ハブ機能とネットワーク機能の高度化
北京、上海、天津、重慶、広州などの地域中心都市はいずれも都心機能の拡大、副都心機能の強化、近郊業務核都市の整備、および市域内の都市ネットワーク構造の構築のために大規模都市開発を進行中であり、都市大規模交通・物流施設の整備もより活発になっている。外向型の交通ネットワーク、空港・港とったゲートウェイ施設、都市間高速鉄道、及び都市内軌道交通ネットワークの整備が都市開発の主役として登場しつつある。
08年に建設が本格的に開始される上海虹橋総合交通ハブプロジェクト(開発エリア規模26平方キロ超、空港施設や中国版北京―上海新幹線ターミナル、複数の都市高速鉄道などのネットワーク施設が集結)や、将来的に長三角の高速道路をカバーするITSプロジェクトの始動はその典型例といえよう。
特に都市軌道交通(地下鉄、LRT、モノレールなど)整備のネットワーク化による関連都市機能の開発は大きな成長のポテンシャルをもたらす。国家発展改革委員会総合運輸研究所の情報によれば、現在全国で都市軌道交通を計画、建設、及び既に開通している都市の数は約 20 都市(内 15 都市の建設計画は既に認可済み)、稼働中及び既に建設中の軌道交通総延長は1,000キロ超、計画中の総延長は3,500キロに上る。10年までは全国の都市軌道交通の稼動延長は1,000キロを超える見込みである。そして、軌道交通のネットワーク化がもたらした都市構造再編による再開発と、軌道交通のネットワーク特性からもたらす点・線・面・地上・地下が一体的となった立体複合開発が、今後都市開発の焦点になる。
日本は駅周辺開発や鉄道沿線開発、及び地下空間開発などの領域においていずれも世界的に優れた技術やノウハウをもっており、中国にとって、これからのネットワーク型開発の流れの中で、如何にビジネスチャンスを事業展開に繋がるかが大きなチャレンジであろう。
葉華 氏(YE Hua)
中国同済大学、早稲田大学の講師を経て株式会社野村総合研究所に入所、06年より現職。02年から各種の都市発展戦略策定、大規模都市開発立案、及び産業振興施策のプロジェクトに携わる。工学博士。

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2008/2/25 更新
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