ビジネス特集
【不動産】GDP押し上げの原動力として健在 リスクシナリオに為替などマクロ政策動向
ステイジア・キャピタル・ホールディング 代表取締役 奥村尚樹 氏
ステイジア・キャピタル・ホールディング 代表取締役 奥村尚樹 氏

ステイジア・キャピタル・ホールディング 代表取締役 奥村尚樹 氏
ここに注目!
大胆な抑制政策には限界、市場は加熱から堅調へ
J-REIT 解禁で機関投資家の動きが活発化
GDP上昇の大きな牽引役としての位置づけは、為替政策などドラスックな改革がない以上、過剰流動性抑制には効果はなく、大きな変化はないだろう。08年、環球金融中心のオープンで上海のタイトなオフィス供給事情に歯止めがかかる一方で、北京のオフィス稼働率は上昇、空室率は低下に向かう。J-REIT解禁による日本の機関投資家の動きにも注目したい。
GDPの底上げを牽引する成長産業としての不動産業
07年の中国のGDP成長率予測は11.5%程度。そのうち不動産建設産業が占める割合は4割ともいわれ、不動産建設業は景気動向を左右する基幹産業とみなされている。中央および地方政府からタイトな政策が出て実需と過剰流動性を抑制することがなければ、08年もこの位置づけは基本的には変わらないだろう。
今後の市場予測を行ううえでも、成長産業である不動産産業に対して中国がこれまでどのような政策で市場をコントロールしてきたか見ておくことは有益だ。まずは、ここ数年の市場動向を振り返っておきたい。
大胆な抑制政策には限界、市場は加熱から堅調へ
J-REIT 解禁で機関投資家の動きが活発化
GDP上昇の大きな牽引役としての位置づけは、為替政策などドラスックな改革がない以上、過剰流動性抑制には効果はなく、大きな変化はないだろう。08年、環球金融中心のオープンで上海のタイトなオフィス供給事情に歯止めがかかる一方で、北京のオフィス稼働率は上昇、空室率は低下に向かう。J-REIT解禁による日本の機関投資家の動きにも注目したい。
GDPの底上げを牽引する成長産業としての不動産業
07年の中国のGDP成長率予測は11.5%程度。そのうち不動産建設産業が占める割合は4割ともいわれ、不動産建設業は景気動向を左右する基幹産業とみなされている。中央および地方政府からタイトな政策が出て実需と過剰流動性を抑制することがなければ、08年もこの位置づけは基本的には変わらないだろう。
今後の市場予測を行ううえでも、成長産業である不動産産業に対して中国がこれまでどのような政策で市場をコントロールしてきたか見ておくことは有益だ。まずは、ここ数年の市場動向を振り返っておきたい。
価格の大幅下落には至らなかった「国六条」と「外資規制」
2000年から05年にかけて中国の株式市場は低迷し、その運用資金は不動産(主にマンション投資)に流れた。
不動産の分譲価格は01年から05年にかけて年平均20%も伸び率で上昇、不動産市場は活況を呈した。人民元の切り上げ期待から、海外の投資ファンドの中国不動産投資エクスポージャーが急増、規制がゆるかった不動産投資を狙った欧米系を中心とした機関投資家が、短期の鞘取りを狙って続々と参入したことが大きい。
ところが、外資投資が続き価格が高騰、短期的なアービトラージ(鞘取り売買)機会を問題として 政府が不動産投資規制を引いたこともあり、05年半ばからは市場の調整期に入る。
とくに06年7月より施行された「外資規制」では、中国政府は外国人(個人および法人)に対し、不動産投資に規制をかけた。個人は1年以上の居住暦をもつ外国人に居住目的に限定して不動産購入を認め、法人には中国国内に不動産投資経営許可を取得した法人のみに購入が認められることとしたのである。
また、同年5月に発表された、「国六条」と呼ばれるマクロ政策では、「90平米以下、70%以上」(建築面積90平米以下の間取りの住宅をプロジェクト全体の70%以上を占めるように規定)、営業税の課税方式の変更(購入後2年未満の物件に対しては5%の営業税がかかったが、これが5年未満に変更)などの規制が定められた。
しかし、これら一連の政策は、暫定的には上海の価格調整に一定の効果を果たしたかのように見えたが、中国全土から見れば抜本的な加熱抑制策にはならなかった。所得の上昇による旺盛な住宅需要が供給を上回り価格の上昇に歯止めがかからなかったほか、北京・広州・天津などに資金が流れたことで、これらの都市の不動産価格を大幅に押し上げることになった。また、株式市場への資金流入によって中国の株式市場は急騰を招くことになったのが06年の概況だ。
そして、07年、再び上海の不動産市場に資金が舞い戻ってきた。06年から好況に向かった株式市場で利益を確保した投資家の資金が、上海のマンション市場に入り始めたのである。振り返ってみれば「国六条」によっても、大きな価格下落は見られず、市中心部の中古物件の価格を下支えする皮肉な結果になったという見方もできる。
ただし、市場全般にわたって高騰が見られた01年から05年にかけての不動産購入ブームとは異なる様相も見せているのが実情だ。ミクロ的な見解だが、内環状線内の物件で 50 %から100%の伸びを示したものが1割も占める一方、プロジェクト、ロケーションによっては上昇幅が抑えられているものもある。
では、今後、市況はどうなっていくのか。もちろん政策動向によって大きな影響を受けることは想定される。しかし、不動産市場の加熱抑制よりも政府の関心事はむしろ物価上昇の抑制にあるのではないか。11月にはCPIが6.9%を記録。オリンピックという大きなイベントを控えることを考えると、08年も過剰流動性の問題は引き続き維持され、ドラステックな政策は出てこないのではないかと予測している。
2000年から05年にかけて中国の株式市場は低迷し、その運用資金は不動産(主にマンション投資)に流れた。
不動産の分譲価格は01年から05年にかけて年平均20%も伸び率で上昇、不動産市場は活況を呈した。人民元の切り上げ期待から、海外の投資ファンドの中国不動産投資エクスポージャーが急増、規制がゆるかった不動産投資を狙った欧米系を中心とした機関投資家が、短期の鞘取りを狙って続々と参入したことが大きい。
ところが、外資投資が続き価格が高騰、短期的なアービトラージ(鞘取り売買)機会を問題として 政府が不動産投資規制を引いたこともあり、05年半ばからは市場の調整期に入る。
とくに06年7月より施行された「外資規制」では、中国政府は外国人(個人および法人)に対し、不動産投資に規制をかけた。個人は1年以上の居住暦をもつ外国人に居住目的に限定して不動産購入を認め、法人には中国国内に不動産投資経営許可を取得した法人のみに購入が認められることとしたのである。
また、同年5月に発表された、「国六条」と呼ばれるマクロ政策では、「90平米以下、70%以上」(建築面積90平米以下の間取りの住宅をプロジェクト全体の70%以上を占めるように規定)、営業税の課税方式の変更(購入後2年未満の物件に対しては5%の営業税がかかったが、これが5年未満に変更)などの規制が定められた。
しかし、これら一連の政策は、暫定的には上海の価格調整に一定の効果を果たしたかのように見えたが、中国全土から見れば抜本的な加熱抑制策にはならなかった。所得の上昇による旺盛な住宅需要が供給を上回り価格の上昇に歯止めがかからなかったほか、北京・広州・天津などに資金が流れたことで、これらの都市の不動産価格を大幅に押し上げることになった。また、株式市場への資金流入によって中国の株式市場は急騰を招くことになったのが06年の概況だ。
そして、07年、再び上海の不動産市場に資金が舞い戻ってきた。06年から好況に向かった株式市場で利益を確保した投資家の資金が、上海のマンション市場に入り始めたのである。振り返ってみれば「国六条」によっても、大きな価格下落は見られず、市中心部の中古物件の価格を下支えする皮肉な結果になったという見方もできる。
ただし、市場全般にわたって高騰が見られた01年から05年にかけての不動産購入ブームとは異なる様相も見せているのが実情だ。ミクロ的な見解だが、内環状線内の物件で 50 %から100%の伸びを示したものが1割も占める一方、プロジェクト、ロケーションによっては上昇幅が抑えられているものもある。
では、今後、市況はどうなっていくのか。もちろん政策動向によって大きな影響を受けることは想定される。しかし、不動産市場の加熱抑制よりも政府の関心事はむしろ物価上昇の抑制にあるのではないか。11月にはCPIが6.9%を記録。オリンピックという大きなイベントを控えることを考えると、08年も過剰流動性の問題は引き続き維持され、ドラステックな政策は出てこないのではないかと予測している。
「環球」効果で上海のオフィス供給が改善へ
次に沿岸部のリース市場について見てみる。
最もタイトなのはやはり上海である。土地不足もあってオフィスの供給量がニーズに追いつかず、オフィス稼働率は実に95%、盧湾区の稼働率にいたってはさらに高い水準で推移した。07年は20%以上に及ぶ大きな賃料上昇が見られたエリアもある。
ただ、今年08年については夏に環球金融中心のオープンが予定され、浦東地区で 50 万平米のオフィススペースの供給が見込まれるなど、慢性的に不足がちになっていたオフィス事情の解決に曙光が見られてくる。賃料については浦西については微増、浦東については上昇が抑えられるのではないだろうか。また、オフィス移転などのニーズから、仲介業や引越し運送業にとっては非常に潤いのある年となりそうだ。
一方、従来、空室率の高かった北京のオフィス事情は逆に上昇に向かう。オリンピックに向けた駆け込み開発が終わり、新たなオフィス供給が止まるからだ。CBD、金融街にあるオフィス稼働率はあがり、85%くらいに達するだろう。
広州については珠江新城におけるオフィス供給量の大幅増加と、外資ホテルの進出ラッシュに注目したい。07年1年だけを見てもウェスティン、リッツカールトン、シャングリラが進出、広州交易会などコンベンション・センターとしての機能は今後ますます高まってくるだろう。また、深センについては蛇口エリアが脚光を浴び始めている。
次に沿岸部のリース市場について見てみる。
最もタイトなのはやはり上海である。土地不足もあってオフィスの供給量がニーズに追いつかず、オフィス稼働率は実に95%、盧湾区の稼働率にいたってはさらに高い水準で推移した。07年は20%以上に及ぶ大きな賃料上昇が見られたエリアもある。
ただ、今年08年については夏に環球金融中心のオープンが予定され、浦東地区で 50 万平米のオフィススペースの供給が見込まれるなど、慢性的に不足がちになっていたオフィス事情の解決に曙光が見られてくる。賃料については浦西については微増、浦東については上昇が抑えられるのではないだろうか。また、オフィス移転などのニーズから、仲介業や引越し運送業にとっては非常に潤いのある年となりそうだ。
一方、従来、空室率の高かった北京のオフィス事情は逆に上昇に向かう。オリンピックに向けた駆け込み開発が終わり、新たなオフィス供給が止まるからだ。CBD、金融街にあるオフィス稼働率はあがり、85%くらいに達するだろう。
広州については珠江新城におけるオフィス供給量の大幅増加と、外資ホテルの進出ラッシュに注目したい。07年1年だけを見てもウェスティン、リッツカールトン、シャングリラが進出、広州交易会などコンベンション・センターとしての機能は今後ますます高まってくるだろう。また、深センについては蛇口エリアが脚光を浴び始めている。
J -REIT解禁で日本からの投資環境の整備は進む
当社は中国不動産市場との橋渡し役、指南役としてその実務を担当しているが、そのうえでとりわけ注視しているのはJ -REIT(Real Estate Investment Trust)の動向である。
そのREITの海外投資を解禁する方向で国土交通省、金融庁と東京証券取引所が検討に入ったことが年末の報道によって明らかにされている(07年12月 11 日付日本経済新聞)。
今年4月を目処にREITの運用試算に海外不動産を組み入れらることになると、日本の不動産プレイヤー(不動産ファンド、デベロッパー、生損保などの機関投資家)にとっては、投資対象が広がることになり、価格変動のリスク分散によって安定的な収益を確保しやすくなる。
マクロ政策や外資規制が強化される中、日本からのREITマネーは中国市場にスムーズに入れるか、REITの投資対象になる適格不動産が取得できるかどうかという根本の問題はあるものの、J -REIT投資ポートフォリオの多様化という潮流のなかで中国の不動産市場が今後もより注目されることが予測される。
当社は中国不動産市場との橋渡し役、指南役としてその実務を担当しているが、そのうえでとりわけ注視しているのはJ -REIT(Real Estate Investment Trust)の動向である。
そのREITの海外投資を解禁する方向で国土交通省、金融庁と東京証券取引所が検討に入ったことが年末の報道によって明らかにされている(07年12月 11 日付日本経済新聞)。
今年4月を目処にREITの運用試算に海外不動産を組み入れらることになると、日本の不動産プレイヤー(不動産ファンド、デベロッパー、生損保などの機関投資家)にとっては、投資対象が広がることになり、価格変動のリスク分散によって安定的な収益を確保しやすくなる。
マクロ政策や外資規制が強化される中、日本からのREITマネーは中国市場にスムーズに入れるか、REITの投資対象になる適格不動産が取得できるかどうかという根本の問題はあるものの、J -REIT投資ポートフォリオの多様化という潮流のなかで中国の不動産市場が今後もより注目されることが予測される。
奥村尚樹 氏(おくむら・なおき)
Stasia Capital Holding Limited( ステイジア・キャピタル)
上海市長楽路801号華爾登広場203室
[電話] 021-5404-6486
[FAX] 021-5404-5368
[URL] http://www.stasiacapital.com
リクルート(米国駐在・リゾート開発)、住友信託銀行(土地信託・国内法人融資・香港支店、現法にて国際金融)、豪Macquarie Bank(ストラクチャードファイナンス)などを経て、03年5月百特豪世集団有限公司(ベターハウス)を設立、董事長に就く。著書に「人民元で大儲け」(共著:あさ出版)がある。07年11月より、ステイジア・キャピタルホールディング代表取締役。
Stasia Capital Holding Limited( ステイジア・キャピタル)
上海市長楽路801号華爾登広場203室
[電話] 021-5404-6486
[FAX] 021-5404-5368
[URL] http://www.stasiacapital.com
ビジネス特集 08年1月号一覧
情報提供:
Whenever CHINA 08年1月号
Whenever CHINA 08年1月号2008/2/25 更新












